【社会保険料】月末退職は末日と1日前のどちらが得か?

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「退職日は月の末日の1日前の方が末日退職よりも得なのか?」と、労働者の方から質問をうけることがあります。
退職することを会社に伝えたときに、「退職日は、月末にするよりも1日前の方が得だよ」と言われたというケースが多いようです。

Q. 退職日は月の末日だと損をするのか?

Q.月末(月の末日)で退職すると社会保険料の支払いで損をする?

月末に退職したいと退職届を会社に出したところ、「月末(月の末日)で退職すると社会保険料2ヶ月分取られるから、末日より1日前を退職日にするとお得だよ」と言われました。
退職日を1日ずらすだけで得したり損したりするものなのか?

A.月の末日付での退職は損ではありません。
労働者の方にとっては、社会保険料の支払いで月の末日での退職は得です。

月の末日で退職するのと末日の1日前での退職。
たった1日だけの違いですが、月の末日の1日前で退職するよりも末日退職をする方が労働者にとってはお得だと言えます。
社会保険料の支払いで、労働者の方は1月分の得をするからです。
月の末日で退職すると、社会保険料(厚生年金・健康保険)を2ケ月分払うことになるのは事実ですが、社会保険料の半額以上は会社が払うのですから労働者にとっては得するといえます。

社会保険(厚生年金・健康保険)の保険料は半額以上を会社が払う

社会保険料(厚生年金・健康保険)は半額以上を会社が払います。
公的な年金・医療保険の保険料の支払う上で、労働者は自営業者などと比べて有利です。

厚生年金保険法82条(保険料の負担及び納付義務) 健康保険法は161条

(1項)被保険者及び被保険者を使用する事業主は、それぞれ保険料の半額を負担する。

2項 事業主は、その使用する被保険者及び自己の負担する保険料を納付する義務を負う。

退職後は、会社があなたの社会保険料を払うことはなくなります。
当たり前のことですが… 。

退職後に、健康保険の任意継続被保険者となることもできますが、会社が負担していた分も合わせて保険料の全額をあなたが払うことになります。
退職前の2倍(ではない場合もありますが)の金額の保険料を、あなたが支払うことになります。

家族の健康保険の被扶養者となれれば保険料を払う必要がありませんが、被扶養者になれなければ国民健康保険に加入するか健康保険に任意継続加入することになります。

退職後に国民健康保険に加入することになると、保険料の全額を本人が払うことになります。

社会保険料の半額以上を会社が負担して支払う期間が1月分でも多い方が、労働者にとっては有利になるのです。

年金は、国民年金に合わせて厚生年金が支給されますから、厚生年金加入期間(被保険者期間)が1月でも多い方が、うけとる年金額が増えます。

社会保険料月末退職

月の末日に退職した場合は、2ヶ月分の社会保険(厚生年金・健康保険)料を支払うことになりますが、この2ヶ月の保険料の半額以上を会社が払うことになります。

月の末日の1日前に退職した場合は、社会保険(厚生年金・健康保険)料の支払いが1月分少なくてすみます。

しかし、へった1月分は国民年金・国民健康保険の保険料支払いが増えます。

どちらにしても、公的な年金・健康保険の保険料を払うことは同じですから、会社が保険料の半額以上を支払う期間が1月でも多い方が、労働者には得なのです。

国民年金・国民健康保険の保険料は、退職後に加入するので会社の負担(半額以上)がありませんから、全額あなたが払うことになります。

退職後に健康保険に任意継続加入したり国民健康保険に加入したときに、支払わなければならない保険料の高さに驚くかもしれません。

もしもあなたの退職(離職)が、倒産や解雇(労働者の重大な責任による解雇を除く)、雇止めや正当な理由のある自己都合退職でしたら、国民健康保険料の軽減措置をうけることができます。

知らないと損してしまいますので、知っておいていただければと思います。

参考記事

【国民健康保険】倒産・解雇・雇止めで失業したら保険料の軽減措置を届出る

月末退職が労働者にとってお得な理由

社会保険(厚生年金・健康保険)の保険料は、給料から毎月差し引かれています。

この社会保険料は、給料から差し引かれている金額と同額以上を会社も払っています。

社会保険(厚生年金・健康保険)の保険料は被保険者でなくなった日の前月分まで払う。
社会保険の被保険者でなくなるのは、退職日の翌日。
月の末日に退職すると、被保険者でなくなる日(被保険者資格喪失日)は翌月1日。
退職した月の分までの社会保険料をあなただけでなく、会社が半額以上を支払います。
月の末日の1日前に退職すると、退職した月の分の公的な年金・医療保険の保険料は全額をあなたが支払うことになります。

月の末日に退職した場合は、1ヶ月分の公的な年金・医療保険の保険料の支払いで労働者が得をします。

月の末日の1日前に退職した場合は、1ヶ月分の公的な年金・医療保険の保険料の支払いで会社が得をして、労働者が損をします。

月の末日に退職すると社会保険料の支払いで「損をする」のは会社です。(労働者のための支出ですから「損」ではありませんが)

もしも月末で退職するなら、退職日は末日の「1日前」ではなく「末日」にするのが、あなたにとってはお得です。

月の末日退職が労働者にとってお得になるのは、厚生年金保険法・健康保険法に被保険者の資格喪失日(被保険者でなくなる日)と保険料納付の期間についてさだめられているからです。

月の末日に退職すると、社会保険(厚生年金保険・健康保険)の被保険者資格をうしなうのは翌月1日です。

社会保険の保険料は、資格をうしなった月の前月分まで支払うことになっています。

結果として、退職した月の分まで社会保険料の半額以上を会社が支払うことになるのです。

厚生年金保険法14条(資格喪失の時期) 健康保険法は36条

第9条又は第10条第1項の規定による被保険者は、次の各号のいずれかに該当するに至つた日の翌日(その事実があつた日に更に前条に該当するに至つたとき、又は第5号に該当するに至つたときは、その日)に、被保険者の資格を喪失する。

2号 その事業所又は船舶に使用されなくなつたとき

厚生年金保険法19条(被保険者期間) 健康保険法は156条

被保険者期間を計算する場合には、月によるものとし、被保険者の資格を取得した月からその資格を喪失した月の前月までをこれに算入する。

厚生年金保険法81条(保険料)

(1項)政府等は、厚生年金保険事業に要する費用(基礎年金拠出金を含む。)に充てるため、保険料を徴収する。

2項 保険料は被保険者期間の計算の基礎となる各月につき、徴収するものとする。

【編集後記】

Apple Watchを使っている方は、お風呂に入るときはどうしてますか。
つけたまま入浴していますか?
防水機能があるので濡れることは問題ないとおもうのですが、シャンプーや石けんは良くないようですよね。
ネットで検索すると気にせずに入浴して問題なく使っているという話も。
Apple Watchは、ワンタップで話すだけでEvernote(FastEver3)にテキストでメモができたり、口に近づけて話すだけでネット検索もできますから、お風呂でこそ本領発揮できるのではないかなと。
アイデアは「三上」(馬上、枕上、厠上)で浮かぶといいますが、どれも手を使ってメモをできない状況のこと。入浴中こそ手を使わずにアイデアをメモできるApple Watchの出番だと思うのですが、どうでしょうか。
とりあえず、私は入浴中はApple Watchを手からはずして充電する時間にしています。

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小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)

小倉健二(おぐらけんじ) 労働者のための社労士・労働者側の社労士 労働相談、労働局・労働委員会でのあっせん代理 労災保険給付・障害年金の相談、請求代理 相談・依頼ともに労働者の方に限らせていただいています。  <直接お会いしての相談は現在受付中止> ・mail・zoomオンライン対面での相談をお受けしています。 1965年生まれ57歳。連れ合い(妻)と子ども2人。  労働者の立場で労働問題に関わって30年。  2005年(平成17年)12月から社会保険労務士(社労士)として活動開始。 2007年(平成19年)4月1日特定社会保険労務士付記。 2011年(平成24年)1月30日行政書士試験合格