業務による過重負荷を原因とする脳・心臓疾患の労災認定基準。
2001年12月改正から約20年。2021年9月15日に改正されました。
「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について」基発0914第1号 令和3年9月14日 厚生労働省
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脳・心臓疾患の労災認定基準で対象となる病気
1 | 脳血管疾患 | (1) 脳内出血(脳出血) (2) くも膜下出血 (3) 脳梗塞 (4) 高血圧性脳症 |
2 | 虚血性心疾患等 | (1) 心筋梗塞 (2) 狭心症 (3) 心停止(心臓性突然死を含む。) (4) 重篤な心不全 (5) 大動脈解離 |
動脈の閉塞または解離、肺塞栓症やその原因となる深部静脈血栓症は、脳・心臓疾患の労災認定基準ではなく別の基準で判断するとされています。
脳・心臓疾患は、動脈硬化などによる血管の病変などが基礎となって少しづつに悪化して長年の経過(自然経過)をたどって起こる病気です。
脳・心臓疾患の労災認定基準では、
業務による加重負荷によって自然経過をこえて悪化して脳・心臓疾患が起こった場合は、業務が相対的に有力な原因であると判断されて、業務に起因する病気として労災として認められます。業務による過重負荷の判断に当たっては、労働時間の長さ等で表され る業務量や、業務内容、作業環境等を具体的かつ客観的に把握し、総合的に判断する必要がある
とされています。
脳・心臓疾患の 労災認定要件 |
(1)(2)(3)の 業務による明らかな過重負荷を受けたことにより 発症したこと |
---|---|
(1)長期間の過重業務 | 発症前の長期間にわたって、 著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したこと。 |
(2)短期間の過重業務 | 発症に近接した時期において、 特に過重な業務に就労したこと。 |
(3)異常な出来事 | 発症直前から前日までの間において、 発生状態を時間的及び場所的に明確に し得る異常な出来事に遭遇したこと。 |
この「脳・心臓疾患の労災認定基準」が約20年ぶりに2021年9月15日に改正されました。
業務の加重性の評価(従来から変わらない認定基準)
長期期間の過重業務 | 業務の加重性の評価(従来と変わらない基準) |
---|---|
労働時間 | ・発症前1か月間に100時間または2~6か月間平均で月80時間を超える時間外労働は、発症との関連性は強い ・月45時間を超えて長くなるほど、関連性は強まる ・発症前1~6か月間平均で月45時間以内の時間外労働は、発症との関連性は弱い |
労働時間以外の負荷要因 | ・ 拘束時間が長い勤務・出張の多い業務 など |
業務の加重性の評価(新たに加わった認定基準)
長期期間の過重業務(労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合評価)
長期間の過重業務の評価に当たり、「労働時間」と「労働時間以外の負荷要因」を総合評価して労災認定することが明確化されました。
発症前1か月間に100時間または2〜6か月間平均で月80時間を超える時間外労働ではないもののこれに近い時間外労働に、労働時間以外の負荷が加わった場合は、業務と発症との関連が強いと評価することが明示されました。
労働時間以外の負荷要因となる評価対象の追加
労働時間以外の負荷要因となる評価対象が追加されました。
- 勤務間インターバルが短い勤務
- 身体的負荷を伴う業務など
短期間の過重業務、異常な出来事の業務と発症との関連性が強いと判断できる場合を明確化
短期間の過重業務で業務と発症との関連性が強いと判断できる場合として発症前おおむね1週間に継続して深夜時間帯に及ぶ時間外労働を行うなど過度の長時間労働が認められる場合
が例示されています。
【編集後記】
脳・心臓疾患の労災認定これまで残業時間だけで判断されていると言われていました。
労働時間以外の負荷要因として、勤務間インターバルが短い勤務や身体的負荷を伴う業務などが追加されました。
労働時間以外の負荷要因と総合評価するとはいえ、労働時間が負荷要因として重要な評価基準であることは変わりありません。
労働時間の記録が重要です。タイムカードのコピー、出退勤記録を印刷、mailの記録など普段から保存して持ち帰りましょう。
小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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