就職したときの労働契約書と就業規則。同じ事柄について定められている内容が異なっていた場合は、個別の労働契約と就業規則のどちらが適用されるのでしょうか?
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Q.労働契約と就業規則の内容が異なる場合は、どちらの内容が優先されるのか?
Q.労働者1人ひとりの個別労働契約と就業規則の内容が異なる場合は、どちらの内容が優先されるのか?
A.個別の労働契約と就業規則の内容が異なる場合は、労働者にとって有利な内容が優先されて労働条件として適用されます。
労働契約は、労働者個人と会社の両者で合意によって成立します。
労働契約は、労働者は会社(使用者)に使用されて労働すること、会社はその対価として労働者に賃金を払うことを内容とする契約です。
労働契約法6条
労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。
入社時に1人ひとりの労働者と会社との間で個別に締結した労働契約。
この労働契約と会社の就業規則で内容が異なる場合には、労働契約と就業規則のどちらの内容が優先されて労働条件として適用されるのでしょうか。
労働契約と就業規則との関係については、労働契約法12条にさだめるところによると労働基準法93条でさだめられています。
結論としては、就業規則と個別の労働契約、労働者にとって有利な内容が労働条件として適用されます。
労働基準法93条
労働契約と就業規則との関係については、労働契約法(平成19年法律第128号)第12条の定めるところによる。
個別の労働契約の内容が就業規則よりも低かった場合
個別の労働者との労働契約でさだめられた内容が、就業規則の内容よりも低い場合には、その低い部分については労働契約が無効になり、無効となった部分については就業規則の内容が労働契約となり労働条件として適用されます。
労働契約法12条
就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。
この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。
個別の労働契約の内容が就業規則よりも高かった場合
個別の労働者との労働契約でさだめられた内容が、就業規則でさだめられている内容(基準)よりも高い場合は、就業規則の内容は適用されず、就業規則よりも高い基準の内容である個別の労働契約が労働条件として適用され労働契約の内容となります。
労働契約法7条
労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。
ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第12条に該当する場合を除き、この限りでない。
労働契約法12条
就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。
この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。
【編集後記】
「働き出してみたら、働きはじめる前に約束していた労働契約に書かれた金額よりも給料が低い。就業規則で決まっているから我慢してくれと言われてしまい残念でくやしい・・・」。
労働契約と就業規則。労働条件のさだめが労働契約と就業規則で内容が異なる場合は、労働者にとって有利な方の内容が労働契約の内容となり労働条件として適用される。労働契約法で定められていることを知っておいていただければと思います。
小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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