民事上の個別労働紛争とは労働基準法等の違反に係るものを除いた労働条件その他労働関係に関する事項についての個々の労働者と事業主との間の紛争のことです。
民事上の個別労働紛争を解決するために2019年度労働局による助言・指導とあっせんを求めた件数は15,061件ありました。
「令和元年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します 厚生労働省
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民事上の個別労働紛争解決に大きく役立っている労働局の助言・指導とあっせん
助言・指導で解決できなかった場合に、他の解決手段としてあっせんを利用することができますが、助言・指導の手続きをしなくても、あっせんの申請を行なうことができます。
【民事上の個別労働紛争】。聞き慣れない言葉かもしれません。
民事上の個別労働紛争の「民事上の」とは、ここでは労働基準法関連法令以外のことと理解してください。
労働基準法関連法令の違反については労働基準監督署に申告して是正を求めることができます。
しかし労働基準法関連法令違反以外のことについては労働基準監督署で取り締まることはできません。
民事上の個別労働紛争の「個別」とは「集団的」ではないということです。
「集団」とは労働組合と考えてください。集団的労使関係とは労働組合と会社との労働関係のことです。
個別労働紛争の「個別」とは労働組合を通じないで、個人としてあなたと会社との労働関係での紛争(労働トラブル・労働問題)であるということです。
公的機関を利用した民事上の個別労働紛争の解決の代表例として、厚生労働省の労働局の助言・指導やあっせん、労働委員会のあっせん、裁判所の民事訴訟と労働審判があります。
2019年度民事上の個別労働紛争の労働局長による助言・指導申出件数9,874件
2019年度民事上の個別労働紛争の労働局の紛争調整委員会によるあっせん申出件数5,187件
2019年労働委員会による個別労働紛争あっせんの新規係属件数330件
2018年労働関係民事通常訴訟事件の新受件数3,496件
2018年労働審判事件の新受件数3,369件
労働局長による助言・指導、労働局の紛争調整委員会によるあっせんが、民事上の個別労働紛争を解決するための方法として大きく役立っていることがわかります。
【労働局の助言・指導、あっせん】ほぼ全てが労働者からの申出・申請で利用されている
労働局長による助言・指導の申出、労働局の紛争調整委員会によるあっせん申請。
どちらについても、ほぼ全てが労働者からの申出・申請で行われています。
申出人・申請者の種類 | 労働者 | 事業主 |
---|---|---|
都道府県労働局長による助言・指導 | 9,839件(99.6%) | 35件(0.4%) |
都道府県労働局紛争調整委員会によるあっせん | 5,102件(98.4%) | 83件(1.6%) |
申出・申請している労働者の内訳ですが、
労働局長による助言・指導の申出、労働局の紛争調整委員会によるあっせん申請、どちらも約半数が正社員です。
約半数の正社員を除いた半数が短時間労働者、有期雇用労働者、派遣労働者など幅広い労働者に利用されています。
あなたがどのような雇用形態の労働者の方であっても、会社との民事上の個別労働紛争を解決するときに、労働局の助言・指導、あっせんが、公的機関を利用したとても身近な解決制度であるということがわかります。
【労働局の助言・指導】は1ヶ月以内。【あっせん】は2ヶ月以内。処理が早い。
処理件数 | 処理期間 | 内訳 | |
---|---|---|---|
都道府県労働局長による助言・指導 | 9,902件 | 1ヶ月以内での処理 | 9,620件(97.2%) |
都道府県労働局紛争調整委員会によるあっせん | 5,163件 | 2ヶ月以内での処理 | 4,300件(83.3%) |
【2019年度】労働局の助言・指導、あっせんを求めた合計数15,061件
2019年度【労働局長による助言・指導】申出件数9,874件
労働局長による助言・指導の申出内容は、いじめ・嫌がらせ、自己都合退職、解雇、労働条件の引下げで約50%。
残りの50%が退職勧奨、雇止め、出向・配置転換、雇用管理等、募集・採用、採用内定取消、その他の労働条件などさまざまな労働問題で労働局長による助言・指導の申出が行われていることがわかります。
2019年度【労働局の紛争調整委員会によるあっせん】申請件数5,187件
労働局の紛争調整委員会によるあっせんの申請内容は、いじめ・嫌がらせ、解雇で50%を超えています。
雇止め、退職勧奨、労働条件の引下げが続いて、自己都合退職、出向・採用内定取消、雇用管理等、その他の労働条件などさまざまな労働問題で労働局の紛争調整委員会によるあっせんの申請が行われていることがわかります。
あっせんを申請すると、約6割が相手方が参加します。そして4割が合意が成立して解決しています。
もしも、相手方が参加せずあっせんが開かれなかった場合、あっせんが開かれたものの合意が成立しなかった場合は、他の方法で紛争の解決をめざすことができます。
2019年度総合労働相談コーナー相談者のうち約95%(約26万4千人)が労働局の助言・指導、あっせん求めていない
全国の労働局と労働基準監督署に設置された総合労働相談コーナーに27万9,210件の民事上の個別労働紛争の相談がありました。
この28万件近い相談の中で労働局長による助言・指導の申し出と紛争調整委員会によるあっせんの申請を合わせた件数は約1万5千件です。
相談件数に対して助言・指導とあっせんを求めた件数の割合は5%台です。
総合労働相談コーナーに民事上の個別労働紛争で相談した残りの95%の方はどうなったのでしょうか?
相談した結果として労働局による助言・指導とあっせんを求めることなく解決できた方もいるのでしょうが、あきらめてしまった方がいるとしたらとても残念なことです。
いじめ・嫌がらせ、解雇や退職勧奨、自己都合退職をはじめさまざまな労働条件や募集・採用など幅広い労働問題を解決するために、労働局による助言・指導とあっせんを利用することができます。
労働局による助言・指導の申し出とあっせんの申請はあなた1人だけでも行なうことができます。
もしも自分で適切な文章で必要な書類に作成することにハードルが高く感じて申し出・申請を踏みとどまっているのでしたら、特定社会保険労務士に相談・依頼をすることができます。
総合労働相談センターに民事上の個別労働紛争で相談した方のうち助言・指導とあっせんを求めた5%台を除いた残りの約95%の方から特定社会保険労務士に対して相談・依頼ができていたとしたらどうなるでしょうか?
総合労働相談センターに民事上の個別労働紛争で相談した方のうち助言・指導とあっせんを求めた5%台を除いた残りの約95%の方の中の0.01%に対して1人の特定社会保険労務士が相談・依頼を受けることができれば年間264人1月あたり22人の方が労働局による助言・指導とあっせんを求めることができます。
10人の特定社会保険労務士で0.1%、100人の特定社会保険労務士で1%、1000人の特定社会保険労務士で10%。
総合労働相談コーナーに民事上の個別労働紛争で相談した方のなかで、もしかしたらあきらめてしまったかもしれない労働者の方が労働局による助言・指導とあっせんを求めることができるようになります。
【編集後記】
特定社会保険労務士への相談・依頼することであなたの民事上の個別労働紛争の問題解決ができることをもっと知っていただければと思います。
あなたの民事上の個別労働紛争の問題。労働局の助言・指導、あっせんを利用して解決をめざしてみませんか。
小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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