今日(2018/11/09)は、第50回社会保険労務士試験の合格者発表がありました。
8月26日に全国19都道府県の会場で実施された今年の試験には38,427人が受験し2,413人が合格しました。合格率は6.3%でした。
受験申込みをした49,582 人の内、11,155人もの方が受験していないことに驚きました。
社会保険労務士の業務とは何か?
社会保険労務士は、労働社会保険諸法令にもとづく書類の作成、提出、事務代理、相談及び指導といった一般的に持たれているイメージの業務を行ないます。
しかし、それだけではなく、裁判所において、補佐人として陳述をすることも業務に含まれてます。
さらには、研修を受けてから受験する紛争解決手続代理業務試験に合格し特定社会保険労務士となると以下の業務を行ないます。
・都道府県労働局及び都道府県労働委員会におけるあっせんや調停の手続きの代理
・個別労働関係紛争について裁判外紛争解決手続(ADR)における当事者の代理
特定社会保険労務士は、1人ひとりの個人としての労働者と事業主との間の紛争を解決するための代理人として活動することが求められています。
厚生労働省の「第50回社会保険労務士試験の合格者発表」のページには(https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000183106_00001.html)
「[参考5] 社会保険労務士制度について(PDF:159KB)」
として以下の紹介があります。
「社会保険労務士制度について」(厚生労働省)
社会保険労務士制度について
1 社会保険労務士制度の概要
(1) 社会保険労務士制度は、社会保険労務士法(昭和43年法律第89号)に基づく制度である。
(2) 社会保険労務士となるためには、社会保険労務士試験の合格者等により社会保険労務士となる資格を有する者が、全国社会保険労務士会連合会に備える社会保険労務士名簿に登録を受けることが必要であり、登録と同時に、都道府県社会保険労務士会の会員となる。
(3) 社会保険労務士及び社会保険労務士法人の業務は、次のとおりである。
1 労働社会保険諸法令に基づく申請書等及び帳簿書類の作成
2 申請書等の提出代行
3 申請等についての事務代理
4 事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について、裁判所において、補佐人として、弁護士である訴訟代理人とともに出頭し、陳述をすること
5 都道府県労働局及び都道府県労働委員会における個別労働関係紛争のあっせん手続の代理
6 都道府県労働局における障害者雇用促進法、男女雇用機会均等法、パート労働法及び育児・介護休業法の調停の手続の代理
7 個別労働関係紛争について厚生労働大臣が指定する団体が行う裁判外紛争解決手続における当事者の代理(紛争価額が120 万円を超える事件は弁護士との共同受任が必要)
8 労務管理その他の労働及び社会保険に関する事項についての相談及び指導
このうち、1~3の業務については、社会保険労務士又は社会保険労務士法人でな い者は、他人の求めに応じ、報酬を得て、業として行ってはならないこととされている。また、4の業務については、社会保険労務士又は社会保険労務士法人の社員若しくは使用人である社会保険労務士が行うことができることとされている。 なお、5~7の業務については、紛争解決手続代理業務試験に合格し、社会保険労務士名簿にその旨の付記を受けた社会保険労務士(以下「特定社会保険労務士」という。)及び特定社会保険労務士が所属する社会保険労務士法人以外は、他人の求めに応じ、報酬を得て、業として行ってはならないこととされている。
社会保険労務士試験に合格した方がこれからすること
使用者に人権があります。
日本国憲法で「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」と職業選択の自由が保証されています。
選択できても続けることが認められなくては意味がありませんので、営業の自由そして経営権が認められます。
使用者に人権があるのです。
労働者に人権があります。
「すべて国民は、勤労の権利を有」するのだと、勤労の権利(第27条第1項)」が保障されています。
「賃金・就業時間・休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。」と労働条件の法定(第27条第2項)」を保障しています。
労働者が人間らしい生活を送ることができるようにしています。
近代社会は自由で対等な市民(個人)がお互いに自由な意志に基づき契約を結ぶ平等な社会が理念です。
しかし、経済的に弱い立場にある1人ひとりの個人としての労働者は使用者と対等な立場で労働契約を結べるわけではありません。
労働者と使用者との間の実質的不平等を是正し、経済的に弱い立場にある労働者が経済的な強者である使用者と対等の立場に立てるようにするために、「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」として労働基本権(第28条)」を保障しています。そして労働基準法や労働組合法などの労働法があります。
労働者に人権があるのです。
労働者、使用者、それぞれに人権が保障されているのです。
双方に人権があるというのは、労働紛争が発生したときに、それぞれの主張を“足して2で割る”という意味ではありません。
しかし、相手方にも人権があることを認識した上で、自らの人権をきちんと主張していくことが必要だと考えるべきではないでしょうか。
使用者側の立場で仕事をするから、労働者がどうなろうが関係ない。
労働者側の立場で仕事をするから、使用者がどうなろうが関係ない。
ほとんどの方は、使用者側の立場で仕事をすることになるでしょうが、
依頼者と対立する側の方にも人権があるということを意識した上で、依頼者の代理人として主張をしていくことが必要ではないでしょうか。
“労働者を大切にすることで結局は会社の利益になる”という考えを持てればそれは素晴らしいと思います。
しかし、そのような損得の発想とは別に、相手側にも人権があるのだという発想を持っていただきたいと思います。
使用者側(会社側)で社労士として仕事をする方がこれからすること。
労災で苦しむ労働者。
残業代が払われずに困っている労働者。
解雇や雇い止め(契約更新をしない)で困っている労働者。
苦しんでいる労働者のことを、知りましょう。
機会がなければ本を読みましょう。
大企業の社内組合のイメージではない、個人加盟の合同労組の存在を知りましょう。
“合労の奴ら”と十把一絡げの悪いイメージだけでなく、そこに助けを求める1人ひとりの個人としての労働者の抱える問題を知りましょう。
労働者側で社労士として仕事をする方がこれからすること。
零細企業で、会社の債務に個人として連帯保証人になっている社長のことを知りましょう。
連帯保証人としての担保として生命保険の契約をしているかもしれません。
ですから、殺されないためには夜逃げするしかない社長もいるかもしれません。
大企業とちがって法人の責任と個人としての社長の責任を切り離して問題が起きても知らん顔できるとは限りません。
社会保険労務士試験に今回は不合格だった方がこれからすること
独学だった方は受験指導校の講義を受けることも検討する。
費用的な問題、受験指導校の講座を受けるためにお金がないという方は、ネットで無料の講義を受けられる講座もあります。
“法律は耳学問”という言葉があります。
独学で本を読んで勉強するのはメリハリをつけずらく、全体像がつかめずに受験勉強に苦労します。
全体像を知っている講師からメリハリをつけて講義を受けることは大きなメリットです。
受験指導校で講義を受けていた方は、本の過去問集とテキストを行ったり来たりを繰り返す。
受験指導校のテキストには過去問の紹介がいくつもあると思います。
しかし、これとは別に過去問集の本を買うことは必須です。
過去問は年別ではなく、労働基準法や国民年金法など法律別の本を買います。
テキストにも過去問が書かれているのでもったいないから過去問の本を買わないという方もいますが買いましょう。
受験指導校に講座代を支払ったのに、過去問の本を買うお金を惜しむのは論外です。
講義を受けたら、講義を受けた範囲の過去問をすぐに解きます。
解いたら解説を読んで終わらせるのではなく、テキストの該当箇所に過去問用に決めた色でアンダーラインを引きます。
そして年度と過去問集の問題番号を短く略してメモします。
(小テストや模試などは別の色でアンダーラインを引きます。過去問同様のメモもします。)
試験年度によって問い方は変わりますが、同じ論点で繰り返し出る問題があります。
別の年度で問題が出ていたらアンダーラインをさらに1本引きます。
そしてその年度と過去問集の問題番号を短く略してメモします。
過去問集の解説ページにテキストの該当ページ数をメモします。
過去問を問いたあとに瞬時にテキストを読むことができるようになります。
テキストと過去問集へのこのアンダーライン・書き込みの作業はとても時間がかかります。
どんどん先に進みたい気持ちとは裏腹に時間がかかるこの作業にイライラするかもしれません。(頑張っている方ほどイライラして前に進みたくなるでしょう。)
しかし、過去問を解く2回目からは無駄な時間をかけずにスムーズにできるようになります。
“急がば廻れ”。過去問を回せばまわすほど楽になってきます。
直前期までに最低5回は過去問集をとくことになるはずです。間違えやすい問題は10回程度は解くことになります。
(Cランクの問題は、その年度だけの特有の捨て問題ですので、繰り返す必要はありません。)
繰り返し問われる論点は、テキストの該当箇所に何本もアンダーラインが引かれることになります。
テキストを見ると、大事な論点が一目でわかるようになるのです。
テキストをパラパラとめくって、短い時間で大事なところを何度も繰り返して読むことができます。
過去問は何度も繰り返して解きます。
・問題番号の横の空白に問題の論点を理解して正答した場合は「◯」をつけます。
・論点の理解が十分ではなくて正答した場合は「△」をつけます。
・誤答には「☓」をつけます。
そして「◯」以外の「△」と「☓」は、必ずテキストの該当ページを読んで理解します。
「△」と「☓」の問題には付せん(ポストイット)を貼りましょう。
そして、貼った付せんに指をかけてページを開きサッと問題を解きます。
問いて「◯」だったら、付せんを取ります。
付せんだらけだった過去問の本から付せんがどんどん取れていくのは理解が進んだことですので、気持ちよく勉強を進めていけます。
しかし「◯」だったからといってもういいではなく、「◯」が5回続くまでは繰り返し解くようにします。
そしてテキストの目次と本文の章立ての見出しはマーカーペンで色付けをしましょう。
参考記事はこちらです。
「専門書や初めての分野の本は、目次と本文の章・節の見出しをマーカーで色付ける。」
この色とは別の色で、講師がマークするようにと話した(言わない講師であれば、強調して話した箇所)部分にもマークします。
章立ての見出し、重要な部分、過去問、小テスト、模試、重要な部分がそれぞれの色で強調されたテキストができていきます。
直前期に向けて、短時間に見直せるあなたのオリジナルテキストを日々作り上げていくことになります。
テキストや過去問の論点や解説をみて理解できないときは、無理して時間をかけて考えるのはやめましょう。
鉛筆などで「?」マークをつけて付せんを貼って、次回講義のときに講師に質問して解決しましょう。
今日の1日1新:ケバブ丼
小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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