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会社は労災申請する労働者に協力する法律上の義務があります。しかし、会社が協力しない場合でも、労災に遭った労働者は労災保険の申請ができます。
労災申請する労働者に協力し証明する会社の法律上の義務
労働者災害補償保険法施行規則 23条 電子政府の総合窓口 e-Gov[イーガブ]
(事業主の助力等)
保険給付を受けるべき者が、事故のため、みずから保険給付の請求その他の手続を行うことが困難である場合には、事業主は、その手続を行うことができるように助力しなければならない。
2 事業主は、保険給付を受けるべき者から保険給付を受けるために必要な証明を求められたときは、すみやかに証明をしなければならない。
しかし、実際には、事故・ケガ・病気が労働災害によるものではないと言って、会社が協力しない場合があります。
会社が協力してくれず、事業主証明への記入を拒否した場合でも、労働災害に遭ってしまった労働者は労災申請をして、労災保険の給付を受けることができます。
記事「仕事中にケガをした。“労災じゃない”と言って労災保険請求書の証明欄に会社が記入してくれない❗」 で、
労災保険請求書の証明欄に会社が記入してくれなくても、労災保険の請求ができることを紹介しました。
こちらの記事では、
療養のために仕事ができずに会社を休んでいる期間、給料の約8割(労災保険から6割、特別支給金として2割)を受ける療養補償給付を請求するときに、
労災ではないと言って会社が労災保険請求書の証明欄に記入してくれないという場合も、労災申請できることを書きました。
今日は、医療費の話です。
労働災害でケガ・病気をした場合は、原則として無料で、病院で治療を受けたり入院することができます。
労災保険の療養補償給付です。
(通勤災害の場合は、療養給付を受けられます。名前は異なりますが同じく無料で治療を受けられます)
あなたは、工事現場で作業をしていたときに、作業場の上にあった足場が崩れて落下してきて、ケガをしました。
救急車で病院へと搬送されて、そのまま入院しました。
入院した病院の看護師長から、事故の原因は仕事によるものなのか、仕事以外でのケガなのかを質問されました。
仕事中のケガであることを伝えたところ、労災申請の用紙(様式第5号 療養補償給付請求書)を渡されて、会社に「証明」欄を記入してもらうように言われました。
会社は、立ち入り禁止の場所に勝手に入ってケガをしたのだから、本人の責任であって労災ではない、と言ってきました。
労災ではないのだから、労災の請求書の「証明」欄には記入できないと、会社に断られてしまいました。
このことを病院に伝えたところ、労災申請の用紙には会社が「証明」する欄があるので、会社が記入していないと労働基準監督署に労災申請できないと言われてしまいました。
仕事でケガをして働くことができないのに、入院して医療費がかかるのでは出費がかさみ生活に困ってしまいます。
労災申請すれば、医療は全額無料で受けられるので助かるのですが、
労災申請できなければ、健康保険から7割給付ですから、医療費本人負担分である3割を支払わなければなりません。
さて、困ったあなたはどうしたら良いか、という話です。
結論としては、療養補償給付も休業補償給付と同様です。
労災ではないと言って会社が労災保険請求書の証明欄に記入してくれないという場合も、休業補償給付を請求するときと同じ方法で労災申請ができます。
5号様式に会社が証明拒否しているという書面を添付して病院に請求書を渡しましょう。
『労災保険請求のためのガイドブック』 厚生労働省
厚生労働省も『労災保険請求のためのガイドブック』の中で、
会社が事業主証明を拒否する場合には、
事業主の証明がなくても、労災保険の請求書を受理すると書いています。
療養の給付請求書(様式第5号)に会社が証明拒否しているという書面を作成しましょう。病院にはこの書面を添付して請求書を渡しましょう。
- 表題 “請求用紙の事業主証明欄が空白のまま労災請求書を提出することについて” など
- 書類提出年月日
- 宛先 ○○労働基準監督署長殿
- 提出者 請求人 ○○ ○○(氏名) 印
- 内容 事業主証明を拒否されたことの事実(いつ、誰に、何と言われたか、など簡潔に)
- 5 を理由として事業主証明欄を空白のままで労災請求することとしたこと
決まった書式はありませんので、 上記(1)〜(6)のような内容を簡単に記入した用紙を請求書と一緒に提出しましょう。
参考引用文献
『労災事件救済の手引―労災保険・損害賠償請求の実務』巻末資料【3】
様式第5号の記入欄の外の余白に、“事業主証明を拒否されたため事業主証明欄を空白のままで労災請求することとした”などと簡潔に記入して提出することで受理されたという話も聞きます。
健康保険で自己負担分を支払っていて途中から労災申請した場合は、労災保険と健康保険の間で直接、医療費のやりとりをしてもらえます。
お仕事でのケガ等には、労災保険! 厚生労働省
記事「労災認定された❗健康保険自己負担分除く医療費7割を先に返さないと労災保険給付受けられない⁉」で紹介しました。
こちらの記事も参考にしていただければと思います。
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小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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