老齢年金は65歳から受けとります。
しかし60歳から65歳になるまでの間で希望するときから、老齢年金を早めて受けとることもできます。
早くから老齢年金を受けとれた方が良いという方も、繰上げ受給には注意する必要があります。
Contents
老齢年金の繰上げ受給とは
老齢年金は65歳から受けとることができます。
国民年金法26条(老齢基礎年金の支給要件)
老齢基礎年金は、保険料納付済期間又は保険料免除期間(第90条の3第1項の規定により納付することを要しないものとされた保険料に係るものを除く。)を有する者が65歳に達したときに、その者に支給する。
ただし、その者の保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が10年に満たないときは、この限りでない。
しかし、65歳になる前でも60歳になれば老齢年金を受けとることもできます。
国民年金法附則9条の2(老齢基礎年金の支給の繰上げ)
(1項)保険料納付済期間又は保険料免除期間を有する者であつて、60歳以上65歳未満であるもの(附則第5条第1項の規定による被保険者でないものに限るものとし、次条第1項に規定する支給繰上げの請求をすることができるものを除く。)は、当分の間、65歳に達する前に、厚生労働大臣に老齢基礎年金の支給繰上げの請求をすることができる。
ただし、その者が、その請求があつた日の前日において、第26条ただし書に該当したときは、この限りでない。
3項 第1項の請求があつたときは、第26条の規定にかかわらず、その請求があつた日から、その者に老齢基礎年金を支給する。
国民年金法附則9条の2の2(老齢厚生年金の支給繰上げの請求ができる者等に係る老齢基礎年金の支給の繰上げの特例)
(1項)保険料納付済期間又は保険料免除期間を有する者であつて、厚生年金保険法附則第8条の2各項に規定する者(同条第3項に規定する者その他政令で定めるものに限るものとし、同条各項の表の下欄に掲げる年齢に達していないものに限る。)に該当するもの(60歳以上の者であつて、かつ、附則第5条第1項の規定による被保険者でないものに限る。)は、当分の間、厚生労働大臣に老齢基礎年金の一部の支給繰上げの請求をすることができる。ただし、その者が、その請求があつた日の前日において、第26条ただし書に該当したときは、この限りでない。
3項 第1項の請求があつたときは、第26条の規定にかかわらず、その請求があつた日から、その者に老齢基礎年金を支給する。
【老齢年金の繰上げ受給】2022年4月から減額率1月0.5%から0.4%に変更
2022年3月現在では、老齢年金を65歳よりも前に受けとる繰上げ受給をすると繰り上げる月数に応じて1月あたり0.5%減額されます。
もしも、60歳から老齢年金を受けとると年金額が30%少なくなります。
2022年4月からは、この老齢年金の繰上げ受給の減額率が0.5%から0.4%へと変更されます。
減額率がさがりますので、繰上げ受給が少しお得になります。
現在は、60歳から老齢年金を繰上げ受給すると、30%年金額が少なくなります。
2022年4月からは、60歳から老齢年金を繰上げ受給すると、24%年金額が少なくなります。
2022年4月から減額率が最大6%へることになります。
ただし、現在繰上げ受給している方の減額率がへるわけではありません。
繰上げ受給の減額率0.4%が対象となるのは、誕生日が1962年4月2日以降の方です。
繰上げ受給についてよくあるのが、「繰上げ受給開始から65歳までの間だけ減額されて、65歳になってからは減額されていない年金を受けとれる」という誤解です。
私の父も誤解して60歳から繰上げ受給をして、「知っていれば繰上げしなかった」と後悔していました。
減額は65歳すぎてもそのままです。
亡くなるまで受けとる老齢年金は減額されたままになりますので、注意してください。
老齢年金は繰上げ受給した方が得か、繰下げた方が得か。
よくある議論ではあります。
長く生きるなら繰下げが得ですし、早く亡くなるなら繰上げして少しでも年金を受けとりたいところでしょう。
何歳まで生きられれるかは人それぞれ違いますし、あらかじめて知ることができません。
損得は結果でしかありえませんので、繰上げ・繰下げが損か得かはわかりません。
そして、生涯受けとれる老齢年金の額が多くなるか少なくなるかという問題の他にも、老齢年金を繰上げ受給することによる大きな問題があります。
老齢年金の繰上げ受給は要注意
- 65歳から受けとることができる老齢年金。
- 60歳以降の方は、65歳になる前に繰り上げて老齢年金を受けとることができます。
老齢年金を繰上げ受給すると、生きている限り受けとることができる年金額が一生減額されたままになります。
そして、老齢年金を繰上げ受給することのデメリットはそれだけではありません。
老齢年金を繰上げ受給すると、障害年金を請求できなくなる場合がある
老齢年金は65歳になってから受けとることになっていますので、老齢年金を繰上げ受給すると、65歳になったというあつかいをされます。
65歳になる前に老齢年金を繰上げ受給すると、障害年金を受けとれなくなってしまう場合があります。
国民年金法(障害基礎年金の支給要件)
30条 1項2号
被保険者であつた者であつて、日本国内に住所を有し、かつ、60歳以上65歳未満であること。
国民年金法附則9条の2の3(障害基礎年金等の特例)
第30条第1項(第2号に限る。)、第30条の2、第30条の3、第30条の4第2項、第34条第4項、第36条第2項ただし書及び第49条並びに附則第5条の規定は、当分の間、附則第9条の2第3項若しくは前条第3項の規定による老齢基礎年金の受給権者又は厚生年金保険法附則第7条の3第3項若しくは第13条の4第3項の規定による老齢厚生年金の受給権者については、適用しない。
国民年金法附則9条の2(老齢基礎年金の支給の繰上げ)
(1項)保険料納付済期間又は保険料免除期間を有する者であつて、60歳以上65歳未満であるもの(附則第5条第1項の規定による被保険者でないものに限るものとし、次条第1項に規定する支給繰上げの請求をすることができるものを除く。)は、当分の間、65歳に達する前に、厚生労働大臣に老齢基礎年金の支給繰上げの請求をすることができる。ただし、その者が、その請求があつた日の前日において、第26条ただし書に該当したときは、この限りでない。
3項 第1項の請求があつたときは、第26条の規定にかかわらず、その請求があつた日から、その者に老齢基礎年金を支給する。
国民年金法附則9条の2の2(老齢厚生年金の支給繰上げの請求ができる者等に係る老齢基礎年金の支給の繰上げの特例)
(1項)保険料納付済期間又は保険料免除期間を有する者であつて、厚生年金保険法附則第8条の2各項に規定する者(同条第3項に規定する者その他政令で定めるものに限るものとし、同条各項の表の下欄に掲げる年齢に達していないものに限る。)に該当するもの(60歳以上の者であつて、かつ、附則第5条第1項の規定による被保険者でないものに限る。)は、当分の間、厚生労働大臣に老齢基礎年金の一部の支給繰上げの請求をすることができる。ただし、その者が、その請求があつた日の前日において、第26条ただし書に該当したときは、この限りでない。
3項 第1項の請求があつたときは、第26条の規定にかかわらず、その請求があつた日から、その者に老齢基礎年金を支給する。
老齢年金を繰上げ受給すると、障害年金の事後重症請求ができなくなる
障害年金は、初診日から1年6月を経過した障害認定日に障害年金の障害等級に該当する場合に支給されます。
もしも障害認定日には障害等級に該当しなかった場合でも、そのあとで重症化して障害等級に該当したら、65歳の誕生日の2日前までに障害年金を請求できます。
事後重症による障害年金の請求です。
しかし、老齢年金を繰上げ受給すると事後重症請求をすることができなくなります。
20歳前に初診日がある障害についても、老齢年金を繰上げ受給すると事後重症請求をすることができなくなります。
30条の2 1項 事後重症による障害年金の請求
疾病にかかり、又は負傷し、かつ、当該傷病に係る初診日において前条第1項各号のいずれかに該当した者であつて、障害認定日において同条第2項に規定する障害等級(以下単に「障害等級」という。)に該当する程度の障害の状態になかつたものが、同日後65歳に達する日の前日までの間において、その傷病により障害等級に該当する程度の障害の状態に該当するに至つたときは、その者は、その期間内に同条第1項の障害基礎年金の支給を請求することができる。
30の4 2項 20歳前障害の事後重症による障害年金の請求
疾病にかかり、又は負傷し、その初診日において20歳未満であつた者(同日において被保険者でなかつた者に限る。)が、障害認定日以後に20歳に達したときは20歳に達した日後において、障害認定日が20歳に達した日後であるときはその障害認定日後において、その傷病により、65歳に達する日の前日までの間に、障害等級に該当する程度の障害の状態に該当するに至つたときは、その者は、その期間内に前項の障害基礎年金の支給を請求することができる。
老齢年金を繰上げ受給すると、障害年金の基準障害(はじめて1級2級)による請求ができなくなる
障害認定日には障害等級に該当しなかった場合でも、そのあとで別の病気やケガによる障害と合わせて65歳の誕生日の2日前までに障害年金の障害等級に該当した場合は、障害年金を請求できます。
基準障害による障害年金の請求(はじめて1級または2級による障害年金の請求)です。
しかし、老齢年金を繰上げ受給すると、基準障害による障害年金の請求はできなくなります。
30条の3 1項 基準障害(はじめて1級・2級)による障害年金の請求
疾病にかかり、又は負傷し、かつ、その傷病(以下この条において「基準傷病」という。)に係る初診日において第30条第1項各号のいずれかに該当した者であつて、基準傷病以外の傷病により障害の状態にあるものが、基準傷病に係る障害認定日以後65歳に達する日の前日までの間において、初めて、基準傷病による障害(以下この条において「基準障害」という。)と他の障害とを併合して障害等級に該当する程度の障害の状態に該当するに至つたとき(基準傷病の初診日が、基準傷病以外の傷病(基準傷病以外の傷病が2以上ある場合は、基準傷病以外のすべての傷病)の初診日以降であるときに限る。)は、その者に基準障害と他の障害とを併合した障害の程度による障害基礎年金を支給する。
老齢年金を繰上げ受給すると、その他障害による障害年金の支給停止解除ができなくなる
障害年金は障害等級に該当しない状態の間は受けとることができなくなります。障害年金の支給停止です。
障害年金の支給停止中に別の病気やケガによって障害の状態が加わり、合わせると障害等級に該当する場合は、障害年金の支給停止は解除されます。
その他障害による障害年金支給停止の解除です。
しかし、老齢年金を繰上げ受給するとその他障害による障害年金支給停止の解除はできなくなります。
36条 2項 その他障害による障害年金の支給停止の解除
障害基礎年金は、受給権者が障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなくなつたときは、その障害の状態に該当しない間、その支給を停止する。ただし、その支給を停止された障害基礎年金の受給権者が疾病にかかり、又は負傷し、かつ、その傷病に係る初診日において第30条第1項各号のいずれかに該当した場合であつて、当該傷病によりその他障害の状態にあり、かつ、当該傷病に係る障害認定日以後65歳に達する日の前日までの間において、当該障害基礎年金の支給事由となつた障害とその他障害(その他障害が2以上ある場合は、すべてのその他障害を併合した障害)とを併合した障害の程度が障害等級に該当するに至つたときは、この限りでない。
老齢年金を繰上げ受給すると、寡婦(かふ)年金が受けとれなくなる
65歳になる前に老齢年金を繰上げ受給すると、寡婦(かふ)年金を受けとれなくなってしまいます。
寡婦(かふ)年金とは、国民年金の第1号被保険者だった「夫」がなくなったときに、条件を満たす事実婚を含む「妻」が60歳から65歳になるまで受けとる年金です。
妻が受けとる寡婦年金の額は、死亡した夫が受けとるはずだった(第1号被保険者期間だけで計算した)老齢基礎年金の3/4です。
国民年金法49条(寡婦年金の支給要件)1項
寡婦年金は、死亡日の前日において死亡日の属する月の前月までの第1号被保険者としての被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が10年以上である夫(保険料納付済期間又は第90条の3第1項の規定により納付することを要しないものとされた保険料に係る期間以外の保険料免除期間を有する者に限る。)が死亡した場合において、夫の死亡の当時夫によつて生計を維持し、かつ、夫との婚姻関係(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含む。)が10年以上継続した65歳未満の妻があるときに、その者に支給する。
ただし、老齢基礎年金又は障害基礎年金の支給を受けたことがある夫が死亡したときは、この限りでない。
老齢年金を繰上げ受給すると、国民年金に任意加入できなくなる
65歳になる前に老齢年金を繰上げ受給すると、国民年金に任意加入できなくなります。
国民年金の老齢年金(老齢基礎年金)は480月分(40年分)の保険料を払うと満額(最高額)の年金を受けとることができます。
480月分の保険料を払っていない方で、もしも少しでも年金額を増やしたいと思ったら、60歳すぎてから国民年金に任意加入して保険料を払うことで将来受けとる老齢基礎年金の額を増やすことができます。
しかし、老齢年金を繰上げ受給すると国民年金に任意加入することはできなくなります。
国民年金法附則5条(任意加入被保険者)1項
次の各号のいずれかに該当する者(第2号被保険者及び第3号被保険者を除く。)は、第7条第1項の規定にかかわらず、厚生労働大臣に申し出て、被保険者となることができる。
2号 日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の者(この法律の適用を除外すべき特別の理由がある者として厚生労働省令で定める者を除く。)
3号 日本国籍を有する者その他政令で定める者であつて、日本国内に住所を有しない20歳以上65歳未満のもの
【編集後記】
昨日(2022/03/03)も多摩湖自転車道をポタリング(自転車散歩)。
ふだんの生活でも、私は水分をあまりとらずに過ごしてしまいます。
そこで、少なくても「1日これ1本は飲む」と決めて1.15リットルの水筒を買いました。
ポタリングでもこの水筒を持って出かけて水分をとるように工夫しています。
この水筒、赤くて大きいので「消化器みたいだ」と家族からは言われています。
小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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