変異株オミクロンによる新型コロナウイルス感染の広がりが心配されています。
オミクロンにかぎらず、新型コロナウイルス感染による労災について、この機会に知っておきましょう。
業務によって新型コロナウイルス感染したら労災になります。
新型コロナウイルス感染の後遺症も労災認定の対象となります。
Contents
【新型コロナウイルス感染による労災】医師・看護師や介護従事者は原則労災
医師・看護師や介護の業務に従事される方については、原則として労災保険給付の対象となります。
医師・看護師や介護の業務に従事される方は、業務外で感染したことが明らかな場合を除き、原則労災と認められます。
新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて 厚生労働省
新型コロナウイルス感染症に関する「医療従事者等」の労災請求件数は令和3年11月30日現在で14,822件。決定件数13,287のうち支給件数は13,287です。
医療従事者等の方は、労災申請して決定が出た方のうち89.6%が労災と認められています。
新型コロナウイルス感染症に関する労災請求件数等
令和3年11月30日 現在 厚生労働省
「医療従事者等」とは、患者の診療若しくは看護の業務、介護の業務又は研究その他の目的で病原体を取り扱う業務に従事する方をいいます。
【新型コロナウイルス感染による労災】医師・看護師や介護従事者以外の場合
医療従事者等以外の方での、新型コロナウイルス感染症に関して労災請求件数は令和3年11月30日現在で7,647。決定件数4,907のうち支給件数は4,812です。
医療従事者等以外の方は、労災申請して決定が出た方の98.1%が労災と認められています。
新型コロナウイルス感染症に関する労災請求件数等
令和3年11月30日 現在 厚生労働省
感染経路が業務によることが明らかな場合は労災
感染源が業務に内在していたことが明らかに認められる場合には、労災保険給付の対象となります。
感染経路が不明の場合でも、感染リスクが高い業務に従事して感染した蓋然性が強い場合は労災
感染経路が不明の場合であっても、感染リスクが高い業務に従事していた方が新型コロナウイルスに感染した蓋然性が強い(確実性の度合いが強い)場合蓋然性は労災と認められます。
調査により感染経路が特定されない場合であっても、感染リスクが相対的に高いと考えられる次のような労働環境下での業務に従事していた労働者が 感染したときには、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したもの と認められるか否かを、個々の事案に即して適切に判断すること。
この際、新型コロナウイルスの潜伏期間内の業務従事状況、一般生活状況 等を調査した上で、必要に応じて医学専門家の意見も踏まえて判断すること。
(ア)複数(請求人を含む)の感染者が確認された労働環境下での業務
(イ)顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務
新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて 厚生労働省
【新型コロナウイルス感染による労災】「後遺症」も労災認定
新型コロナウイルス感染症に感染した方が療養終了後に職場復帰にあたって、厚生労働省が「いわゆる後遺症」について3つの例を紹介しています。
① 2020年9月~2021年5月にCOVID-19で入院した中等症以上の例において、退院3ヶ月後に肺CT画像上で何らかの画像所見があった者は353例中190例、肺機能検査の結果では肺拡散能(DLCO)が障害されやすい、自覚症状はとして筋力低下と息苦しさは明確に重症度に依存
② 2020年1月~2021年2月にCOVID-19PCR検査もしくは抗原検査陽性で入院した症例のうち、診断後6ヶ月経過した246例において症状が残っている人の割合は、疲労感・倦怠感21%、息苦しさ13%、睡眠障害・思考力や集中力低下11%、脱毛10%、筋力低下・頭痛・嗅覚味覚障害9%
③ 2021年2月~2021年5月に病院入院中、ホテル療養中の無症状・軽症・中等症のCOVID-19患者(20歳~59歳)の参加希望者において、1か月後までの改善率は嗅覚障害が60%、味覚障害が84%であり多くの味覚障害例は嗅覚障害に伴う風味障害の可能性が高い
新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)<感染者の職場復帰>
問2 新型コロナウイルス感染症に感染した労働者が職場復帰する際にどのような点に留意すればよいでしょうか。 厚生労働省
職場復帰後にも問題となってくるのが、新型コロナウイルス感染の「後遺症」です。
新型コロナウイルス感染で労災と認められた方が、復職後に後遺症でふたたび病院で診療を受けたり療養のために休職をすることがでてきます。
新型コロナウイルス感染による診療や療養のための休業が労災となることを知っている方でも、「後遺症」が労災と認められる対象であることを知らない方も多いです。
新型コロナウイルス感染による「後遺症」も労災として認められる対象となります。
新型コロナに感染した利用者の濃厚接触者となり検査した結果、新型コロナに感染していることがわかり労災と認められた兵庫県内の特別用語老人ホームで働く40代の男性の事例がマスコミで紹介されています。
2ヶ月近く療養して職場復帰後も強い倦怠感や息切れなどが続き再び休職し、労災申請したところ「業務で感染した新型コロナとの因果関係が認められる」と改めて労災と認められた。
これは、兵庫労働局での事例が毎日放送が運営しているYou Tube(MNBNEWSチャンネル)で紹介されています。
職場でコロナ感染した男性「後遺症でも労災認定」業務での感染と因果関係が認められる(2021年11月4日) You Tube(MNBNEWSチャンネル)
この事例は、NHKの新型コロナウイルス特設サイトでも紹介されています。
新型コロナ「後遺症」も労災認定“労働基準監督署に相談を“
とする厚生労働省補償課の呼びかけが紹介されています。
厚生労働省補償課は「新型コロナは感染した場合のほか、症状が治癒せずに長引くケースが数多くある。まずは近くの労働基準監督署に相談してほしい」としています。
新型コロナ「後遺症」も労災認定“労働基準監督署に相談を“
NHK 新型コロナウイルス特設サイト
新型コロナ「後遺症」での労災認定は、身近なところではまだあまり聞こえてきませんが、新型コロナの「後遺症」も労災の対象になります。
ぜひ知っておいていただきたいと思います。
【編集後記】
年末の大掃除。
今年の年末の大掃除は簡単に終わりました。
ふだんからマメに掃除していたことに加えて、6月にレイアウト大幅変更を含めた大掃除、11月と今月(12月)中旬、それぞれ家族で大掃除をする機会がありましたので、年末は割と簡単な片付けと掃除だけ。
そのときどきは大変でしたけど、その分はあとで楽になりました。ちょっと得した気分の年末です。
小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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