国民健康保険に加入している労働者の方。新型コロナウィルス感染した疑いで仕事を休んだら傷病手当金を受けられる?

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勤め人の方でしたら、健康保険に加入しています。しかし、労働時間が短く出勤日が少ないなど健康保険の被保険者となる働き方の方や勤め先が健康保険の適用事業所でない場合は健康保険に加入せず、国民健康保険に加入しているはずです。
Q.国民健康保険には傷病手当金はないのでは?
A.国民健康保険でも傷病手当金を受け取れる場合があります。

健康保険の被保険者となる要件

勤め人の方でしたら、健康保険に加入しています。

しかし、

・勤め先が健康保険の適用事業所でない場合
・勤め先が健康保険の適用事業所だが、労働時間が短い出勤日が少ないなど健康保険の被保険者にならない働き方の方

勤め人でも、このような場合には健康保険に加入せず国民健康保険に加入します。

健康保険に加入している人(被保険者)の被扶養者の場合は、健康保険の保険料を払わずに健康保険の給付を受けられますので、国民健康保険には加入しません。

法人はたった1人だけの事業でも健康保険の強制適用事業所

法人の事業所の場合は、業種や従業員規模にかかわらず健康保険の適用事業所となります。
たとえば、社長1人だけで社員がいない会社も健康保険の適用事業所です。

もしも、あなたが働いている職場が強制適用事業所ではない、任意適用の認可を受けた事業所でない場合、あなたは健康保険に加入しません。
その場合、あなたは健康保険の被扶養者にならないときには、国民健康保険に加入します。

事業 健康保険の適用
国・地方公共団体 1人でも常時従業員を使用するなら強制適用事業所
法人 社長1人でも強制適用事業所
製造業、鉱業、電気ガス業、運送業、貨物積卸し業、物品販売業、金融保険 業、保管賃貸業、媒介斡旋業、集金案内広告業、清掃業、土木建築業、教育研究調査業、医療事業、通信報道業、社会福祉事業
(以上16事業)
常時5人以上の従業員を使用する個人事業所は強制適用事業所
上記の16事業以外の事業

第1次産業(農業・林業、漁業など)、
サービス業(飲食店・理容理髪など)、
法務(弁護士、会計士など)、
宗教(神社・寺院など)

強制適用事業にはならない事業所。一定の条件を満たせば厚生年金保険・健康保険に加入する(任意適用事業所となる)ことができます。

正社員以外でも週20時間以上の所定労働時間の方は健康保険に加入できる

健康保険の被保険者被扶養者

アルバイト・パートなど正社員以外の方でも週20時間以上の所定労働時間の方は従業員数が501人以上の会社なら健康保険に加入します。従業員数が500人以下の会社で働く方でも労使合意があれば加入できます。

こちらの記事で紹介しました。
週20時間以上働く人は厚生年金保険に加入する。500人以下の会社は労使合意で加入可能。

以下の方は、健康保険の被保険者となりません。

健康保険の被保険者とならない人
臨時に2か月以内の期間を定めて使用され、その期間を超えない人
臨時に日々雇用される人で1か月を超えない人
季節的業務に4か月を超えない期間使用される予定の人
臨時的事業の事業所に6か月を超えない期間使用される予定の人

新型コロナウィルス感染症に感染・感染した疑いで療養のために仕事ができずに休んだら4日目から傷病手当金を受け取れる

健康保険の被保険者なら、傷病手当金を受け取ることができる

健康保険法では、「傷病手当金を支給する。」と定められていますので、支給する要件に該当した場合は必ず支給されます。

健康保険法99条(傷病手当金)

被保険者(任意継続被保険者を除く。第百二条第一項において同じ。)が療養のため労務に服することができないときは、その労務に服することができなくなった日から起算して三日を経過した日から労務に服することができない期間、傷病手当金支給する

2項 傷病手当金の額は、一日につき、傷病手当金の支給を始める日の属する月以前の直近の継続した十二月間の各月の標準報酬月額(被保険者が現に属する保険者等により定められたものに限る。以下この項において同じ。)を平均した額の三十分の一に相当する額(その額に、五円未満の端数があるときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数があるときは、これを十円に切り上げるものとする。)の三分の二に相当する金額(その金額に、五十銭未満の端数があるときは、これを切り捨て、五十銭以上一円未満の端数があるときは、これを一円に切り上げるものとする。)とする。(以下略)

国民健康保険の被保険者も、型コロナウィルス感染症に感染・感染した疑いで療養のために仕事ができずに休んだら傷病手当金を受け取れる

国民健康保険では傷病手当金は制度として支給が定められているわけではありません。

健康保険のように必ず支給されるということは法律で定められていないのです。

条例・規約を定めて傷病手当金を支給を行うことができると定められていますので、条例・規約しだいということになります。

国民健康保険法58条(その他の給付)

市町村及び組合は、被保険者の出産及び死亡に関しては、条例又は規約の定めるところにより、出産育児一時金の支給又は葬祭費の支給若しくは葬祭の給付を行うものとする。ただし、特別の理由があるときは、その全部又は一部を行わないことができる。

2項 市町村及び組合は、前項の保険給付のほか、条例又は規約の定めるところにより、傷病手当金の支給その他の保険給付を行うことができる

しかし、厚生労働省から「新型コロナウイルス感染症に感染した被用者に対する傷病手当金の支給に関するQ&A」(令和2年5月1日改訂)が出されています。

自宅療養をして体調が改善した場合も支給の対象として良いという内容も書かれています。

新型コロナウィルス感染症に感染・感染した疑いで療養のために仕事ができずに休んだら、国民健康保険の被保険者の方も傷病手当金を受け取れるようになっているはずです。

加入している国民健康保険の市区町村に確認してみましょう!
(市区町村のホームページで確認できる場合もあります。)

Q1 国保等における傷病手当金の位置付け趣旨如何。
(令和2年5月1日一部改訂)

A 国保制度及び後期高齢者医療制度は、様々な就業形態の被保険者が加入していることを踏まえ、傷病手当金については、保険者が保険財政上余裕がある場合などに、 自主的に条例(規約)を制定して行うことができることとしている。

しかしながら、今般の新型コロナウイルス感染症対策については、国内での更な る感染拡大をできる限り防止するためには、労働者が感染した場合(発熱等の症状 があり感染が疑われる場合を含む。)に休みやすい環境を整備することが重要である。

そのため、今般、国内の感染拡大防止の観点から、保険者に傷病手当金の支給を促すとともに、国が緊急的・特例的な措置として当該支給に要した費用について財 政支援を行うこととしたものである。

Q2 新型コロナウイルス感染症等について「労務に服することができない期間」かどうかは、どのように判断すればよいか。(令和2年5月1日一部改訂)

A 今般の新型コロナウイルス感染症の相談・受診の目安として、
・風邪の症状や 37.5°C以上の発熱が4日以上続いている(解熱剤を飲み続けなければならないときを含む) ・強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある

※高齢者や基礎疾患等のある方は、上の状態が2日程度続く場合 のいずれかに該当することが示されている。
その上で、当該者が医療機関において、被保険者が提出する申請書(医療機関記 入用)に必要事項を記載いただくことを想定している。

なお、当該者が帰国者・接触者外来を受診しないまま体調が改善した場合等には、被保険者が支給申請書にその旨を記載するとともに、当該申請書の記載内容(休養 期間等)を事業主が確認し、事業主で把握している労務不能の期間等の情報と照らして相違がないことを、当該申請書の中で事業主にも証明していただくこと等により、保険者において労務不能と認められる場合には、傷病手当金を支給して差し支えない。

また、結果として新型コロナウイルス感染症に感染していなかった場合についても、取扱いは同様である。

※ 申請書は、傷病手当金支給申請書に1申請書(被保険者記入用)、2申請書(事業主記入用)、3申請書(医療機関記入用)を添付することを想定。

「新型コロナウイルス感染症に感染した被用者に対する傷病手当金の支給に関するQ&A」(令和2年5月1日改訂) 厚生労働省

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【編集後記】

労働者のための公的医療保険である健康保険。この健康保険の傷病手当金を知らなかったという相談者の方もいます。

「内向型」労働者の方の場合、ケガや病気で仕事を4日以上休んだときでも積極的に会社の福利厚生制度や健康保険などの公的制度からの給付について積極的に自分から聞いていかない場合があるからです。

黙っていても、総務・人事部門から制度を教えて申請書の書き方もアドバイスしてあげるのが当然だとは思うのですが。

ましてや、国民健康保険での傷病手当金について知っているという方がどのくらいいるのでしょうか?

知り合いの方で国民健康保険の被保険者はいましたら、新型コロナウィルス感染症に感染・感染した疑いで療養のために仕事ができずに休んだら傷病手当金を受け取れるようになっているはずだから市区町村に確認するようにと教えてあげていただければと思います。

昨日の1日1新  ドミノ・ピザ トッピング2倍盛り

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小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)

小倉健二(おぐらけんじ) 労働者のための社労士・労働者側の社労士 労働相談、労働局・労働委員会でのあっせん代理 労災保険給付・障害年金の相談、請求代理 相談・依頼ともに労働者の方に限らせていただいています。  <直接お会いしての相談は現在受付中止> ・mail・zoomオンライン対面での相談をお受けしています。 1965年生まれ57歳。連れ合い(妻)と子ども2人。  労働者の立場で労働問題に関わって30年。  2005年(平成17年)12月から社会保険労務士(社労士)として活動開始。 2007年(平成19年)4月1日特定社会保険労務士付記。 2011年(平成24年)1月30日行政書士試験合格