新型コロナウイルス感染症の影響で会社の経営が悪化して倒産してしまった。
倒産しても会社は労働者に未払いの賃金を支払う法律上の義務があります。
それでも会社が倒産して未払いの賃金を受けとれないときはどうしたら良いのでしょうか。
「未払賃金があるのに、倒産したから払えないなんて言われても困りますよ!」(驚く労働者の方)
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【コロナ倒産】2022年8月末で累計4,000件超過
新型コロナウイルス関連倒産。2020年2月にはじまって以来、増え続けています。
帝国データバンクによると、2022年9月16日時点で新型コロナウイルス関連倒産は累計4,089件。
2022年3月以降8月まで毎月180件以上も新型コロナウイルス関連の倒産が発生しています。
特別企画 : 「新型コロナウイルス関連倒産」動向調査9月16日16時現在判明分 株式会社帝国データバンク
倒産しても、会社は労働者に未払いの賃金を支払う法律上の義務があります。
それでも会社が倒産したことで、未払いの賃金を受けとれない。
こんなときには、どうしたら良いのでしょうか。
Q.会社が倒産して未払いの賃金を受けとれないときはどうしたら良いのか?
Q .新型コロナウイルス感染症の影響で会社の経営が悪化して倒産してしまった。倒産の2ヶ月前から給料が未払いで退職金も受けとれていない。どうしたら良いのだろうか?
A.「未払賃金立替払制度」を利用して、「未払賃金の8割の額」を倒産した会社に代わって労働者健康安全機構から支払いを受けることができます。
退職日における年齢 | 未払賃金総額の限度額 | 立替払の上限額 |
---|---|---|
45歳以上 | 370万円 | (370万円×0.8) 296万円 |
30歳以上45歳未満 | 220万円 | (220万円×0.8) 176万円 |
30歳未満 | 110万円 | (110万円×0.8) 88万円 |
立替払の対象となる賃金は、退職日の6か月前から請求日の前日までに支払期日が到来している未払賃金で、定期給与と退職金です。ボーナスは対象に含まれません。
また、総額が2万円未満のときは対象となりません。
未払賃金「立替払」制度というと、倒産した会社から賃金を受けとるまでの立替で、労働者が返済しなければならないように思うかもしれませんが、返済不要の支給金です。
返済するのはあなたに未払い賃金を支払うべきだった者です。
回収できなかった場合でも、あなたが返済を求められることはありません。安心して利用できます。
【未払賃金立替払制度】倒産によって未払い賃金があれば、退職後早めに労基署に相談する
「未払賃金立替払制度」は、労災保険料を財源として労働者健康安全機構が行なっている制度です。
未払賃金立替払を受けることができる倒産には、法律上の倒産と事実上の倒産の2種類があります。
「倒産」 | 未払賃金立替払制度を利用できる「倒産」 |
---|---|
法律上の倒産 | 破産手続開始の決定(破産法) 特別清算手続開始の命令(会社法) 再生手続の開始の決定(民事再生法) 更生手続開始の決定(会社更生法)法律上の倒産の場合は、破産管財人等による倒産の事実等の証明が必要。労働基準監督署で用紙を受けとります。 |
事実上の倒産 | 中小企業事業主の倒産のみ対象。 事業活動が停止し、 再開する見込みがなく、 賃金支払能力がない場合。事実上の倒産の認定は、労働基準監督署長行なう。 労働基準監督署に認定の申請を労働者が行ないます。 |
法律上の倒産と事実上の倒産、どちらの場合であっても、詳しい内容や手続きについて労働基準監督署で相談することができます。
退職後6か月以内に、裁判所への破産手続開始の申立て又は労働基準監督署長への認定申請がなされなかった場合は、立替払の対象とはなりません。
会社の倒産にともなって退職して未払いの賃金がある労働者の方は、早めに労働基準監督署に相談にいきましょう。
未払賃金の立替払を受けとることができる労働者は3つの要件を満たしている方です。
未払賃金立替払制度を利用できる労働者(3つの要件を満たしている労働者) | |
---|---|
1 | 労働者災害補償保険(労災保険)の適用事業で1年以上事業活動を行っていた事業主(法人、個人は問いません。)に雇用され、企業倒産に伴い賃金が支払われないまま退職した労働者(労働基準法第9条の労働者に限る。)であった方 |
2 | 裁判所への破産手続開始等の申立日(法律上の倒産の場合)又は労働基準監督署長に対する事実上の倒産の認定申請日(事実上の倒産の場合)の6か月前の日から2年の間に当該企業を退職した方
退職後6か月以内に、裁判所への破産手続開始の申立て又は労働基準監督署長への認定申請がなされなかった場合は、立替払の対象とはなりません。 |
3 | 未払賃金額等について、破産管財人等の証明(法律上の倒産の場合)又は労働基準監督署長の確認(事実上の倒産の場合)を受けた方 |
【編集後記】
先週、家のなかで足の中指をぶつけてしまい、かなり痛かったです。
ぶつけた指が紫色になり、骨折か?と心配して整形外科へ。
レントゲンを撮って折れていないことがわかり一安心しました。
整形外科で教えてもらい、はじめて「アイシング」を行ないました。
ビニール袋に氷を入れて10分間腫れた部分に置くだけ。
連続する場合は1時間あけて行なうこと。
これだけのことで、紫色に変わってしまった指がほとんど元の色に。
専門家にとっては当たり前のことなのでしょうが、専門外の人間にとっては当たり前のひとことがとても助かりました。
社会保険労務士として相談を受けるときにも、「当たり前」と思えることでも相談者の方に役立つひとことを大事にしていこうと、あらためて感じた出来事でした。

小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)

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