労災【業務災害】仕事を休んでいる期間+30日解雇できない

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Q.仕事でケガをして病院に入院している。
「1ヶ月以上仕事を休むなら会社をやめてもらう」と社長に言われて困っている・・・。

A.心配ありません。
会社はあなたを解雇できません。
(会社から言われても退職届けを出してはいけません。退職届をだすと解雇ではなく辞職したのだとあとから会社に言われてしまいます。)

労災【業務上災害】解雇制限

業務上災害によって休業している期間とその後30日間は、使用者(会社)はこの労働者を解雇できません。

たとえば、懲戒解雇できるような問題を労働者が発生させた場合にはどうでしょうか?

こんな場合でも、業務上災害によって休業している期間とその後30日間は解雇できません。

それほど、業務上災害に遭った労働者は労働基準法で手厚く保護されているのです。

労働基準法19条1項前段(解雇制限)

(1項) 使用者は労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が第65条の規定によつて休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない。

労災【業務上災害】解雇制限の例外

業務上災害でケガをしたり病気になって療養のために休業を開始してから1年6ヶ月経ってもケガや病気が治っていない場合の話です。

休業開始後1年6ヶ月経過して、病気やケガ(傷病)の等級が1級〜3級に該当すると休業補償給付の代わりに傷病補償年金が支給されます。

労災保険法12条の8

3項 傷病補償年金は、業務上負傷し、又は疾病にかかつた労働者が、当該負傷又は疾病に係る療養の開始後1年6箇月を経過した日において次の各号のいずれにも該当するとき、又は同日後次の各号のいずれにも該当することとなつたときに、その状態が継続している間、当該労働者に対して支給する。

1号 当該負傷又は疾病が治つていないこと。

2号 当該負傷又は疾病による障害の程度が厚生労働省令で定める傷病等級に該当すること。

労災保険法別表第1

傷病補償年金

1 傷病等級第1級に該当する障害の状態にある者 給付基礎日額の313日分

2 傷病等級第2級に該当する障害の状態にある者 給付基礎日額の277日分

3 傷病等級第3級に該当する障害の状態にある者 給付基礎日額の245日分

(当該負傷又は疾病による障害の程度が厚生労働省令で定める傷病等級は労災保険法施行規則別表第1に定められています。)

そして、療養による休業開始から3年が経った時に、労働者が「傷病補償年金」を受け取っているか受けとることになった場合には、会社側は打切補償を行なったこととなり労働基準法19条による解雇禁止の制限が解除されます。

しかし、労働基準法19条による解雇禁止の制限が解除されるからといって、実際に解雇を行なったときに、その解雇が有効か無効なのかというのは別の問題です。

労働基準法19条による解雇の制限が解除されることと、その後に行なった場合の解雇の有効性は別の問題なのです。

労働基準法19条(解雇制限)

(1項) 使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が第65条の規定によつて休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない。

ただし、使用者が、第81条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。

2項 前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。

労働基準法81条(打切補償)

第75条の規定によつて補償を受ける労働者が、療養開始後3年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合においては、使用者は、平均賃金の1200日分の打切補償を行い、その後はこの法律の規定による補償を行わなくてもよい。

打切補償をしたら、その後の解雇が有効になるわけではない

業務上災害による療養のための休業開始から3年が経った時に、労働者が「傷病補償年金」を受け取っているか、受けとることになった場合には、会社側は「打切補償」を行なったものとして、労働基準法19条による解雇制限は解除されます。

これは労働基準法19条による解雇制限は解除されるだけです。

労働基準法19条による解雇禁止期間中の解雇は無効です。

しかし、労働基準法19条による解雇禁止が解除されたら、解除後であれば解雇が認められるというわけではありません。

解雇は、客観的な合理性と社会的な相当性の2つとも満たさない限り無効です。

労働契約法16条(解雇)

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

参考記事

一言で言うと「解雇はできない」

【解雇理由が納得できない】ときはどうするか

【労働災害】通勤災害には解雇制限がありません

労働災害には2種類の災害があります。通勤災害と業務上災害の2種類です。

労働基準法による解雇制限があるのは、業務上災害の場合だけです。

労働基準法19条1項前段(解雇制限)

(1項) 使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が第65条の規定によつて休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない。

通勤災害には労働基準法の解雇制限がありません。知っておいてください。

繰り返しになりますが、労働基準法の解雇制限がないことと解雇が認められるものかどうかは別の問題です。

解雇制限(禁止)期間中の解雇は無効です。

そして、

解雇制限がない期間の解雇であっても、客観的な合理性と社会的な相当性の両方を満たさない限り解雇は無効です。

参考記事 【解雇】有効性を判断する合理性と相当性。どういう意味?

【編集後記】

本を読んでいると、その中で別の本が紹介されていてAmazonで注文したり図書館で予約して借りたりします。

届いてみるとなぜこの本を読もうと思ったのか?思い出せないことがあります。

読み始めた『ケーブ・ベアの一族』(ジーン・アウル著)もそんな本です。

Amazon エイラ 地上の旅人(1) ケーブ・ベアの一族 上

大地震で家族を失ないネアンデルタール人に育てられることになったクロマニヨン人の女の子エイラが主人公のファンタジーです。

どんな展開になるのか楽しみなのですが、この本を読みたいと思ったきっかけがわからない。

アーシュラー・ル・グインのエッセー本で紹介されていたような気もするのですが・・・。

昨日の1日1新 たくあん高菜(おにぎり)Family Mart

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小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)

小倉健二(おぐらけんじ) 労働者のための社労士・労働者側の社労士 労働相談、労働局・労働委員会でのあっせん代理 労災保険給付・障害年金の相談、請求代理 相談・依頼ともに労働者の方に限らせていただいています。  <直接お会いしての相談は現在受付中止> ・mail・zoomオンライン対面での相談をお受けしています。 1965年生まれ57歳。連れ合い(妻)と子ども2人。  労働者の立場で労働問題に関わって30年。  2005年(平成17年)12月から社会保険労務士(社労士)として活動開始。 2007年(平成19年)4月1日特定社会保険労務士付記。 2011年(平成24年)1月30日行政書士試験合格