新型コロナで倒産しても賃金は受けとれる

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帝国データバンクの発表によると、「新型コロナウイルス関連倒産」(法人および個人事業主)は、全国に2818件判明(2月7日16時現在)とのことです。

「新型コロナウイルス関連倒産」全国2818件判明(2月7日16時現在)帝国データバンク

株式会社帝国データバンクの調査結果によると、新型コロナウイルスの影響を受けた倒産は2022年2月7日16時時点で全国に2,818件確認されているとのことです。

2020年841件、2021年1,820件、今年2022年はすでに157件。

東京(566 件)、大阪(295 件)、神奈川(176 件)の3都府県で全体の3割を超えています。東京だけで全体の2割を占めていることもわかります。

業種別にみると、飲食店がもっとも多く466、続く建設・工事業が310、食品卸143、ホテル・旅館124、アパレル小売113。

この5つの業種で全体の約4割を占めていますが、他にも幅広い業種で倒産しています。

コロナ倒産数(2022/02/07時点) 2818
飲食店 466
建設・工事業 310
食品卸 143
ホテル・旅館 124
アパレル小売 113
その他 1662

詳しい内容は帝国データバンクのホームページから確認できます。

2022/2/7 新型コロナウイルス関連倒産 帝国データバンク

新型コロナウイルス関連で倒産した事業で働いていた労働者の方が、賃金を全額受けとることができたのか?とても心配です。

実際には、賃金を受けとれずに泣き寝入りしてしまっている方も少なくないでしょう。

新型コロナによる倒産でも未払賃金は受けとれる

「倒産しちゃったから給料は払えない」は違法です。

労働者には賃金の全額を支払わなければなりません。

労働基準法24条(賃金の支払)

(1項)賃金は、通貨で、直接労働者にその全額を支払わなければならない

ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。

2項 賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。

ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第89条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。

賃金の未払いは労働基準法違反ですから、労働基準監督署に未払いを是正するように申告しましょう。

労働基準法違反の申告であることを伝えて、労働基準監督官に話します。

労働基準法104条1項(監督機関に対する申告)

事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。

賃金にかんする資料はいつでもそろえておく

たとえ倒産であっても、未払いの賃金は全額を労働者に支払う義務が使用者(会社)にはあります。

未払賃金を請求する権利がありますので、賃金の未払いがいくらあるのか?ふだんから証拠を残しておきましょう。

毎月の給与明細、タイムカードや出退勤時刻がわかる資料、就業規則の賃金や賞与(ボーナス)の計算に関する規定など、書類をコピーして自宅に持ち帰って保管しておくなど、賃金にかんする資料はいつでもそろえておきましょう。

倒産して会社から賃金を受けとれないなら、未払賃金立替払制度を利用する

倒産しても未払いの賃金を労働者に支払う義務があります。

そして未払賃金(労働債権)は商品仕入の買掛金など(一般債権)よりも優先されます。

参考記事
【事実上の倒産】未払賃金には先取特権がある

しかし、支払うための資産がのこっていないために、未払いの賃金を受けとれないこともあります。

倒産して受けとれない賃金がある労働者の方は、年齢による上限額がありますが、未払賃金の8割を国が労働者に支払う制度があります。

賃金の支払の確保等に関する法律に基づく「未払賃金の立替払制度」です。

この制度を利用できる「倒産」は法律上の倒産だけでなく、中小企業については事実上の倒産も含まれています。

事実上の倒産の認定は労働基準監督署が行なうことになっています。

未払賃金の立替払制度 の御案内

未払賃金の立替払制度 の御案内2
新型コロナウイルス感染症の影響により、事業場が 倒産し賃金が未払のまま退職された労働者の皆様へ
「未払賃金の立替払制度」の御案内~賃金の支払の確保等に関する法律に基づく制度~ 厚生労働省

【編集後記】

  • 働いていた会社が新型コロナで倒産した場合でも未払いの賃金は受けとれる。
  • 未払いの賃金の証拠となる資料を今から集めておく。
  • 倒産して未払いの賃金を受けとれていないときは、国から未払賃金の8割を受けとれる。「未払賃金の立替払制度」を利用できないか労働基準監督署で相談する。

新型コロナ関連の倒産はこれからもあるでしょうから、もしもにそなえて知っておいていただきたいと思います。

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小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)

小倉健二(おぐらけんじ) 労働者のための社労士・労働者側の社労士 労働相談、労働局・労働委員会でのあっせん代理 労災保険給付・障害年金の相談、請求代理 相談・依頼ともに労働者の方に限らせていただいています。  <直接お会いしての相談は現在受付中止> ・mail・zoomオンライン対面での相談をお受けしています。 1965年生まれ57歳。連れ合い(妻)と子ども2人。  労働者の立場で労働問題に関わって30年。  2005年(平成17年)12月から社会保険労務士(社労士)として活動開始。 2007年(平成19年)4月1日特定社会保険労務士付記。 2011年(平成24年)1月30日行政書士試験合格