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残業代を払わないのは違法です。“36協定(時間外労働についての労使協定)がないから、残業代は出ない”は通りません。
違法で、本末転倒な話です。残業代は当然払わなければ違法です。
場合によっては、会社が労働者に2倍の金額を支払わなければならないことになる、倍返しの規定さえ労働基準法にあります。
勤めている会社では、“36協定”(サンロクキョウテイ・サブロクキョウテイ)という労使協定を結んでいないので、時間外労働についての定めがない。
だから時間外労働しても残業代は出ないことになっているんだよ、と言われた。
“36協定”って何のことだがわからないし、残業代が出ないなら定時で帰りたいし、定時で帰れないなら残業代払ってもらわないのは嫌だ。
冗談のような話ですが、“36協定”を締結していないので残業代は支払わないということを言う会社があります。
会社が書いた“36協定”の内容が時間外労働時間数が長く休日出勤数も多いので、職場の労働者代表がこの内容では“36協定”を締結できないと言うと、
締結しないと残業代が支払うことができず職場のみんなが困ることになるけどいいのか?などと本末転倒なことを言い出す会社もあります。
しかし、どれも労働基準法によって会社が禁止されていることで、違法なことです。
懲役または罰金を会社が処されることになる、違法な行為です。
労働基準法 119条 電子政府の総合窓口 e-Gov[イーガブ]
次の各号の一に該当する者は、これを六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
一 第三条、第四条、第七条、第十六条、第十七条、第十八条第一項、第十九条、第二十条、第二十二条第四項、第三十二条、第三十四条、第三十五条、第三十六条第一項ただし書、第三十七条、第三十九条、第六十一条、第六十二条、第六十四条の三から第六十七条まで、第七十二条、第七十五条から第七十七条まで、第七十九条、第八十条、第九十四条第二項、第九十六条又は第百四条第二項の規定に違反した者
二 第三十三条第二項、第九十六条の二第二項又は第九十六条の三第一項の規定による命令に違反した者
三 第四十条の規定に基づいて発する厚生労働省令に違反した者
四 第七十条の規定に基づいて発する厚生労働省令(第六十二条又は第六十四条の三の規定に係る部分に限る。)に違反した者
時間外労働への賃金を支払わないのは労働基準法違反
1日8時間、1週間で40時間を超える労働を会社は労働者にさせてはいけません。
労働基準法では、変形労働時間制を除いた法定時間を超える労働や、法定休日における労働が禁止されています。(32条)
誰に対して禁止しているのでしょうか。
“使用者は労働者に・・・させてはならない”となっています。
もちろん、会社(使用者)に対して、法定時間を超える労働をさせてはならないと法律が禁止しているのです。
労働基準法 32条
使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
2(項) 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。
例外的に、法定労働時間を超えて労働させたり、法定休日に労働させた場合でも、労働基準法違反として罰を、会社が受けないですむ2つの場合。
災害などによる臨時の必要がある場合(33条)。
最近、大阪で大きな震災がありました。
今回の震災により、被害を受けた電気、ガス、水道等のライフラインの早期復旧のため、被災地域外の他の事業者が協力要請に基づき作業を行う場合、33条により労働基準監督署長の許可(事態が急迫している場合は事後の届出)を受けることにより、必要な限度の範囲内に限っては、法定時間外労働・法定休日の労働をさせても労働基準法違反で会社が罰を受けることを免れることができます。
労働基準法第33条(災害時の時間外労働等)について 厚生労働省
“36協定”を結んで、労基署に届け出た場合(36条)。
36条に規定された書面による協定が労使(会社と労働者の過半数代表)により結ばれて労働基準監督署に届け出た場合(36条の規定による労使協定を通称“36協定”といいます。)は、法定時間外労働・法定休日の労働をさせても労働基準法違反で会社が罰を受けることを免れることができます。
36協定の締結と労基署への提出がないと、労働基準法違反で会社が罰せられます。
36協定をご存じですか? 厚生労働省
1日8時間、1週間で40時間を超える労働を会社は労働者にさせてはいけません。32条で禁止されています。
36条に規定された書面による協定が労使(会社と労働者の過半数代表)により結ばれて労働基準監督署に届け出た場合(36条の規定による労使協定を通称“36協定”といいます。)は、
法定時間外労働・法定休日の労働をさせても労働基準法違反で会社が罰を受けることを免れることができることを先ほど書きました。
罰を受けなくて済むという効果があることから、“36協定”の締結・届出は労働基準法違反の免罰効果があるといいます。
あくまで、会社が罰を受けなくて済むという免罰効果です。
そもそも、32条は労働者を守るための規定ですから、労働者が何らかの罰を受ける筋合いなど当然ありません。
“36協定”を結んでいないのだから、残業した労働者が法律違反になる、というトンデモナイことをいう会社もありますが、
違法として処罰されるのは、あくまでも会社(使用者)です。
“36協定”を結んでいない(あるいは、締結しても労基署に届け出ていない)から、残業代を支払う必要はない!と言われたという話も聞きます。こちらもトンデモナイ話です。
【違法な時間外、休日労働の割増賃金】
法第36条第1項の協定によらない時間外労働又は休日労働は、法32条又は第35条違反であるが、法第37条の規定は法第32条若しくは第40条に定める労働時間を超え又は法第35条に定める休日に労働させた場合に割増賃金を支払わねばならないという法意であるから割増賃金の支払義務は免れない。
昭和63年3月14日基発150号、平成11年3月31日基発168号
会社は賃金は全額を労働者に支払わなければなりません。(24条)
残業代も賃金です。
労働基準法違反をしたのは会社です。法律に反することをしておいて、
その上、相手方(労働者)に払わなければならない残業代を支払わないなどとする話は通りません。
残業代(法定時間外労働割増賃金)の未払いは、未払い額を支払うのは当然ですが、
労働者が裁判に訴えた場合、
未払い額と同じ額(付加金)を裁判所が支払いを命じることができます。
つまり、残業代を支払わない会社に対しては、労働者が裁判に訴えると2倍の金額(倍返し)を求めることができるようになっています。(114条)
残業代を支払わないということは、それだけ悪質な違法行為だといえます。
労働基準法 114条 電子政府の総合窓口 e-Gov[イーガブ]
裁判所は、第二十条、第二十六条若しくは第三十七条の規定に違反した使用者又は第三十九条第七項の規定による賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあつた時から二年以内にしなければならない。
1日8時間、1週間で40時間を超える労働を会社は労働者にさせてはいけません。32条で禁止されています。
“残業しちゃダメだって言っていたのに社員が勝手に残業してただけ”という理屈も通じません。
懲役または罰金に会社(使用者)が処されることになる、違法な行為です。
労働基準法においては、労働時間、休日、深夜業等について規定を設けていることから、使用者は、労働時間を適正に把握するなど労働時間を適切に管理する責務を有していることは明らかである。
労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置
始業・終業時刻の確認及び記録
使用者は、労働時間を適正に管理するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録すること。
労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準 厚生労働省
36協定があっても、時間外労働を命ずることはできない。時間外労働を命ずるには就業規則・労働協約による“契約”が必要。
“36協定”・労使協定は“契約”ではありません。
必要な要件を満たして“36協定”を締結して、労基署に届け出ると、
法定時間外労働・法定休日労働を労働者にさせた場合でも、
“36協定”に定められた範囲内での労働については、労働基準法違反としての罰を受けないという免罰効果があるというだけのことです。
実際に、労働者に法定時間外労働・法定休日労働をさせるには、
契約上の根拠が必要になります。
-
- 個別の労働者との労働契約
- 労働協約(会社と労働組合との書面による契約)
- 就業規則に定められていて内容が有効な場合
【編集後記】
労使協定と労働協約、ほとんど同じ日本語ですが内容は全く異なります。
神保町三井ビル入口のプランターに咲いていた小さな花。
雨に濡れて気持ちよく咲いているように見えました。
週末の1日1新:話し方教室第1回
記事「私は保険料払っていないけれど労災保険おりるの❓」の【編集後記】で書いたセミナー体験受講。
計12回(土曜コースでは6日)の教室です。昨年の12/16(土)体験受講してから日程の調整がつかずに半年過ぎましたが、いよいよ受講開始できました。
専門である障害年金・労働災害の学習は当然として、読む・書く、の学習に投資しています。
小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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