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2021年度の「過労死等の労災補償状況」厚生労働省が公表
厚生労働省は、2021年度の「過労死等の労災補償状況」を公表しました。(2022年6月24日)
過労死等の労災補償状況では、2つ(3種類)の労災の状況が報告されています。
- 過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患
- 仕事による強いストレスが原因で発病した精神障害
脳・心臓疾患と精神障害の労災申請とその結果について、過労死等の労災補償状況で見ることができます。
- 労災申請(労災保険の給付請求)件数
- 労災申請に対する認定結果(決定数)と労災保険給付の支給決定数
令和3年度「過労死等の労災補償状況」を公表します 厚生労働省
「過労死等の労災補償状況」を見ると、2021年度の精神障害の労災申請は前年度とくらべて295件増えていることがわかります。
その一方、精神障害の労災認定率は32%で変わっていないということもわかります。
2021年度【精神障害による労災】請求件数(労災申請件数)は295件増加、請求件数と決定件数との差は393件
2021年度の精神障害による労災請求件数(労災申請件数)は前年度とくらべて205件増加しています。
請求が205件増加したのに対して、決定件数の増加は47件でした。
ここでの「決定」とは、労災と認めて保険給付を支給するか労災とは認めず不支給とするかの決定のことです。
請求件数の増加(+205件)に対して決定件数の増加(+47)とで、2021年度で大きな差があることがわかります。
請求(労災申請)されてから決定するまでは、審査が行われますから期間が必要です。
このため申請と決定では年度がずれることがあるのは当然ではあります。
しかし、2020年度は前年度対比で決定数が320件増加したのに対して、2021年度の決定数の増加は47件でした。
請求数と決定数の差は、2018年度で359件、2019年度は474件。
2020年度での請求数と決定数の差は145件でしたが、2020年度は決定件数そのものが前年度対比で320件増加していたことがわかります。
決定件数が前年度対比での増加が47件だった2021年度では、請求数と決定数の差が393件と再び大きく増加しています。
精神障害の労災請求(労災申請)の増加に、労働基準監督署の審査・決定が追いついていないということでしょうか。
2021年度【精神障害による労災】「支給」決定は3分の1(32%)で変わらず
精神障害の労災支給決定件数は629件。前年度比21件の増加しています。
しかし、労災申請に対する決定数自体が47件増加しています。
労災として認められる割合が増えているわけではありません。
決定数に占める支給決定数の割合(労災認定率)は32%、前年度と同じです。
過去5年度の労災認定率を確認してみると、32%〜33%台。
労災申請数が増加し、決定数も年々増加していますが、労災認定率は32%〜33%で変わりません。
労災申請は個別のケースでまったく状況がちがいますので、統計結果には年度ごとで差異が大きくても良さそうな気もするのですが、どの年度も労災と認められる割合はおよそ3分の1、不思議と同じ割合で変わりません。
労災申請をした人のなかで支給決定が出るのは32%、だいたい3人に1人が労災認定されているということがわかります。
精神障害の労災認定件数は少し増えたが、労災と認められる割合は32%で変わらず。労災申請はしっかりと準備して臨もう
精神障害の労災認定(支給決定)は2021年度は629件。前年度対比で労災認定(支給決定)が21件増加しました。
しかし、支給・不支給の両方を合わせた決定件数の増加が47件あり、労災認定(支給決定)率そのものは32%で前年度と変わりません。
過去5年間の精神障害の労災認定(支給決定)率は32%〜33%、ほぼ同じです。
2021年度は精神障害の労災認定(支給決定)が増加したものの、労災申請した方のなかで労災として認められるのは3人に1人程度であるのは過去5年間同じです。
けっして、精神障害の労災申請をして労災認定(支給決定)されやすくなったわけではありません。
精神障害の労災認定基準をふまえて、業務以外の心理的負荷や個体的要因による発病ではないことがわかるように、しっかりと準備をして労災申請(労災請求)することが必要です。
【編集後記】
週末の土日(2022/06/25・26)は気温が33℃、週はじめの今日は34℃の予報。梅雨が明けたのではないかと思うほど。
まだ6月ですが、今週は35℃台まで気温があがる予報で熱中症が心配です。
熱中症アラームが鳴る黒球式温湿度計(タニタ)を注文し今日午前中にAmazonから届く予定。
室内・室外を問わず持ち歩いて熱中症予防に役立てたいと思っています。
小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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