2022年7月1日に厚生労働省から「令和3年度個別労働紛争解決制度の施行状況」が公表されました。
労働局による「あっせん」についても報告されています。
あっせん申請3,760件。
98%以上が労働者からの申請、使用者からの申請は労使双方からの申請を含めても1.8%。
労働局によるあっせんは、圧倒的に労働者にとっての身近な個別労働紛争の解決のための制度として利用されていることがわかります。
Contents
2021年度あっせん申請3,760件。98%以上が労働者からの申請
「あっせん」とは、厚生労働省が都道府県単位で設置している労働局にある紛争調整委員会のあっせん委員(弁護士や大学教授など労働問題の専門家)が労働問題の紛争当事者(会社側と労働者)の愛大に入って話し合いを促進して、労働紛争の解決をはかる制度。
2021年度の労働局によるあっせんの申請件数3,760件。前年度比で11.6%減っているものの、労働関係民事訴訟(3,960件)・労働審判(3,907件)の事件受件数に近い申請数です。
労働組合による集団的労使関係による労働問題の解決を除いた、個別労働紛争の解決において労働局によるあっせんでの解決を求めることは選択肢の1つとして大きな存在です。
紛争解決手段 | 2021年度の申請数・受件数 |
---|---|
労働局あっせん | 3,760 |
労働関係民事訴訟 | 3,960 |
労働審判 | 3,907 |
労働局へのあっせん申請は労働者に集中しています。
あっせん申請の98%以上が労働者からのものです。(使用者からのあっせん申請は2%に満たない)
申請した労働者の半数は正社員です。そして残り半数はさまざまな就労契約の労働者から申請されています。
「令和3年度個別労働紛争解決制度の施行状況」厚生労働省
労働問題(個別労働紛争)の解決を求める労働者にとって就労形態にかかわらず、労働局によるあっせんが身近な制度であることがわかります。
労働局によるあっせんの申請は東京が一番多い。全国の申請数の2割近くを東京が占める
労働局のあっせん申請は東京が一番多く、全国の2割近く(17.3%)を占めています。
東京のあっせん申請数は2位の大阪の2.5倍超と全国で断トツの多さです。
労働局によるあっせんを求めるのは、東京都内で働く労働者が日本全国で一番身近なことともいえます。
「令和3年度個別労働紛争解決制度の施行状況」厚生労働省
民事上の個別労働紛争についての相談、労働局長による助言・指導の申し出、あっせんの申請、いずれも労働契約の終了に関するものが一番多い、2番目に多いのがいじめ・嫌がらせ
2021年度の民事上の個別労働紛争についての相談件数は全体で352,914件、労働契約の終了に関する相談が112,739件でした。
労働契約の終了に関する相談が全体の約3分の1(31.9%)で最多、いじめ・嫌がらせが4分の1で2番目に多くなっています。
労働契約の終了に関する相談 | 2021年度の件数 |
---|---|
自己都合退職 | 40,501 |
解雇 | 33,189 |
退職勧奨 | 24,603 |
雇い止め | 14,346 |
合計 | 112,739 |
「令和3年度個別労働紛争解決制度の施行状況」厚生労働省
都道府県労働局長による助言・指導の申し出件数は延べ9,359件、労働契約の終了に関するものが2,606件で全体の約3割(27.8%)で最多、いじめ・嫌がらせが約2割(18%)で2番目に多く占めています。
助言・指導の申し出 | 2021年度の件数 |
---|---|
自己都合退職 | 771 |
解雇 | 736 |
退職勧奨 | 572 |
雇い止め | 527 |
合計 | 2,606 |
「令和3年度個別労働紛争解決制度の施行状況」厚生労働省
2021年度の助言・指導の処理件数は8,466件。1ヶ月以内の処理98.7%、助言・指導の実施は96.4%でした。
「令和3年度個別労働紛争解決制度の施行状況」厚生労働省
労働局紛争調整委員会によるあっせん申請は延べ4,020件。労働契約の終了に関する申請が1,527件で全体の4割近く(38%)がで最多、いじめ・嫌がらせが約3割(29.2%)で2番目に多いものでした。
労働契約の終了に関するあっせんの申請 | 2021年度の件数 |
---|---|
自己都合退職 | 153 |
解雇 | 743 |
退職勧奨 | 268 |
雇い止め | 373 |
合計 | 1,527 |
「令和3年度個別労働紛争解決制度の施行状況」厚生労働省
あっせん申請から処理終了まで2ヶ月以内が8割、
申請してあっせんが開催されたのは半数超、開催されたあっせんでの合意成立は6割超ありました。
裁判所ホームページから労働審判手続の概要を見ると「平成18年から令和元年までに終了した事件について,平均審理期間は77.2日であり,70.5%の事件が申立てから3か月以内に終了しています。」とあります。
労働関係民事訴訟よりも短く原則として3回以内の期日で審理を終えることから迅速な解決が期待できる労働審判でさえ3ヶ月以内での終了が7割です。
労働局のあっせんの期日は1回、申請から処理終了まで2ヶ月以内が8割ですので、労働局のあっせんは労働審判よりもさらに短期間での終了がめざせます。
労働局のあっせんは、申請から終了にいたるまで、労働者本人が1人でおこなうことができます。
申請書の記入や法的な視点から申し立てる添付書面の作成、あっせん期日のやりとりや和解契約の締結などをひとりで行なうことに不安がある方は特定社会保険労務士に依頼することもできます。
労働者の方からの労働問題の相談・あっせん代理(労働者のための社労士・小倉健二)
【編集後記】
今朝(2022/07/04)は久しぶりの雨。
雨のおかげなのか室温は29.6℃(湿度は67℃)。かなり涼しく感じています。
タニタの熱中症計TC210で暑さ指数(WBGT)27℃になるとアラート音が鳴る設定をしていますが、この記事を書いているあいだに室温30.3℃、湿度72%で暑さ指数が27℃になりアラート音が鳴り響いたのでエアコンをつけました。
温度も湿度も少しづつ上昇すると我慢できてしまうので、アラート音でエアコンをつけることにしています。
小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
最新記事 by 小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都) (全て見る)
- 【産休・育休】厚生年金・健康保険の保険料免除について知ろう - 2023年3月29日
- 2023年4月1日【出産育児一時金】8万円増額1児50万円支給 - 2023年3月16日
- 【60歳で老齢年金繰上げ受給を検討中】繰上受給したあとで障害年金請求できるか? - 2023年3月14日