知的障害と発達障害。障害年金を請求するときに重要な“初診日”の考え方が違いますので、注意が必要です。
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知的障害と発達障害は、初診日の考え方が違う。
障害年金請求における初診日 | ||
---|---|---|
知的障害 | 出生日。初診日の証明不要 | 20歳前障害 |
発達障害 | 3級に該当しない程度の知的障害がある場合も含めて知的障害がない場合は、原則通り初めて医師の診察を受けた日 |
知的障害による障害年金を請求する場合は、出生日が初診日として扱われています。
出生日が初診日として扱われるため、初診日の証明の提出がいりません。
初診日が出生日として扱われますので、“20歳前傷病による障害”となります。
したがって、保険料納付要件も問われません。
障害認定日(20歳に達した日=20歳誕生日の前日)に障害年金を受け取れる程度の障害の状態であれば障害年金を受けられます。
発達障害のによる障害年金を請求する場合は、知的障害とはちがい原則通りの初診日です。
知的障害によらない障害年金は3つの要件を満たすと受けとることができます。
(1)初診日 (2)障害の程度 (3)保険料納付
障害年金を受け取るための3要件についてはこちらの記事「会社を辞めようと思っているなら、具合の悪いところは我慢していないで、会社を辞める前に医者に診てもらっておくこと」で紹介しました。
知的障害と発達障害は、どちらも精神の障害による障害の程度によって認定されます。
精神の障害の区分 | |
---|---|
1 | 統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害 |
2 | 気分(感情)障害 |
3 | 症状性を含む器質性精神障害 |
4 | てんかん |
5 | 知的障害 |
6 | 発達障害 |
アルコール、薬物などの精神作用物質の使用による精神障害については、症状性を含む器質性精神障害に基づいて障害年金の認定が行われることは「アルコール依存症の方も障害年金を請求できます。」の記事で紹介しました。
知的障害と発達障害。障害年金支給が認定される障害の程度。
精神の障害
国民年金法施行令別表 | 障害の程度 | 障害の状態 |
---|---|---|
国年令別表 | 1級 | 精神の障害であって、前各号(身体の障害の状態1号〜9号)と同程度以上と認められる程度のもの |
2級 | 精神の障害であって、前各号(身体の障害の状態1号〜15号)と同程度以上と認められる程度のもの | |
厚生年金方施行令別表第1 | 3級 | 精神に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの |
3級 | 精神に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの | |
厚生年金方施行令別表別表第2 | 障害手当金 | 精神に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの |
知的障害の認定要領
知的障害とは、知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に持続的な支障が生じているため、何らかの特別な援助を必要とする状態にあるものをいいます。
各等級に相当すると認められるものを一部例示
障害の程度 | 障害の状態 |
---|---|
1級 | 知的障害があり、 日常生活への適応が困難で、常時介護を要するもの |
2級 | 知的障害があり、 日常生活における身辺の処理にも援助が必要なもの |
3級 | 知的障害があり、労働が著しい制限を受けるもの |
発達障害の認定要領
- 発達障害とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものをいいます。
- 発達障害については、たとえ知能指数が高くても社会行動やコミュニケーション能
力の障害により対人関係や意思疎通を円滑に行うことができないために日常生活に 著しい制限を受けることに着目して認定を行ないます。
また、発達障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加 重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定します。 - 発達障害は、通常低年齢で発症する疾患であるが、知的障害を伴わない者が発達障害の症状により、初めて受診した日が20歳以降であった場合は、当該受診日を初診日とします。
各等級に相当すると認められるものを一部例示
障害の程度 | 障害の状態 |
---|---|
1級 | 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、かつ、著しく不適応な行動がみられるため、日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの |
2級 | 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が乏しく、かつ、不適応な行動がみられるため、日常生活への適応にあたって援助が必要なもの |
3級 | 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が不十分で、かつ、社会行動に問題がみられるため、労働が著しい制限を受けるもの |
【編集後記】
知的障害による障害年金の請求では、初診日要件・保険料納付要件も問われないのと比べると、
発達障害による障害年金の請求では、障害年金受給の3要件とも問われます。
しかし、見方を変えると、発達障害の方の場合は初診日に厚生年金の被保険者でしたら、障害基礎年金に加えて障害厚生年金も受け取れますので年金額は多くなります。
昨日の1日1新:ともえ庵のたい焼き
小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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