同じ会社で働いているのに、正社員と「非正規」のあいだにある待遇についての不合理な格差。
雇用形態のちがいによる待遇の不合理な格差を禁止する「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(「パートタイム・有期雇用労働法」)。
2021年4月1日から「パートタイム・有期雇用労働法」が中小企業にも適用されます。
不合理な待遇差の禁止
同じ会社のなかの正社員と非正規雇用労働者との間での、不合理な待遇差が禁止されます。
- 基本給、昇給、賞与、各種手当といった賃金だけではありません。
- 教育訓練や福利厚生などのあらゆる待遇について不合理な待遇差が禁止されます。
2021年4月1日から「パートタイム・有期雇用労働法」が中小企業にも適用されます。
厚生労働省のガイドライン(指針)に、どのような待遇差が不合理に当たるかが例示されています。参考に見てみましょう。
同一労働同一賃金ガイドライン(厚生労働省告示第430号)
読むよりも、聞いた方がわかりやすいという方。
労働者にも参考になる、厚生労働省の動画があります。
会社への解説ではあるのですが、見てみてはいかがでしょうか。
8つのチャプターにわかれていますので、きになる部分だけ見ることもできますので。
<解説動画>改正後のパートタイム・有期雇用労働法で求められる企業の対応について
チャプター | 内容 | (時間) |
---|---|---|
プロローグと チャプター1 |
法改正の目的と主な改正点について | (3分06秒) |
チャプター2 | 不合理な待遇差をなくすための規定の整備 | (9分16秒) |
チャプター3 | 不合理な待遇差をなくすための規定の整備 ~同一労働同一賃金ガイドライン~ |
(12分38秒) |
チャプター4 | 参考となる判例 | (7分14秒) |
チャプター5 | 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化 | (6分11秒) |
チャプター6 | 法改正に対応するための取組手順について | (8分26秒) |
チャプター7 | 裁判外紛争解決手続 『行政ADR』の規定の整備等 |
(1分30秒) |
チャプター8 とエピローグ |
法改正に対応するための 事業主の皆さまへの支援について |
(2分33秒) |
<解説動画>改正後のパートタイム・有期雇用労働法で求められる企業の対応について 厚生労働省
労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
「非正規」労働者の方は、「正社員との待遇差の内容や理由」などについて、会社(事業主)に説明を求めることができます。
「非正規」労働者から求められた場合、会社(事業主)は説明する義務があります。
正社員との不合理な待遇差があると思ったら、会社(事業主)に説明を求めましょう。
行政(労働局)による事業主への助言・指導または勧告・調停をもとめることができます
行政(労働局)が、事業主への助言・指導または勧告ができるようになります。
そして、労働者のあなたは労働局に申請して紛争解決のために調停を求めることもできます。
会社にあなたが個人として説明・改善をもとめても、のらりくらりとして誠実に対応してくれない・・・
そんな場合には、
あなたと会社のあいだに役所(行政)がはいることで、会社が誠実な対応をする可能性が高まります。
- 事実関係を主張しあって争うのが苦手な方。(裁判)
- 集団で会社と立ち向かって団体交渉する方法が苦手な方。(労働組合)
対立する両者が直接ぶつかりあうのが苦手という方、(特に「内向型」労働者の方)
行政(労働局)があいだにはいって話し合いによる解決をめざす、【調停】があります。
労働局による調停という手段があることを知っておきましょう。
短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律
24条(紛争の解決の援助)
(1項)都道府県労働局長は、前条に規定する紛争に関し、当該紛争の当事者の双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合には、当該紛争の当事者に対し、必要な助言、指導又は勧告をすることができる。
2項 事業主は、短時間・有期雇用労働者が前項の援助を求めたことを理由として、当該短時間・有期雇用労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
25条(調停の委任)
(1項)都道府県労働局長は、第23条に規定する紛争について、当該紛争の当事者の双方又は一方から調停の申請があった場合において当該紛争の解決のために必要があると認めるときは、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第6条第1項の紛争調整委員会に調停を行わせるものとする。
2項 前条第2項の規定は、短時間・有期雇用労働者が前項の申請をした場合について準用する。
26条(調停)
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年法律第113号)第19条、第20条第1項及び第21条から第26条までの規定は、前条第1項の調停の手続について準用する。
この場合において、同法第19条第1項中「前条第1項」とあるのは「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律第25条第1項」と、同法第20条第1項中「関係当事者」とあるのは「関係当事者又は関係当事者と同一の事業所に雇用される労働者その他の参考人」と、同法第25条第1項中「第18条第1項」とあるのは「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律第25条第1項」と読み替えるものとする。
個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律
6条(委員会の設置)
(1項)都道府県労働局に、紛争調整委員会(以下「委員会」という。)を置く。
【調停】は行政(労働局)によるADR(裁判外紛争解決手続)の1つです。
公平・中立性の高い第三者である行政(労働局)が間にはいって、あなたと会社、それぞれから話をきいて調停案が作成されます。
「均衡待遇」や「待遇差の内容・理由に関する説明」。
こちらについても、行政ADRの対象となります。
調停は、紛争解決をめざして労働者(または会社)が労働局に申請することでおこなわれます。
調停の申請から調停案の受諾までの一連の手続きについて心配な方、自分でとりくむのが心配な方は、代理人に依頼することができます。
特定社会保険労務士はあなたの依頼を受けて代理人となることができます。
労働者のための社労士(労働者の立場で活動している特定社会保険労務士)に依頼することができますので安心しましょう。
調停の申請をうけると労働局では、紛争調整委員会があなたと会社の間にはいって、それぞれから話をききます。
そして、紛争調整委員会は紛争解決のための案(調停案)を作成します。
労働者であるあなたと会社、それぞれが調停案に納得して受けいれることで紛争が解決できます。
しかし、だされた調停案の内容に納得できない場合は、受けいれる必要はありません。
裁判・労働審判やその他の解決手段へとすすむこともできます。
同じ会社で働いているのに、正社員と「非正規」のあいだにある待遇についての不合理な格差になっとくできない。
会社に話しても、改善されない。まともに説明もしてくれない。
まずは労働局による調停による解決をめざしてみるというのも1つの方法です。
調停を申請したからといって、調停案にしばられてしまうものではありませんので、安心して申請しましょう。
裁判・労働審判をすることに迷いがあるという方も、裁判所ではない、労働局(行政・役所)に申請して調停による解決をめざすという方法があることを知っていただければと思います。
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小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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