「次の給料がでるまでお金がもたない」
こんなときに会社から給料の前借りはできるのでしょうか?
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ノーワーク・ノーペイの原則(民法624条)
働く前の給料「前借り」を請求する権利は労働者にありません。
ノーワーク・ノーペイの原則(民法624条)がありますので、働いたあとでなければ給料を請求できません。
民法624条1項(報酬の支払時期)
労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない。
民法624条は任意規定です。契約があれば、前借りをすることができることになります。
しかし、給料の「前借り」はできません。
労働基準法で「前借り」は禁止されているからです。
会社からお金を借りる契約をすることは問題ないが「前借り」はできない
給料の「前借り」とは、働く前に会社からお金を借りて、給料から差し引いて借金を返済することです。
給料の「前借り」は法律で禁止されています。(正しくは給料の前貸しをすることを禁止)
労働基準法17条(前借金相殺の禁止)
使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。
給料の「前借り」(前借金)が禁止されています。
給料の前借りは禁止されていますし、借金を返済させるためにその分を給料から差し引くことも禁止されています。
ただし、前借り禁止の目的は、身分的拘束が行われて労働が強制されることを禁止することです。
借金を返すまで給料を受とれなくなる、会社を辞められなくなるといったことが起きないためのものです。
そのため、
- 貸付けの原因が真に労働者の便宜のためのもの
- 労働者の申出に基づくものである
- 貸付期間は必要を満たし得る範囲である
- 貸付金額が1カ月の賃金または退職金等の充当によって生活を脅威し得ない程度に返済し得るものである
- 返済前であっても退職の自由が制約されていないこと
など、
身分的拘束を伴わないことが明らかな貸付金は、労働基準法17条に違反しません。
第17条の規定は前借金により身分的拘束を伴い労働が強制されるおそれがあること等を防止するため、労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺することを禁止するものであるから、使用者が労働組合との労働協約の締結あるいは労働者からの申出に基づき、生活必需品の購入等のための生活資金を貸し付け、その後この貸付金を賃金より分割控除する場合においても、貸付の原因、期間、金額、金利の有無等を総合的に判断して労働することが条件となっていないことが極めて明白な場合には、本条の規定は適用されない。
労働法コンメンタール『労働基準法(上)』P247 厚生労働省労働基準局編
「前借り」ではなく、働いた分を給料日より前に請求できる「非常時払」
給料日前ではあるものの「前借り」ではなく、すでに働いた日の分の給料の支払いを求めることができる場合があります。
労働基準法にさだめられている「非常時払」です。
非常時払いを利用できる場面は限られています。
しかし、法律によって認められていますので、当てはまる場面では請求すれば会社は支払わなければならない義務があります。
非常時払いの請求は、労働者または労働者の収入によつて生計を維持されている方が6つのケースに当てはまったときにできます。
- 労働者本人が出産
- 労働者本人が疾病(ケガや病気)
- 労働者本人が災害
- 労働者の収入によつて生計を維持する者が出産
- 労働者の収入によつて生計を維持する者が疾病(ケガや病気)
- 労働者の収入によつて生計を維持する者が災害
労働者の収入によつて生計を維持されている方は、親族にかぎりません。同居人も含まれます。
労働基準法25条(非常時払)
使用者は、労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であつても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない。
労働基準法施行規則9条
法第25条に規定する非常の場合は、次に掲げるものとする。
1号 労働者の収入によつて生計を維持する者が出産し、疾病にかかり、又は災害をうけた場合
2号 労働者又はその収入によつて生計を維持する者が結婚し、又は死亡した場合
3号 労働者又はその収入によつて生計を維持する者がやむを得ない事由により1週間以上にわたつて帰郷する場合
【編集後記】
労働基準法25条による既往の労働(もう働き終わった日の分)に対する賃金の非常時払。
使える場面は限られていますが、法律上当然に請求できるものです。
必要なときには請求していただければと思います。
小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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