「解雇 重責解雇 雇用保険」で検索してblogを読みにきてくれた方がいます。
雇用保険の「重責解雇」についてみてみましょう。
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「重責解雇」ではない解雇なら待機期間7日間満了ですぐに失業手当を受けとれる
解雇という言葉は同じでも、「重責解雇」とそうではない会社都合での「解雇」では失業手当(雇用保険の基本手当)の支給の扱いは大きく異なります。
重責解雇ではない会社都合の「解雇」であれば、解雇されてハローワーク(公共職業安定所)に行って求職を申し込んでから7日間の待機期間が終わればすぐに失業手当(雇用保険の基本手当)を受け取ることができます。
もしも解雇が「重責解雇」なのであれば、7日間の待機期間が終わってからさらに3ヶ月間待たないと失業手当を受け取ることができません。
「重責解雇」と会社都合の「解雇」では失業手当(雇用保険の基本手当)が支給されるまでに3ヶ月の差があります。
失業手当を受け取る方にとっては、とても大きな違いです。
雇用保険法21条(待期)
基本手当は、受給資格者が当該基本手当の受給資格に係る離職後最初に公共職業安定所に求職の申込みをした日以後において、失業している日(疾病又は負傷のため職業に就くことができない日を含む。)が通算して7日に満たない間は、支給しない。
失業手当を受け取れる日数(所定給付日数)も、会社都合での「解雇」とくらべると「重責解雇」は不利になっています。
重責解雇なら3ヶ月、自己都合退職なら2ヶ月が待機期間に加えて失業手当の支給が遅れる
解雇・定年退職・契約期間満了で離職した方は、待機期間7日だけで失業手当を受け取れます。
自己都合退職・重責解雇で離職した方は、待機期間7日に加えて給付制限の期間が終わるまでさらに待たなければ失業手当を受け取ることができません。
雇用保険法33条(1項)
被保険者が自己の責めに帰すべき重大な理由によつて解雇され、又は正当な理由がなく自己の都合によつて退職した場合には、第21条の規定による期間の満了後1箇月以上3箇月以内の間で公共職業安定所長の定める期間は、基本手当を支給しない。
ただし、公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受ける期間及び当該公共職業訓練等を受け終わつた日後の期間については、この限りでない。
- 自己都合退職した方の給付制限は2ヶ月(今後3ヶ月の場合も)
- 重責解雇された方の給付制限は3ヶ月
会社をやめて給料が受けとれないのに、失業手当を受けとれない期間が長引くのはつらいですね。
参考記事
【失業手当】自己都合退職の給付制限2ヶ月へ短縮(2020/10/01〜)
離職証明書の離職理由は要チェック❗️失業手当を受け取れる日数が少なくなったり、本来よりも受取開始が3ヶ月遅れる心配があります。
「重責解雇」の認定基準
「重責解雇」とは「被保険者が自己の責めに帰すべき重大な理由によつて解雇され」ることをいいます。
労働者が重大な責を負って解雇される、日常的には「懲戒解雇」という言葉で聞くことがあると思います。
重責解雇は懲戒解雇であるでしょうが、「懲戒解雇」だからといって「重責解雇」であるとは限りません。
「懲戒解雇」がすべて「重責解雇」なのではありません。
雇用保険に関する業務取扱要領(令和3年8月1日以降)には、「自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇」として給付制限を行う場合の認定基準として、以下の記載があります。
「自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇」として給付制限を行う場合の認定基準
イ 刑法各本条の規定に違反し、又は職務に関連する法令に違反して処罰を受けたことによって解雇された場合
刑法に規定する犯罪又は行政罰の対象となる行為を行ったことによって解雇され た場合である。行政罰の対象となる行為とは、例えば自動車運転手が交通取締規則 に違反する場合等をいう。
この基準は「処罰を受けたことによって解雇された場合」であるから、単に訴追 を受け、又は取調べを受けている場合、控訴又は上告中で刑の確定しない場合は、これに包含されない。
また、刑法第 1 編第 4 章の「執行猶予」中の者は単に刑の執行を猶予されているにとどまり、刑は確定しているのであるからこれに該当し、「起訴猶予」の処分を 受けたものは刑が確定しているのではないからこれに該当しないことはいうまでもない。
ロ 故意又は重過失により事業所の設備又は器具を破壊したことによって解雇された場合
事業主に対して損害を与え、しかもそれが故意又は重過失に基づくものである場合は、当然自己の責めに帰すべき重大な理由によるものである。
ハ 故意又は重過失によって事業所の信用を失墜せしめ、又は損害を与えたことによ って解雇された場合
被保険者の言動によって事業主又は事業所に金銭その他物質的損害を与え、又は信用の失墜あるいは顧客の減少等の無形の損害を与えたことによって解雇された場合である。
ニ 労働協約又は労働基準法(船員については、船員法)に基づく就業規則に違反したことによって解雇された場合
労働協約又は就業規則に定められた事項は被保険者が守るべきものであり、これに違反したことによって解雇された場合には、イ~ハ又はホ~トの基準に該当しない場合でも自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇と認められることがある。
この場合にも、労働協約又は就業規則違反の程度が軽微な場合には、本基準に該当しないものであり、本基準に該当するのは、労働者に労働協約又は就業規則に違反する次の(イ)~(ニ)の行為があったため解雇した場合であって、事業主が労働基準法第20条第3項において準用する同法第19条第2項の規定(船員については、船員法第44条の3第3項の規定)による解雇予告除外認定を受け、同法第 20 条(船員については、第44条の3)の解雇予告及び解雇予告手当支払の義務を免れるときである。
(イ) 極めて軽微なものを除き、事業所内において窃盗、横領、傷害等刑事犯に該当 する行為があった場合
(ロ) 賭博、風紀紊乱等により職場規律を乱し、他の労働者に悪影響を及ぼす行為が あった場合
(ハ) 長期間正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合
(ニ) 出勤不良又は出欠常ならず、数回の注意を受けたが改めない場合ホ 事業所の機密を漏らしたことによって解雇された場合
事業所の機密とは、事業所の機械器具、製品、原料、技術等の機密、事業所の経営状態、資産等事業経営上の機密に関する事項等を包含する。
これらの事項は従業員として当然守らなければならない機密であり、これを他に 漏らしたことによって解雇されることは、自己の責めに帰すべき重大な理由と認められる。
へ 事業所の名をかたり、利益を得又は得ようとしたことによって解雇された場合 事業所の名を悪用し、自己の利益を得又は得ようとしたことによって解雇された 場合で、この場合事業主に有形無形の損害を与える場合もあり、事業主に損害を与えない場合でも詐欺罪又は背任罪の成立する場合もある。
ト 他人の名を詐称し、又は虚偽の陳述をして就職をしたために解雇された場合
被保険者が事業所に雇用されるに当たって、就職条件を有利にするため他人の履 歴を盗用し、あるいは技術、経験、学歴等について自己の就職に有利なように虚偽の陳述をして採用され、後に発覚したことによって解雇された場合である。
52202(2)「自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇」として給付制限を行う場合 の認定基準 P267
【編集後記】
懲戒解雇、重責解雇。
どちらも同じような意味の言葉なのですが、失業手当を受ける上で扱いが分かれる場合も出てきます。
懲戒解雇されたから失業手当の給付制限も重責解雇の扱いをされるとは限りませんので、念のため知っておいていただければと思います。
小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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