新型コロナウイルス感染症は労災保険給付の対象になります。
いわゆる「後遺症」も労災保険給付の対象です。
仕事で感染したコロナ。もう治ったと思っていたんだけど、調子が悪くてたまらないなぁ。
Contents
細菌・ウイルスなどの病原体による感染症は労災保険給付の対象となる病気
業務遂行性と業務起因性のあるケガや病気は業務災害であり、労災保険から給付がうけられます。
- 業務遂行性とは、労働者が労働契約に基づいて使用者の指揮命令下にあるということ。
- 業務起因性とは、業務が原因となってケガをしたということです。
参考記事
労災保険。業務災害として認められるには。業務起因性と業務遂行性。
新型コロナウイルス感染症にかぎらず、細菌やウイルスなどの病原体による病気は労災保険給付の対象です。
労働基準法施行規則別表第1の2第6号
細菌、ウイルス等の病原体による次に掲げる疾病
1 患者の診療若しくは看護の業務、介護の業務又は研究その他の目的で病原体を取り扱う業務による伝染性疾患
2 動物若しくはその死体、獣毛、革その他動物性の物又はぼろ等の古物を取り扱う業務によるブルセラ症、炭疽病等の伝染性疾患
3 湿潤地における業務によるワイル病等のレプトスピラ症
4 屋外における業務による恙虫病
5 1から4までに掲げるもののほか、これらの疾病に付随する疾病その他細菌、ウイルス等の病原体にさらされる業務に起因することの明らかな疾病
新型コロナ感染症は他の病原体による病気よりも労災保険給付が認められやすい運用
もともと細菌やウイルスなどの病原体による病気は労災保険給付の対象ですが、病原体による病気であっても新型コロナウイルス感染症については労働災害と認められやすくなっています。
当分の間 調査により感染経路が特定されなくとも、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められる場合には、これに該当するものとして、労災保険給付の対象とすること
になっています。
新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて 厚生労働省
「医療従事者等」は業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象となります。
「医療従事者等」以外の労働者も感染経路が特定されて感染源が業務に内在していたことが明らかに認められたものはもちろん業務災害です。
その他に医療従事者等以外の、感染経路が特定されない場合の労災保険給付の対象となる具体的な取扱いがあります。
参考記事
【新型コロナウイルス感染】 オミクロンや後遺症も含め労災の対象
2022/05/12厚労省通達「新型コロナウイルス感染症による罹患後症状の労災補償における取扱い等について」
2022年5月12日付で厚生労働省から通達「新型コロナウイルス感染症による罹患後症状の労災補償における取扱い等について」が出されています。
通達にある「罹患後症状」とは「いわゆる”後遺症”」のことです。
労働災害による病気やケガが「治癒」(ちゆ)したあとの後遺障害と誤解しないように「後遺症」という言葉はつかわず「罹患後症状」と呼びます。
罹患後症状はpersistent symptoms や lingering symptoms とも呼ばれ , COVID-19罹患後 , 感染性は消失したにもかかわらず , 他に明らかな原因がなく , 急性期から持続する症状や , あるいは経過の途中から新たに , または再び生じて持続する症状全般をいう . 罹患後症状が永続するかは不明である . この罹患後症状が存在する状態 (condition) は先述の通り postCOVID-19 condition や long COVID と呼ばれている .
新型コロナウイルス感染症COVID-19診療の手引き
別冊罹患後症状のマネジメント
新型コロナウイルス感染症による罹患後症状には、さまざまな症状があります。
新型コロナウイルス感染症の代表的な罹患後症状 |
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疲労感・倦怠感 |
関節痛 |
筋肉痛 |
咳 |
喀痰 |
息切れ |
胸痛 |
脱毛 |
記憶障害 |
集中力低下 |
不眠 |
頭痛 |
抑うつ |
嗅覚障害 |
味覚障害 |
動悸 |
下痢 |
腹痛 |
睡眠障害 |
筋力低下 |
新型コロナウイルス感染症COVID-19診療の手引き
別冊罹患後症状のマネジメント
2022年5月12日の厚生労働省の通達では、新型コロナウイルス感染症の「罹患後症状」についても労災保険給付の対象としてきたことがあらためて記されています。
罹患後症状がいまだ不明な点が多いことなどを理由として、労災保険給付の対象とならないと誤解されるような対応は行わないよう徹底することが明記されています。
基補発0512第1号 2022年5月12日 厚生労働省
【編集後記】
新型コロナ感染者数は減る一方とはなかなかいっていません。
コロナに感染しないように注意ししっかりと対策をとりながら、万が一仕事で感染した場合は労災申請をしましょう。
小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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