障害認定日のカルテが見つからず障害認定日での障害年金の請求ができず事後重症請求した場合でも、後からカルテが見つかったら過去にさかのぼって請求できる場合があります。
障害認定日のカルテがなければ事後重症請求
障害の原因となった病気やケガの初診日から原則1年6月経過した障害認定日に障害等級に該当する状態であると障害認定日の翌月から障害年金を受け取れます。
しかし、初診日から1年6月経過した障害認定日の時点では障害等級に該当しなかったものの、あとから障害の状態が悪化してしまうこともあります。
障害認定日には障害等級に該当する状態にはなかった場合でも、あとから症状が悪化して障害等級に該当した場合は65歳の誕生日の2日前までに請求すれば受け取れます。
これが障害年金の事後重症請求です。
国民年金法30条の2(1項)
疾病にかかり、又は負傷し、かつ、当該傷病に係る初診日において前条第1項各号のいずれかに該当した者であつて、障害認定日において同条第2項に規定する障害等級(以下単に「障害等級」という。)に該当する程度の障害の状態になかつたものが、同日後65歳に達する日の前日までの間において、その傷病により障害等級に該当する程度の障害の状態に該当するに至つたときは、その者は、その期間内に同条第一項の障害基礎年金の支給を請求することができる。
厚生年金保険法47条の2(1項)
疾病にかかり、又は負傷し、かつ、その傷病に係る初診日において被保険者であつた者であつて、障害認定日において前条第2項に規定する障害等級(以下単に「障害等級」という。)に該当する程度の障害の状態になかつたものが、同日後65歳に達する日の前日までの間において、その傷病により障害等級に該当する程度の障害の状態に該当するに至つたときは、その者は、その期間内に同条第1項の障害厚生年金の支給を請求することができる。
しかし、実際には、障害年金のことを知らずに障害認定日の時点で障害等級に該当する状態であったのにも関わらずカルテ保存期間を過ぎてしまってカルテが廃棄されてしまっていて、障害認定日での診断書を書いてもらうことができない。
しかたなく、障害認定日よりも最近の日付のカルテで診断書を書いてもらい事後重症請求となってしまうということが少なくありません。
医師法24条
(1項)医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。
2項 前項の診療録であつて、病院又は診療所に勤務する医師のした診療に関するものは、その病院又は診療所の管理者において、その他の診療に関するものは、その医師において、5年間これを保存しなければならない。
本来であれば、障害認定日の翌月から受け取れるはずだった障害年金が、
最近のカルテをもとに書いてもらった診断書をもとに請求すると、
請求した翌月からしか障害年金を受け取ることができなくなってしまいます。
事後重症請求後に障害認定日のカルテが見つかったら
障害認定日に通っていた病院のカルテの保存期間(5年)が過ぎて病院にはもうないと言われてあきらめて、事後重症請求で障害年金を請求して支給決定が出た。
ところが、病院には保管していないが外部でカルテを保管していて残っていることがあとからわかった。
このカルテをもとに障害認定日での診断書を書いてもらえた。こういうことがあります。
この場合には、事後重症請求して障害年金受給決定後であっても、障害認定日での障害年金請求をすることができます。
障害認定日にさかのぼって過去の分まで請求することができますので、受け取れる障害年金の額が増えることになります。
しかし、過去にさかのぼって支給される障害年金は5年分に限られます。
過去にさかのぼって支給される障害年金は5年間
障害認定日のカルテが廃棄されていると思って、仕方なく事後重症請求した場合であっても、あとから障害認定日のカルテが保存されていることがわかったら、
障害認定日のカルテをもとに診断書を医師に作成してもらい障害認定日請求をすることができます。
しかし、再請求した日から5年よりも前の分の年金は支給されません。
障害年金を請求する権利自体は持っていても、月々発生する年金を受け取る権利は5年で時効消滅してしまうからです。
年金を過去にさかのぼって受け取ることができる権利は最大で5年分までとなります。
国民年金法102条(時効)
年金給付を受ける権利は、その支給すべき事由が生じた日から5年を経過したとき当該権利に基づき支払期月ごとに支払うものとされる年金給付の支給を受ける権利は当該日の属する月の翌月以後に到来する当該年金給付の支給に係る第18条第3項本文に規定する支払期月の翌月の初日から5年を経過したときは、時効によつて、消滅する。
厚生年金保険法92条(時効)
保険料その他この法律の規定による徴収金を徴収し、又はその還付を受ける権利は、これらを行使することができる時から2年を経過したとき、保険給付を受ける権利は、その支給すべき事由が生じた日から5年を経過したとき、当該権利に基づき支払期月ごとに支払うものとされる保険給付の支給を受ける権利は、当該日の属する月の翌月以後に到来する当該保険給付の支給に係る第36条第3項本文に規定する支払期月の翌月の初日から5年を経過したときは、時効によつて、消滅する。
【編集後記】
・障害年金請求用の診断書はカルテをもとに医師が記入します。
・障害の原因となる病気やケガで初めて医師の診療を受けた初診日。
・初診日から原則1年6月経過した日が障害認定日です。
障害認定日に障害等級に該当する障害の状態にあると障害認定日の翌月から障害年金を受けることができます。
障害認定日に障害等級に該当する障害の状態にあってもカルテをもとに障害年金請求用の診断書を医師に書いてもらえないと障害認定日よりも遅い日のカルテで診断書を書いてもらい、障害年金の受取開始が遅くなり受け取る年金額が少なくなってしまいます。
初診日から原則1年6月経過した日(障害認定日)3ヶ月以内のカルテをもとに障害年金請求専用の診断書が必要になることを知っておいていただければと思います。
小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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