2021年に外国人技能実習実施者に対して行われた、全国の労働基準監督機関による監督指導の結果、72.6%で労働基準関係法令違反がありました。
Contents
2021年外国人技能実習実施者の労働基準関係法令違反72.6%
2021年に技能実習生の実習実施者に対して行われた労働基準監督機関による監督指導の結果が厚生労働省から2022年07月27日に発表されています。
2021年の監督指導の結果、外国人技能実習実施者による労働基準関係法令違反は72.6%でした。
過去5年間をみても、外国人技能実習実施者による労働基準関係法令違反はいずれの年も70%を超えていて改善されていません。
労働基準関係法令違反の1/4(24.4%)は安全基準違反です。外国人技能実習生が危険な労働環境で働いていることがわかります。
「外国人技能実習生の実習実施者に対する令和3年の監督指導、送検等の状況を公表します」(厚生労働省)より引用
出入国管理機関・外国人技能実習機構から労働基準監督機関への通報1,882件
出入国管理機関・外国人技能実習機構から労働基準監督機関への通報が2021年は1,882件ありました。
技能実習生からの労働基準関係法令違反の労働基準監督署への申告126件
2021年に外国人技能実習生からの労働基準関係法令違反の申告数は126件でした。
労働基準法をはじめ労働基準関係法令違反の申告数自体がもっと多くならなければいけないのですが、外国人の方が労働基準監督官へ申告することは法律の理解と言葉の壁がありますから申告へのハードルはさらに高くなります。
外国人労働者の方が労働基準関係法令違反の申告をするためのサポートが必要です。
外国人労働者が労働基準法違反の申告をするのをできる範囲でサポートしよう
出入国管理機関・外国人技能実習機構から労働基準監督機関への通報が1,882件。
技能実習生からの労働基準関係法令違反の労働基準監督署への申告126件。
外国人技能実習機構は、技能実習生の人権を守り、実習先や監理団体の違法行為を取り締まるべき機関です。
外国人技能実習制度の適切な実施のため,外国人技能実習生に対する人権侵害、不適切な制度運用を行っている監理団体及び実習実施者に関する情報を広く一般の方から受け付けているので、外国人技能実習機構に公益通報することができます。
しかし、この外国人技能実習機構が技能実習生への人権侵害を行なったと問題視される問題も起きています。
退職強要をうけた外国人技能実習生が問題解決のために加入した労働組合からの脱退を外国人技能実習機構がすすめたとされる問題です。
外国人技能実習機構に労働基準関係法令違反の情報が伝われば、適切に対応が行われて問題が解決されると安心できるものとは限らないということになります。
外国人技能実習制度は日本の技能等を開発途上地域などへ移転させること国際協力を推進する目的の制度としていますが、実態は人手不足を補充するための労働力として運用されています。
しかし、アメリカ国務省人身取引監視対策部から人身取引報告書(日本に関する部分)で技能実習制度のもとでの強制労働が指摘されています。
2022年7月19日公表の人身取引報告書でも外国人技能実習制度でも指摘されていますが、まだ日本語訳は見当たりませんでした。
2021年人身取引報告書(日本に関する部分)は日本語訳を読むことができますので、一読をおすすめします。
2021年人身取引報告書(日本に関する部分) 在日米国大使館と領事館
制度の趣旨と運用実態の乖離を政府も認め、制度改正にむけた議論をすすめるようですが、仮に制度が改善されるとしても、少なくともそれまでの間は外国人技能実習生が労働基準法をはじめとして労働安全衛生法などの労働基準関係法令違反について労働基準監督署へ申告するサポートが必要です。
外国人労働者を支援している労働組合を紹介する、労働基準関係法令違反の申告をする外国人労働者に同行して労働基準監督署まで案内する。
同行して案内までは・・・という方は、外国人労働者向けの労働法のパンフレットで説明するのはいかがでしょうか。
英語と日本語の見開きになっていますので、問題に当てはまる日本語のページを探せば、隣のページに英語で書かれていますので、英語が話せなくても指でしめすだけでも説明できます。
THE FOREIGN WORKERS’ HANDBOOK 2021/ 日本で働く外国人労働者のハンドブック(英語版) 東京都
もしも、私たち、私たちの家族が将来日本で働いていては生活が苦しいと外国へ働きに行ったときに人身売買・強制労働させられてかまわないとは思わないはずです。
現地でだれかに助けてもらいたいと思うはずです。
自分自身や家族の生活のために日本に働きにきている外国人の方がいて、労働基準関係法令違反のなかで働いている方が多くいます。
法令の保護がうけられるように、私たち1人ひとりができる範囲でサポートしたいものです。
【編集後記】
8月に入りました。8月は熱中症の最大危険月です。
労働者のみなさまは仕事で熱中症にならないように仕事より健康と命を最優先しましょう。具合が悪くなる前にこまめに休憩して涼みましょう。残業もせずに早く仕事を終えてゆっくりと休んで体調を整えることも大切です。
小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
最新記事 by 小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都) (全て見る)
- 【産休・育休】厚生年金・健康保険の保険料免除について知ろう - 2023年3月29日
- 2023年4月1日【出産育児一時金】8万円増額1児50万円支給 - 2023年3月16日
- 【60歳で老齢年金繰上げ受給を検討中】繰上受給したあとで障害年金請求できるか? - 2023年3月14日