【2021/09/22厚生労働省公表】2021年3月新卒者136人が内定取消し

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2021年3月に大学や高等学校などを卒業して就職予定だった方。
このなかで、内定取消しとなったり、入職(入社)時期が延期(繰下げ)となった方の状況(2021年年8月末現在)を取りまとめた結果が2021/09/22厚生労働省から公表されました。

2021年3月新卒者136人が内定取消されている[数値は2021年8月末現在]

2021年3月新卒者

()内の数値は、主として新型コロナウイルス感染症の影響によると考えられるもの

人数 事業所数
内定取消しとなった 136(124) 37(25)
入職時期が繰下げとなった 157(154) 14(11)

2021年3月新卒者採用内定取消しの状況

2021年3月新卒者採用内定取消しなどの状況

採用内定取消しは厚生労働省・労働局のあっせんによる解決をめざせる

個別労働関係紛争は、厚生労働省・労働局のあっせんにより解決することができます。

個別労働関係紛争とは、労働組合と会社との間でのものを除いた労働紛争のことです。

採用内定取消されたときに、その損害の補償についてあなたが会社との間で直接解決をめざすのは難しいでしょう。

公的機関である(厚生労働省)都道府県労働局による「あっせん」で話し合いによる解決をめざすのは1つの方法です。

裁判による解決をめざすことにハードルの高さを感じる方には、労働局による「あっせん」での話し合いによる解決はおすすめです。

2020年度採用内定取消しあっせん申請件数

「令和2年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します

採用内定取消しをめぐる労働局によるあっせん解決の事例

内定取消に補償金(神奈川労働局)

Aさんは、学童保育で非常勤職員をしていた20代の女性。保育園職員の求人を見て面接を受けた。

Aさんは、保育士の資格がなかったが、面接では、子どもが好きなので、勉強して資格を取りたいと述べた。

保育園ではAさんの熱意を評価し採用の内定を出した。

採用内定を受けたAさんは健康診断を受けるなどして提出書類を整え、勤めていた学童保育も辞め、雇入れ 期日の決定を待つだけの状態で待機していたが、一向に結論が出なかった。

そして結局届いたのは、採用を取消すとの通知であった。

Aさんは、横浜駅西口総合労働相談コーナーを訪れた。

相談員は、「判例で採用内定の取消には『客観的に合理的で社会通念上相当な事由』が必要であるという基準が示されていますが、今回は取消理由が明確ではありません。

募集・採用に係る紛争は、本来あっせん制度の対象ではありませんが、採用内定の取消によって生じた損害について金銭的な補償を求めることはあっせんの対象になりますので、そうした形で、あっせん委員の公平な判断を仰ぐことができます。」とアドバイスした。

Aさんがあっせん申請した結果、保育園側はAさんを採用内定した後に応募があった保育士の資格者を既に採用していたことと、その手続の非を認めて、Aさんの損害に対し前職の2ヶ月相当に当たる補償金の支払をすることとなった。

(厚生労働省・神奈川労働局あっせん事例

採用内定取り消しに関する事案(東京労働局)

事案の概要(人材派遣業)

申請人は会社の募集に応募し面接を受けたところ、担当官から「よろしくお願いしたい。」と言われ、入社の予定を内容とする書類を提出した。

申請人は、他社の内定を全て断り連絡を待っていたところ、不採用(内定取消)の通知を受けた。

申請人に落ち度は見られず、もはや後戻りできない状況であることから、会社に補償金を求めたが、拒否されたため、慰謝料を求めたいとして、あっせんを申請したもの。

あっせんのポイント

事業主は、面接をした担当者は「前向きに検討する。」と言ったに過ぎず、提出を求めた書類も採用を決定するようなものではないと申し立てたが、あっせん委員は、内定取消の最高裁判例等を示し、申請人が誤解するような言動が認められることを指摘し、双方の歩み寄りを求めた。

結果

あっせんの結果、事業主が解決金として30万円を支払うことで合意した。

(厚生労働省・東京労働局あっせん事例

採用内定取消しに関する紛争(埼玉労働局)

事案の概要

Y社は労働者派遣業を営むものであるが、ある会社担当者から、労働者派遣契約の内諾を得たことから、新たに派遣労働者を募集した。

Bさんは、これに応募し、Y社から採用内定を受け、派遣先事業場において作業説明を受けた。

しかし、その後Bさんを派遣する予定であった労働者派遣契約が不成立となったことから、Y社は、当初の予定とは別の派遣先を紹介することをBさんに提案したが拒否されたので、Bさんの採用内定を取り消した。

Bさんは、採用内定取消しによって受けた精神的苦痛に対する慰謝料として、予定されていた賃金3か月相当分の支払を求めてあっせん申請した。

申請人(労働者)の主張

Y社からは採用内定後の会社説明会において作業開始日が伝えられており、作業開始の数日前には派遣先において作業の説明も受けた。
それなのに、Y社担当者から作業開始日が延期されたとの連絡が2回あり、最終的には採用内定が取り消されてしまった。
会社の対応に納得できない。

被申請人(会社)の主張

ある会社の担当者から労働者派遣の依頼があり、そのための要員としてBさんを含む2名の労働者を採用することとした。
しかし、Bさんらを派遣する予定としていた会社の担当者から、当社とは別の派遣会社との契約が成立したため当社との話は無かったことにしてほしいと言われ、派遣契約は不成立となった。

そのため、Bさんに対しては別の仕事を紹介することで納得してもらえないかと話をしたが、当社での勤務を拒否された。

あっせんの結果

あっせん委員は、派遣契約の不成立についてはY社に同情の余地があるものの、契約の不成立にはBさんに何ら関係が無く、また、Y社が派遣先との正式な契約がない状態のまま、見切り発車的にBさんらの採用を内定したことに問題があったのではないかと指摘した。

一方、Bさんに対しては、派遣契約不成立後にY社が別な派遣先を紹介することを提案したのにもかかわらずこれを拒否した点も踏まえて譲歩するよう勧めた結果、Y社が予定されていた賃金額1か月分の約8割に相当する額を支払うことで両者が合意し、和解が成立した。

(厚生労働省・埼玉労働局あっせん事例

採用内定取消し(宮崎労働局)

口頭により採用内定を受けたので当時就労していた会社を退職したが、採用されないまま6ヶ月経過しその間他の会社への就職活動もできなかったため、6か月分賃金に相当する120万円の支払を求めて申請したもの。

会社は正式には内定通知を交付していないと主張していたが、あっせんの結果、採用内定と受け取られても仕方のない対応をしていたことを認め、80万円の支払をすることで双方合意した。

(厚生労働省・宮崎労働局あっせん事例

労働局による「あっせん」についての参考記事

労働局でのあっせん。どんな労働問題を解決できるか?

「内向型」労働者へお勧めしている労働局・労働委員会「あっせん」。対象となる紛争は何?

【編集後記】

夏が終わって安心してしまっているのか?ここ何日か暑さがきつく感じます。
水分をしっかりとって元気にすごしています。

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小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)

小倉健二(おぐらけんじ) 労働者のための社労士・労働者側の社労士 労働相談、労働局・労働委員会でのあっせん代理 労災保険給付・障害年金の相談、請求代理 相談・依頼ともに労働者の方に限らせていただいています。  <直接お会いしての相談は現在受付中止> ・mail・zoomオンライン対面での相談をお受けしています。 1965年生まれ57歳。連れ合い(妻)と子ども2人。  労働者の立場で労働問題に関わって30年。  2005年(平成17年)12月から社会保険労務士(社労士)として活動開始。 2007年(平成19年)4月1日特定社会保険労務士付記。 2011年(平成24年)1月30日行政書士試験合格