法律で特定の場合を明らかにして解雇を禁止している場合があります。
法律が解雇を禁止している特定の場合はもちろん解雇は無効です。
そして、それ以外の場合も合理性と相当性がなければ解雇は無効となります。
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【解雇制限】特定の場合を明らかにして法律が禁止している解雇がある
特定の場合・場面を明らかにして法律が解雇を禁止している場合があります。
法律が禁止ししている場合・場面でおこなった解雇は無効です。
代表的な例をいくつか紹介すると以下のようなものがあります。
法律名 | 解雇制限 | 条項 |
---|---|---|
労働基準法 | 労働者の国籍・信条・社会的身分を理由とする解雇 | 3条 |
労働基準法 | 業務上災害のため療養中の期間とその後の30日間の解雇 | 19条1項 |
労働基準法 | 産前産後の休業期間とその後の30日間の解雇 | 19条1項 |
労働基準法 | 労働基準監督署に申告したことを理由とする解雇 | 104条2項 (労働安全衛生法97項2項) (賃金の支払の確保等に関する法律14条2項) (最低賃金法34条2項) (労働者派遣法49条の3 2項) |
労働組合法 | 労働組合の組合員であることなどを理由とする解雇 | 7条1項 |
個別労働関係紛争解決促進法 | 労働者が労働局長に紛争解決の助言・指導をもとめたことを理由とする解雇 | 4条3項 |
個別労働関係紛争解決促進法 | 労働者が労働局長に紛争解決のあっせんをもとめたことを理由とする解雇 | 5条2項 |
男女雇用機会均等法 | 労働者の性別を理由とする解雇 | 6条4項 |
男女雇用機会均等法 | 女性労働者が結婚・妊娠・出産・産前産後の休業をしたことなどを理由とする解雇 | 9条2項3項 |
男女雇用機会均等法 | 妊娠中の女性、出産後1年を経過しない女性労働者に対する解雇(原則無効) | 9条4項 |
男女雇用機会均等法 | 性差別の禁止をめぐる紛争について労働局長に紛争解決の援助を求めたこと・調停を申請したことを理由とした解雇 | 17条2項18条2項 |
育児・介護休業法 | 労働者が育児・介護休業などを申し出たこと、又は育児・介護休業などをしたことを理由とする解雇 | 10条16条 |
それでは、この特定の場合に該当しなければ会社は解雇をしても問題がないかというとそうではありません。この記事の後半で紹介します。
【労働契約の終了】2つのパタンで3つの種類
解雇は労働契約の終了ですが、労働契約の終了は労働者と会社の間に合意がある場合と合意がない場合の2つのパタンに分かれます。
そして、労働者と会社の間に合意がなく労働契約が終了するパタンには辞職と解雇の2種類があります。
参考記事
労働契約の終了は3つある
【労働契約の合意解約】会社と労働者が合意して解約するのは自由
契約が成立するときと同じように、お互いの当事者が合意すれば契約を終了することができます。
労働契約も売買契約などほかの契約と同じように、合意によって契約が成立し合意によって解約できます。
労働者が退職願を会社に提出して、会社が認めて退職する場合。依願退職と呼んだりしますね。
会社が労働者に退職を勧奨(やめてほしい・やめてくれないかとお願いする)して、労働者が同意して退職する場合。
労働者か会社のどちらか一方が相手に対して労働契約の終了を申し込んで、相手が合意することで労働契約が終了します。
もしもあなたが会社を辞めたくないのでしたら、退職勧奨をうけても退職に合意しなければ大丈夫です。
会社を退職したくないときには、退職勧奨をうけても退職届・退職願を書いてはいけません。
参考記事
【コロナ解雇】で騙されるな!解雇で退職届を出してはダメ
【労働契約の一方的な解約】解雇・辞職
労働契約の一方的な終了・解約とは、辞職と解雇のことです。
相手の合意によらない労働契約の終了 | |
---|---|
辞職 | 労働者からの一方的な意思表示による労働契約の解約 |
解雇 | 会社からの一方的な意思表示による労働契約の解約 |
相手の意思にかかわらず、つまり相手の合意がないのに一方的に労働契約を終了する場合について、民法で規定されています。
そして民法の規定を労働基準法・労働契約法で修正しています。
労働基準法・労働契約法による民法の規定の修正は、労働者を保護し、会社を制限する内容になっています。
【労働契約の一方的な終了・解約】の法律の規定。民法と労働基準法・労働契約法
労働契約の一方的な終了・解約は民法に規定されています。
民法の規定について、労働基準法・労働契約法で修正しています。
辞職(労働者からの解約)については緩やかにして、解雇(会社からの解約)については厳しくする内容での修正です。
正社員のように定年退職まで働くような期間の定めのない労働契約の場合は、相手の合意なく解約する場合には2週間前に解約の通告が必要と民法で規定されています。
あなたが期間の定めのない労働契約で働いているのでしたら、会社に辞職を通告してから2週間経過すると会社を辞められます。
しかし、会社があなたを解雇する場合には2週間前ではなく30日前に解雇予告をしなければならないのです。
辞職する場合は2週間前、解雇する場合は30日前に通告することが法律で規定されているのです。
パートやアルバイト・契約社員の方でしたら、3ヶ月や1年・3年など期間の定めがある労働契約で働いていることが多いでしょう。
期間の定めのある労働契約の場合には原則として期間の途中では解約できません。
ただし、やむを得ない事情や理由がある場合はあなたは(ただちに)会社を辞めることができます。
もしも1年を超える期間の契約をしているなら、あなたは1年すぎたら契約期間の途中でもやむを得ない事由がなくても自由に会社を辞められます。
しかし会社があなたを解雇しようとする場合には、「やむを得ない事由」があることを証明しない限り、労働契約法によって解雇はできません。
民法627条(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。
この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。
民法628条(やむを得ない事由による雇用の解除)
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。
この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
労働基準法20条(解雇の予告)
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30前にその予告をしなければならない。
30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。
労働基準法附則137条
期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が1年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第14条第1項各号に規定する労働者を除く。)は、労働基準法の一部を改正する法律(平成15年法律第百四号)附則第3条に規定する措置が講じられるまでの間、民法第628条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から1年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。
労働契約法17条1項(契約期間中の解雇等)
使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。
30日前に解雇通告しても解雇が有効か無効かは別の問題。合理性と相当性の両方を満たさない解雇は無効
辞職は自由。解雇は合理性と相当性がなければできません。
たとえば期間の定めのない労働契約であれば辞職を通告して2週間経過すれば会社を辞められます。
会社は解雇の30日前に通告(解雇予告)することが必要です。
しかし、30日前の解雇予告をしていれば解雇が許されるか?認められるのかというとそうではありません。
労働者が会社を辞職するのは自由ですが、会社が労働者を解雇するのは自由ではなく合理性と相当性がなければ許されません。
客観的な合理性と社会的相当性の両方を満たさない場合には解雇は無効とされるからです。
労働契約法16条(解雇)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
解雇については詳しくはこちらの記事で紹介しています。
有効な解雇の場合でも【解雇予告】無ければ解雇予告手当を請求できる
【不当解雇】内向型タイプで会社に直接抗議ツライなら労働局「あっせん」利用しましょう
【編集後記】
早朝散歩は厚着をしないと寒くなってきました。
紅葉がすすんできて歩いていると楽しいです。
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小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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