自紹行為によるケガは労災になるか

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「労災 自紹行為」で検索してBlogの記事を読みにきた方がいます。
今日の記事は労災と自紹行為についてです。

「自紹行為」とは

「自紹」という言葉はふだん使うことがありませんが、「自」ら「招」いたことをいいます。

他人を挑発して暴行をうけた場合に「自紹行為」といわれます。

自紹行為によりケガをした、他人を挑発した結果として暴行をうけた場合は、労災として認められるのでしょうか?

「自紹行為」による他人からの暴行によるケガは労災にならない

仕事中や通勤中に他人から暴行をうけてケガをした場合は、業務に起因するケガ・通勤によるケガであると推定することになっています。

ただし、以下の3つの場合は除かれます。

  • 私的怨恨に基づくもの
  • 自招行為によるもの
  • その他明らかに業務に起因しないもの

他人を挑発した結果として暴行をうけた「自紹行為」によるケガは、労災として認められません。

他人からの暴行によるケガについての労災の取扱い(基発0723第12号)

他人の故意に基づく暴行による負傷の取扱いについて

標記については、従来、個別の事案ごとに業務(通勤)と災害との間に相当因果関係が認められるか否かを判断し、その業務(通勤)起因性の有無を判断してきたところであるが、今般、近時の判例の動向や認定事例の蓄積等を踏まえ、以下のとおり取り扱うこととしたので、了知の上、遺漏なきを期されたい。

業務に従事している場合又は通勤途上である場合において被った負傷であって、他人の故意に基づく暴行によるものについては、当該故意が私的怨恨に基づくもの自招行為によるものその他明らかに業務に起因しないものを除き業務に起因する又は通勤によるものと推定することとする。

(平成21年7月23日)
(基発0723第12号)
(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)

「自招行為」と決めつけずに労災申請する

侮辱をした、ケンカを売った、挑発した。
「自招行為」によるケガは労災として認められません。

しかし、どこまでが正当な行為なのか、どこからが自招行為となるのか、はっきりしているわけでもありません。

はじめからあきらめるのではなく、労災申請(労災保険給付の請求)をしましょう。

請求書に記載するだけでなく、「自招行為」と判断されないように事実をもとに主張する自己意見書を添付しましょう。

建設部長が大工に殴打されて負傷した場合
(1948年9月28日 基災発第一六七号)
K炭鉱鉱業所の建設部長Bは、鉱員住宅建築作業の指揮監督の責任者で、建築現場の巡回中に、大工Aが作業に手抜きをしていることを発見したので、これを指摘し、Aにやり直しを要求した。

この工事の手抜きについては、すでに以前にも一度注意を促したことがあり、今回が二度目であったので、厳重に戒告した。

しかるに、Aはその非を改めようとしないで反抗的態度で抗弁したので口論となり、Aは不意に手近の建築用の角材を手にしてBに打ってかかった。

Bはこれに対し、何ら抵抗しないでその場を逃げたが、あまりひどく打たれたので遂に昏倒した。

業務上である。

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小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)

小倉健二(おぐらけんじ) 労働者のための社労士・労働者側の社労士 労働相談、労働局・労働委員会でのあっせん代理 労災保険給付・障害年金の相談、請求代理 相談・依頼ともに労働者の方に限らせていただいています。  <直接お会いしての相談は現在受付中止> ・mail・zoomオンライン対面での相談をお受けしています。 1965年生まれ57歳。連れ合い(妻)と子ども2人。  労働者の立場で労働問題に関わって30年。  2005年(平成17年)12月から社会保険労務士(社労士)として活動開始。 2007年(平成19年)4月1日特定社会保険労務士付記。 2011年(平成24年)1月30日行政書士試験合格