在学中に内定を受けて学校を卒業して4月から採用されて3ヶ月試用期間と言われて働き始めている。
試用期間で仕事ができるかどうか判断してダメだと思ったらクビだと言われた。内向型の性格で毎日とても心配です。
試用期間中はいつでもクビにできるから解雇予告手当(平均賃金30日分以上)も払わないと言われています。
Contents
試用期間で本採用拒否は解雇。解雇予告手当が必要
試用期間中・試用期間終了で本採用拒否は解雇。
試用期間のある労働契約の試用期間中は労働者の不適格性を理由とする解約権が使用者に留保されている解約権留保付労働契約といえます。
試用期間中の労働者の勤務状態などにより、能力・適格性が判定され、雇用を継続することが適当でないと判断されると、解雇または本採用拒否という方法で、解約権が行使されることになります。
試用期間のある労働契約で本採用を拒否し試用期間中または試用期間終了で労働契約を終了することは解雇です。
労働者を解雇するとき30日以上前の解雇予告または解雇予告手当の支払う法律上の義務が会社にある
労働者を解雇するときは、30日以上前の解雇予告または解雇予告手当の支払う法律上の義務が会社にあります。
解雇予告・解雇予告手当を支払わない場合は、6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金と刑罰が処せられます。
労働基準法
(解雇の予告)
20条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。2項 前項の予告の日数は、1日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。
3項 前条第2項の規定は、第1項但書の場合にこれを準用する。
(解雇制限)
19条2項 前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。21条 前条の規定は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。但し、第1号に該当する者が1箇月を超えて引き続き使用されるに至つた場合、第2号若しくは第3号に該当する者が所定の期間を超えて引き続き使用されるに至つた場合又は第4号に該当する者が14日を超えて引き続き使用されるに至つた場合においては、この限りでない。
1 日日雇い入れられる者
2 二箇月以内の期間を定めて使用される者
3 季節的業務に四箇月以内の期間を定めて使用される者
4 試の使用期間中の者
労働基準法119条
次の各号のいずれかに該当する者は、6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
一 第3条、第4条、第7条、第16条、第17条、第18条第1項、第19条、第20条、第22条第4項、第32条、第34条、第35条、第36条第6項、第37条、第39条(第7項を除く。)、第61条、第62条、第64条の3から第67条まで、第72条、第75条から第77条まで、第79条、第80条、第94条第2項、第96条又は第104条第2項の規定に違反した者
二 第33条第2項、第96条の2第2項又は第96条の3第1項の規定による命令に違反した者
三 第40条の規定に基づいて発する厚生労働省令に違反した者
四 第70条の規定に基づいて発する厚生労働省令(第62条又は第64条の3の規定に係る部分に限る。)に違反した者
試用期間で本採用拒否。解雇権濫用は無効
30日以上前に解雇予告するか30日分以上の解雇予告を支払わなければ、会社は労働者を解雇できないことを見ました。
しかし、解雇予告または解雇予告手当を支払えば会社は労働者を自由に解雇できるわけではありません。
客観的な合理性と社会的相当性とを備えていない場合の解雇は無効となります。
試用期間であっても労働契約は成立しています。簡単にクビ(解雇・本採用拒否)にできるわけではないのです。
試用期間のある労働契約の試用期間中は労働者の不適格性を理由とする解約権が使用者に留保されている解約権留保付労働契約であるといいました。
試用期間中の労働者の勤務状態などにより、能力・適格性が判定され、雇用を継続することが適当でないと判断されると、解雇または本採用拒否という方法で、解約権が行使されることになります。
会社が「採用決定後における調査の結果により、または使用中の勤務状態等により、当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合において、そのような事実に照らしその者を引き続き当該企業に雇用しておくのが適当でないと判断することが、解約権留保の趣旨・目的に徴して、客観的に相当であると認められる場合」(三菱樹脂事件1973年12月12日最高裁判決)にだけ本採用拒否が認められるのです。
参考・引用『労働相談実践マニュアルVer.7』日本労働弁護団
三菱樹脂事件1973年12月12日最高裁判決解約権留保付労働契約についての部分の裁判要旨
企業者が、大学卒業者を管理職要員として新規採用するにあたり、採否決定の当初においてはその者の管理職要員としての適格性の判定資料を十分に蒐集することができないところから、後日における調査や観察に基づく最終的決定を留保する趣旨で試用期間を設け、企業者において右期間中に当該労働者が管理職要員として不適格であると認めたときは解約できる旨の特約上の解約権を留保したときは、その行使は、右解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許されるものと解すべきである。
裁判所( COURTS IN JAPAN )裁判例結果詳細から引用
客観的な合理性・社会的相当性
労働契約法16条(解雇)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
試用期間中または期間終了で本採用拒否された。本採用拒否は解雇ですから、解雇権濫用なら解雇無効を主張できます。
試用期間中だからいつでも自由にクビにされても仕方がないわけではありません。
裁判、労働審判、労働局や労働員会によるあっせん、団体交渉(労働組合)などで本採用拒否の撤回や金銭での解決などを求めていくことができます。
試用期間で本採用拒否。相談・「あっせん」による事例
詳細 | |
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相談内容 | 試用期間中なので、解雇予告手当を支払わないと言われた。 |
経過・対応 | 経営者に事情を聞いたところ、従業員を採用したが、当初より仕事に対する積極性が見られず、実績も芳しくない。思い余って2ヶ月で解雇を通告したところ、解雇予告手当を要求されたという事情であった。労働基準法の規定では、試用期間でも採用後14日を経過すれば解雇予告手当の支払義務が生じる。このことをセンター職員が説明した結果、予告手当が支払われることになった。 |
東京都労働相談情報センターでの相談・対応事例
詳細 | |
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あっせん申請 | 雇用契約書上は試用期間が2か月と定められていましたが、勤務を開始後1週間経たないうちに、業務従事の上で、服装が常識的ではないとの理由で突然解雇されました。このことに納得できないXさんは、解雇により精神的・経済的損害を被ったとして、金銭の支払いを求めてあっせん申請を行いました。 |
あっせんの結果 | 双方共に金銭による解決を望んでいましたが、主張する金額に開きがあったため、あっせん員の協議の上、本件の解決金として○○円の支払いを双方に提示しました。Y会社はこの金額を承諾しましたが、Xさんは納得できないとして、○○円の支払いを主張したため、このことをY会社に伝えたところ承諾が得られ、事件は解決しました。 |
解決に要した期間 | 40日 |
事件のポイント | 試用期間中といえども、客観的で合理的な理由があり、また、社会一般的にも解雇が相当であると認められない限り、解雇は無効となります。 |
宮崎県労働委員会によるあっせんでの解決事例
詳細 | |
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紛争の内容 | 専門学校に専任講師として採用された労働者Xは、教職員としての言動等が学校の教育方針に照らして不適格である等として、試用期間満了後に本採用拒否を学校から言い渡されました。労働者Xは、本採用拒否に納得できないとして労働契約の継続を求め、あっせん申請をしました。 |
あっせんでは | 学校は、Xは同僚と折り合いが悪く、学校の教育方針を否定するような言動があり度々指導していたが改善せず、生徒の前で学校批判をしたり、生徒に対し本学に就学していることについて否定的な言動をしたため、生徒への影響を考え本採用を拒否したと主張しました。あっせん員は学校に対し、まずXに業務改善を促す等の手続きを踏む必要があったのではないか等と指摘し、解決金により紛争の早期解決を提案したところ、学校はこれを受け入れました。また、あっせん員はXに対し、早期解決のため職場復帰以外の解決方法が考えられないかと打診したところ、Xは金銭解決による退職を受け入れるとしました。あっせん員が金銭面の条件をすり合わせ、学校がXに解決金を支払うことで双方が合意し、解決しました。 |
ポイント | 入社後一定期間を「試用」として、その間に労働者を評価して本採用とするかどうかを決める場合があります。労働者の資質や態度に問題があるとして、本採用を拒否する場合も、通常の解雇と同じように、労働者に対し教育指導が尽くされていたのか、本採用拒否に至るまでの手続きが十分に尽くされていたのか等により、本採用拒否の有効性が判断されます。 |
長野県労働委員会によるあっせんでの解決事例
【編集後記】
試用期間中だから簡単にやめさせられると思っている会社があるます。
しかし、試用期間中は労働契約がすでに成立していますから本採用しないというのは解雇になります。
客観的な合理性・社会的相当性がない解雇は無効です。
そして、たとえ試用期間中にやめさせることに客観的な合理性・社会的相当性がある場合であっても解雇予告・解雇予告手当が必要です。
試用期間だからいつでもお前をクビにできるんだぞ!ではありません。
会社と直接交渉はしたくないという方。「内向型」労働者の場合はとくにそうでしょう。
労働局や労働委員会による「あっせん」で解決をめざすという方法もあります!
小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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