2021/10/01適用【DV被害者】遺族年金等の生計同一認定要件の判断(厚生労働省通知)

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DV被害者が遺族となる遺族年金の「生計同一要件」が見直された通知が出され、2021年10月1日から適用されます。

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【遺族年金】死亡した者によって生計を維持されていたことが必要

国民年金(遺族基礎年金)と厚生年金(遺族厚生年金)で遺族年金を受けとることができる遺族の範囲がことなります。

どちらの年金でも死亡の当時に死亡した方に「生計を維持」されていた方であることが必要です。

国民年金法37条の2(遺族の範囲)

(1項)遺族基礎年金を受けることができる配偶者又は子は、被保険者又は被保険者であつた者の配偶者又は子(以下単に「配偶者」又は「子」という。)であつて、被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時その者によつて生計を維持し、かつ、次に掲げる要件に該当したものとする。

1号 配偶者については、被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時その者によつて生計を維持し、かつ、次号に掲げる要件に該当する子と生計を同じくすること。

2号 子については、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか又は20歳未満であつて障害等級に該当する障害の状態にあり、かつ、現に婚姻をしていないこと。

2項 被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時胎児であつた子が生まれたときは、前項の規定の適用については、将来に向かつて、その子は、被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時その者によつて生計を維持していたものとみなし、配偶者は、その者の死亡の当時その子と生計を同じくしていたものとみなす。

3項 第1項の規定の適用上、被保険者又は被保険者であつた者によつて生計を維持していたことの認定に関し必要な事項は、政令で定める。

厚生年金保険法59条(遺族)

(1項)遺族厚生年金を受けることができる遺族は、被保険者又は被保険者であつた者の配偶者、子、父母、孫又は祖父母(以下単に「配偶者」、「子」、「父母」、「孫」又は「祖父母」という。)であつて、被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時(失踪そうの宣告を受けた被保険者であつた者にあつては、行方不明となつた当時。以下この条において同じ。)その者によつて生計を維持したものとする。ただし、妻以外の者にあつては、次に掲げる要件に該当した場合に限るものとする。

1号 夫、父母又は祖父母については、55歳以上であること。

2号 子又は孫については、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか、又は20歳未満で障害等級の1級若しくは2級に該当する障害の状態にあり、かつ、現に婚姻をしていないこと。

2項 前項の規定にかかわらず、父母は、配偶者又は子が、孫は、配偶者、子又は父母が、祖父母は、配偶者、子、父母又は孫が遺族厚生年金の受給権を取得したときは、それぞれ遺族厚生年金を受けることができる遺族としない。

3項 被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時胎児であつた子が出生したときは、第1項の規定の適用については、将来に向つて、その子は、被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時その者によつて生計を維持していた子とみなす。

4項 第1項の規定の適用上、被保険者又は被保険者であつた者によつて生計を維持していたことの認定に関し必要な事項は、政令で定める。

生計維持 = 生計同一要件 + 収入要件

遺族年金は、死亡した当時に死亡した方によって「生計を維持」されていた一定の遺族の方が受けとることができます。

「生計を維持」されていた(生計維持要件)とは、生計同一要件を満たした上で収入要件を満たしていることをいいます。

生計同一要件

生計維持認定対象者及び生計同一認定対象者が配偶者又は子である場合

ア 住民票上同一世帯に属しているとき
イ 住民票上世帯を異にしているが、住所が住民票上同一であるとき
ウ 住所が住民票上異なっているが、次のいずれかに該当するとき
(ア) 現に起居を共にし、かつ、消費生活上の家計を一つにしていると認められるとき
(イ) 単身赴任、就学又は病気療養等の止むを得ない事情により住所が住民票上異なっているが、次のような事実が認められ、その事情が消滅したときは、起居を共にし、消費生活上の家計を一つにすると認められるとき
(ア) 生活費、療養費等の経済的な援助が行われていること
(イ) 定期的に音信、訪問が行われていること

収入要件

年額850万円以上の収入を将来にわたって有すると認められない方

ア 前年の収入(前年の収入が確定しない場合にあっては、前々年の収入)が年額850万円未満であること。
イ 前年の所得(前年の所得が確定しない場合にあっては、前々年の所得)が年額655.5万円未満であること。
ウ 一時的な所得があるときは、これを除いた後、前記ア又はイに該当すること。
エ 前記のア、イ又はウに該当しないが、定年退職等の事情により近い将来(おおむね5年以内)収入が年額850万円未満又は所得が年額655.5万円未満となると認められること。

「DV被害者に係る遺族年金等の生計同一認定要件の判断について」2021/09/01厚生労働省通知

遺族年金は死亡した方によって「生計を維持」されていた一定の遺族の方が受けとることができます。

「生計を維持」されていたとは、生計同一要件を満たした上で収入要件を満たしていることです。

生計維持要件=生計同一要件+収入要件

「生計同一」要件については、配偶者からの暴力(「DV」)の被害者の場合、DVを避けるために一時的な別居が必要になる場合があることから、裁判例と認定事例をふまえて2021/09/01に厚生労働省から通知が出されました。

(1)被保険者等の死亡時において以下の1から5までのいずれかに該当するために 被保険者等と住民票上の住所を異にしている者については、DV被害者であるという事情を勘案して、被保険者等の死亡時という一時点の事情のみならず、別居期間の長短、別居の原因やその解消の可能性、経済的な援助の有無や定期的な音信・訪 問の有無等を総合的に考慮して、生計同一要件を判断する。

DV被害者についての「生計同一」要件を総合判断する場合
1 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成13年法律第 31 号。以下「DV防止法」という。)に基づき裁判所が行う保護命令に係るDV 被害者であること。
2 婦人相談所、民間シェルター、母子生活支援施設等において一時保護されてい るDV被害者であること。
3 DVからの保護を受けるために、婦人保護施設、母子生活支援施設等に入所し ているDV被害者であること。
4 DVを契機として、秘密保持のために基礎年金番号が変更されているDV被害 者であること。
5 公的機関その他これに準ずる支援機関が発行する証明書等を通じて、1から4 までの者に準ずると認められるDV被害者であること。

(2)1、2、3及び5に該当するかどうかについては、裁判所が発行する保護命令に係る証明書、配偶者からの暴力の被害者の保護に関する証明書(「配偶者から の暴力を受けた者に係る国民年金、厚生年金保険及び船員保険における秘密の保持の配慮について」(平成 19 年2月 21 日庁保険発第0221001 号)の別紙1をいう。)、 住民基本台帳事務における支援措置申出書(相談機関等の意見等によってDV被害 者であることが証明されているものに限る。)の写し又は公的機関その他これに準 ずる支援機関が発行する証明書を通じて、確認を行う。なお、1の4に該当する場合は、証明書を通じた確認は不要とする。

(3)DV被害に関わり得る場合であっても、一時的な別居状態を超えて、消費生活上 の家計を異にする状態(経済的な援助も、音信も訪問もない状態)が長期間(おおむね5年を超える期間)継続し固定化しているような場合については、原則として、平成23 年通知3(1)1ウ(イ)に該当していないものとして取り扱う。ただし、長期間(おおむね5年を超える期間)となった別居期間において、経済的な援助又は 音信や訪問が行われている状態に準ずる状態であると認められる場合には、この限りではない。

生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて〔国民年金法〕(平成23年3月23日)(年発0323第1号)厚生労働省

(4)(1)から(3)までの規定により生計同一認定要件の判断を行うことが実態と著しく懸け離れたものとなり、かつ、社会通念上妥当性を欠くこととなる場合にあっては、 1から3までの規定にかかわらず、当該個別事案における個別の事情を総合的に考慮して、被保険者等の死亡の当時その者と生計を同じくしていたかどうかを個別に判断する。

【編集後記】

「住民基本台帳事務における支援措置申出書(相談機関等の意見等によってDV被害者であることが証明されているものに限る。)の写し又は公的機関その他これに準ずる支援機関が発行する証明書を通じて、確認を行う」とありますので、すべての方ではありませんが対象となる方は遺族年金を受けとることができる可能性が広がりました。

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小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)

小倉健二(おぐらけんじ) 労働者のための社労士・労働者側の社労士 労働相談、労働局・労働委員会でのあっせん代理 労災保険給付・障害年金の相談、請求代理 相談・依頼ともに労働者の方に限らせていただいています。  <直接お会いしての相談は現在受付中止> ・mail・zoomオンライン対面での相談をお受けしています。 1965年生まれ57歳。連れ合い(妻)と子ども2人。  労働者の立場で労働問題に関わって30年。  2005年(平成17年)12月から社会保険労務士(社労士)として活動開始。 2007年(平成19年)4月1日特定社会保険労務士付記。 2011年(平成24年)1月30日行政書士試験合格