2021年度の過労による脳・心臓疾患の労災認定は3人に1人(32.8%)でした。(2021年度の「過労死等の労災補償状況」厚生労働省)
過労死等の労災補償状況で厚生労働省は、脳・心臓疾患と精神障害の労災申請とその結果について公表しています。
- 過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患
- 仕事による強いストレスが原因で発病した精神障害
精神障害の労災についてはこちらの記事で紹介しています。
2021年度【精神障害】の労災認定件数629件(認定率32%)
この記事では、2021年度の過労による脳・心臓疾患の労災について紹介しています。
Contents
2021年度【脳・心臓疾患】の労災認定は3人に1人(32.8%)
2021年度【脳・心臓疾患】の労災認定率は32.8%でした。
労災申請した方のおよそ3人に1人が労災として認められたことになります。
2021年度に行われた脳・心臓疾患による労災請求(労災申請)は753件。前年度にくらべると「請求数」は31件へっています。
請求件数は31件へっていますが、労災として認めて保険給付するか労災とは認めず不支給とするかを決める「決定数」はさらに大きく140件へっています。
申請件数の減少は31件ですが、決定数の減少が140件と大きかったこともあり、申請数と決定数との差は228件あります。
前年度での差との対比で109件差が大きくなっています。
2021年度【脳・心臓疾患】請求(労災申請)・支給決定(労災認定)ともに「自動車運転従事者」が断トツで多い
2021年度の脳・心臓疾患による労災、請求(労災申請)・支給決定(労災認定)のどちらも断トツで多いのが「自動車運転従事者」です。
自動車運転従事者の脳・心臓疾患請求(労災申請)は150件、2番目に多い建設従事者40件の4倍に近い請求数です。
自動車運転従事者の脳・心臓疾患の支給決定(労災認定)は53件、2番目に多い法人・団体管理職員15件の3.5倍です。
脳・心臓疾患による労災は、どの産業でも請求(労災申請)されていますので、どのような仕事をしてても注意が必要ですが、自動車運転従事者の多さは突出しています。
厚生労働省の統計によると、トラックやバスの運転者の超過実労働時間は全産業平均の2〜3倍、長時間労働が問題になっています。
自動車運転者の基礎統計 | 年齢 | 所定内実労働時間 | 超過実労働時間 |
---|---|---|---|
全産業平均 | 43.2歳 | 165時間 | 10時間 |
トラック(大型) | 49.4歳 | 176時間 | 35時間 |
トラック(中古型) | 49.4歳 | 176時間 | 31時間 |
タクシー | 59.5歳 | 166時間 | 16時間 |
バス | 51.8歳 | 159時間 | 28時間 |
第6回労働政策審議会労働条件分科会 自動車運転者労働時間等専門委員会バス作業部会資料(厚生労働省)から作成
バスの運転手の勤務間インターバルは、1回の勤務から次の勤務までの間で継続9時間を下回らないことが求められると言われますが、朝9時出勤で前日12時まで勤務できることになります。
通勤が片道30分の場合でも往復で1時間、9時間から通勤時間1時間を引くと残りは8時間しかありません。
食事や入浴で1時間としても残りは7時間、それ以外に生活に必要な時間を引くと健康に生きるための睡眠時間が足りなくなります。
生物として必要な睡眠のために1日8時間、残る16時間のうち半分を通勤を含めた労働のために8時間、仕事をのぞいた部分の人間としての生活のために8時間。1日を3等分して労働に当てる時間の上限として8時間を考えて勤務間インターバルを決める必要があります。勤務間インターバルが9時間では生物として必要な睡眠さえ不足していまいます。
勤務間インターバルは16時間以上は必要です。
勤務間インターバルが9時間などと言われている自動車運転従事者の労働条件の過酷さが、脳・心臓疾患の労災を生み出していることがわかります。
2021年度【脳・心臓疾患】請求(労災申請)・支給決定(労災認定)ともに40歳以上が桁違いで多い
20代以下に比べると30代は、脳・心臓疾患による請求(労災申請)が4倍多くなっています。
40代は30代の3倍、50代以降はさらに多くなっています。
10代・20代だからといって過労死をふくむ脳・心臓疾患の危険があります。若いからといって無茶な働き方(働かせられ方)をしてはいけません。
そして、30代以上、40代以上の方はとくに危険です。
過労死をふくむ脳・心臓疾患で労災申請することがないように、働き方を変えましょう。
【編集後記】
2021年度過労による脳・心臓疾患の労災認定は32.8%、労災として認められたのは、労災申請した方のおよそ3人に1人でした。
基礎疾患(基礎的病態)がある方でも、業務が相対的に有力な原因となって脳・心臓疾患が発症した場合は業務上疾病として労災認定されます。
脳・心臓疾患の労災認定基準をよく理解した上でしっかりと準備をして労災申請(労災保険給付の請求)をしていくことが大切です。
小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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