小学生の8.8%が発達障害の可能性という新聞記事。
10年前から2.3ポイント上昇しているとのことで、発達障害についての認知の高まりが反映されています。
発達障害による障害年金について考えてみましょう。
絵を描くのに集中している小学生(発達障害の有無とは関係ない小学生のイメージ写真です)
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発達障害の可能性「小中学生の8・8%」?
小学生の8.8%が発達障害の可能性という新聞記事がありました。
前回行われた10年前の調査結果に比べて2.3ポイント上昇しているとの讀賣新聞の記事です。
小中学生の8・8%「発達障害の可能性」、10年前から2・3ポイント増…理解進み顕在化
讀賣新聞オンライン 2022/12/13 11:46
公立学校を対象に文部科学省が行なっている10年に1回の調査。
文部科学省の発表を確認すると、知的発達に遅れはないものの学習面または行動面で著しい困難を示す小中学校での児童生徒の割合は推定値で8.8%という調査結果です。
通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果(令和4年)について
令和4年12月13日 文部科学省
この調査結果は、学級担任などによる回答による特別な教育的支援を必要とする児童生徒数の割合を示すもの。
通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒が約1割(8.8%)であることがわかります。高校生では2.2%です。
発達障害による日常生活・働く上での困難な状態は障害年金の対象
学級担任などが発達障害の可能性がある特別な教育的支援の必要があるという判断は、学校教育のなかでのものです。
卒業後の社会人としての日常生活や就労生活の問題ではありませんし、医師による診断でもありません。
また、この調査結果と障害年金の支給を受けられる方がどの程度いるかは関連がありません。
もしも、発達障害による症状で日常生活や仕事が制限されるという障害がある場合には、その障害の程度によっては障害年金の支給をうけることができます。障害年金は原則として20歳以降に支給されます。
障害により日常生活や働く上で困難な状態にある方が、条件を満たす場合に障害年金が支給されます。
障害年金は特定の「障害」を対象に支給されるものではありません。
参考記事
「発達障害では障害年金は支給されない」と職場の同僚など知人から言われたという方からお話しを聞くことがありますが、発達障害だから障害年金が受給できないということはありません。
発達障害による障害年金の請求の手続きを代理することは少なくありませんし、発達障害による症状で障害年金を受給している方はもちろんいます。
発達障害の症状があることだけで障害年金が支給されるものではありませんが、発達障害の症状により日常生活に支障をきたしていたり働く上での困難な状況があるのでしたら、障害年金の支給対象となる可能性があります。
小学生の8.8%が発達障害の可能性という新聞記事を紹介しましたが、勉強が得意で個性的だが優秀な学生という評価で過ごしてきた発達障害の方もいます。
卒業後に就職してから、あるいはもっと後になって中高年になってから発達障害の特性から日常生活や働く上での困難が問題となって、障害年金を請求する方もいます。
障害年金の支給3要件
障害年金が支給されるためには、3つの要件(条件)を満たしていることが必要です。
発達障害による障害年金請求の場合も、3要件を満たすと支給されます。
障害年金の受給3要件 | 内容 |
---|---|
初診日要件 | 初診日に公的年金に加入していること (国民年金には例外があります) |
保険料納付要件 | 初診日の前日に一定の保険料を納付していること |
障害状態要件 | 障害認定日に障害等級に該当する程度の状態であること |
発達障害による障害年金を請求する上での初診日は、発達障害の症状により初めて医師による診療を受けた日です。
(知的障害をともなう発達障害の場合は、出生日が初診日としての扱いになります。)
障害の原因となる傷病で初めて病院を受診した年齢で分かれる障害年金の種類がかわります。
20歳前に受診していた場合には、初診日を証明し障害年金の1級2級の障害等級に該当することで障害基礎年金(国民年金)の支給を受けることができます。
保険料納付要件は問われません。
20歳以降に初診日がある場合には初診日の前日における保険料納付要件が問われます。
(20歳前でも)初診日に会社員など厚生年金被保険者であった場合には、障害年金の1級2級に加えて3級の障害等級に該当することでも障害厚生年金の支給を受けることができます。
1級2級の障害等級に該当する方は厚生年金に加えて国民年金からの障害年金も受給できます。
発達障害による障害年金を受給するための障害認定基準
発達障害による日常生活への適応に援助が必要な場合や労働が著しく制限を受けるという場合、障害年金の支給の対象となる障害の状態と認められます。
発達障害による症状で障害等級に相当すると認められるものが、国民年金・厚生年金保険の「障害認定基準」に例示されています。
障害の程度 | 障害の状態 |
---|---|
1級 | 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、かつ、著しく不適応な行動がみられるため、日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの |
2級 | 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が乏しく、かつ、不 適応な行動がみられるため、日常生活への適応にあたって援助が必要な もの |
3級 | 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が不十分で、かつ、社会行動に問題がみられるため、労働が著しい制限を受けるもの |
発達障害による障害年金の認定について、障害認定基準には以下のように規定されています。
- 発達障害については、たとえ知能指数が高くても社会行動やコミュニケーション能力の障害により対人関係や意思疎通を円滑に行うことができないために日常生活に 著しい制限を受けることに着目して認定を行う。
- 日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。
- 就労支援施設や小規模作業所などに参加する者に限らず、雇用契約により一般就労をしている者であっても、援助や配慮のもとで労働に従事している。したがって、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したも のと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するととも に、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との 意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。
「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」日本年金機構
【編集後記】
Evernoteを日常的に使っています。何年か前のバージョンアップにともない動きが悪くなりすぎたため、旧版アプリ「Legacy」を使ってきていました。
ところがこのEvernote Legacyが、尋常ではなく動きが遅くなりテキストの入力ができないほど。
試しに(旧版ではない)新版のEvernoteアプリをインストールしたところサクサクと動いて快適に。いつのまに改善されていたのか。タブがなくなったのは残念ですが仕様が変わっているので仕方ないこととして、欠かせないアプリが快速で動くようになって良かったなと。
小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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