倒産であっても解雇予告あるいは解雇予告手当の支払いは法律上の義務です。倒産当日に解雇が通告された場合には、1ヶ月分以上の平均賃金の解雇予告手当を支払わないと労働基準法20条違反になります。
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倒産でも解雇予告は必要
2020年1月に倒産した山形市の百貨店「大沼」。
倒産の際に従業員185人に対して解雇予告を行わなかったとして、法人としての大沼と元代表取締役を労働基準法違反の疑いで、山形労働局が書類送検しました。
元従業員の方からの話がテレビで放映されています。
きょう付(で解雇)という形でしか簡単にしか言われなかったことは事実
大沼と倒産当時の代表取締役を書類送検 労働基準法違反 従業員に「解雇の事前予告」行わず 山形さくらんぼテレビ
倒産だからといって、解雇予告あるいは解雇予告手当の支払いをしなくて良いことにはなりません。
倒産で労働者全員を即日解雇するという場合でも、30日分以上の平均賃金を解雇する労働者全員に支払わなければ労働基準法20条違反です。
【解雇予告】労働基準法20条
労働者を解雇する場合
- 30日以上前に解雇予告を行わなければならない。
- 30日前に予告しない場合は30日以上の平均賃金を支払わなければならない。
(平均賃金を何日か分を支払った場合は、その日数分の解雇予告期間が短縮される。)
解雇予告・解雇予告手当の支払をしないことは労働基準法20条違反です。
6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。
労働基準法20条(解雇の予告)
(1項)使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。
但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
2項 前項の予告の日数は、1日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。
3項 前条第2項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。
前条(19条)
(1項)使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が第65条の規定によつて休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない。
ただし、使用者が、第81条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。
(2項)前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。
労働基準法119条
次の各号のいずれかに該当する者は、6箇月以下の懲役又は30円以下の罰金に処する。
1号 第3条、第4条、第7条、第16条、第17条、第18条第1項、第19条、第20条、第22条第4項、第32条、第34条、第35条、第36条第6項、第37条、第39条(第7項を除く。)、第61条、第62条、第64条の3から第67条まで、第72条、第75条から第77条まで、第79条、第80条、第94条第2項、第96条又は第104条第2項の規定に違反した者
2号 第33条第2項、第96条の2第2項又は第96条の3第1項の規定による命令に違反した者
3号 第40条の規定に基づいて発する厚生労働省令に違反した者
4号 第70条の規定に基づいて発する厚生労働省令(第62条又は第64条の3の規定に係る部分に限る。)に違反した者
【解雇予告】適用除外される労働者(労働基準法21条)
4種類の労働者は解雇予告の適用から除外されますが、一定の期間を超えて引き続き使用される(働き続ける)と解雇予告が適用されます。
解雇予告の適用除外 | 適用される場合 | |
---|---|---|
1 | 日々雇い入れられる労働者 | 1ヶ月を超えて
引き続き使用されている場合 |
1 | 2ヶ月以内の期間を定めて
使用される労働者 |
契約期間を超えて
引き続き使用されている場合 |
3 | 季節的業務に
4ヶ月以内の期間を定めて 使用される労働者 |
契約期間を超えて
引き続き使用されている場合 |
4 | 試の使用期間中
(試用期間)の労働者 |
14日を超えて
引き続き使用されている場合 |
【解雇予告】2つの除外事由あるが、どちらも労働基準監督署長の認定が必要
解雇予告は除外される2つの事由がありますが、どちらに該当する場合であっても労働基準監督署長の認定が必要です。
天災事変その他やむを得ない事由で事業の継続が不可能となって解雇する場合
天才事変であれば事業が継続できなくなって解雇する場合であれば、労働基準監督署長から解雇予告の除外認定がされるわけではありません。
「天災事変その他やむを得ない事由のため事業の継続が不可能となった」とは、「天災事変その他やむを得ない事由」と解されるだけでは十分でなく、そのために「事業の継続が不可能」になることが必要であり、また、逆に「事業の継続が不可能」になってもそれが「やむを得ない事由」に起因するものでない場合には、これに該当しない。
平成22年版 労働基準法 上巻(労働法コンメンタールNo.3) 厚生労働省労働基準局編
労働者の責に帰すべき事由によって解雇する
労働者の責に帰すべき事由による解雇。いわゆる懲戒解雇。
しかし、会社の就業規則などで定められた事由に該当して解雇する場合でも、労働基準法20条解雇予告・解雇予告手当の支払いの除外事由に当たるとは限りません。
よほど重大・悪質な場合でなければ、労働基準監督署長から解雇予告除外の認定はされません。
解雇予告除外事由の第2(記事投稿者注「労働者の責に帰すべき事由」のこと)であるが、この事由により予告及び予告手当の支払なくして解雇する場合についても、所轄労働基準監督署長の認定が条件とされている(第3項)。
この認定事由は、解雇予告制度により労働者を保護するに値しないほどの重大又は悪質な義務違反ないし背信行為が労働者に存する場合であって、企業内における懲戒解雇事由とは必ずしも一致するものではない。この点につき、解釈例規は、次のような認定基準を示している。
「労働者の責に帰すべき事由』とは、労働者の故意、過失又はこれと同視すべき事由であるが、判定に当っては、労働者の地位、職責、継続勤務年限、勤務状況等を考慮の上、総合的に判断すべきであり、『労働者の責に帰すべき事由』が法第20条の保護を与える必要のない程度に重大又は悪質なものであり、従って又使用者をしてかかる労働者に30日前に解雇の予告をなさしめることが当該事由と比較して均衡を失するようなものに限って認定すべきものである。
平成22年版 労働基準法 上巻(労働法コンメンタールNo.3) 厚生労働省労働基準局編
【編集後記】
梅の花がきれいに咲いています。
もう少しすると桜の花も咲いて春になりますね。
桜の花の下をポタリング(自転車散歩)するのが楽しみです(^^)。
昨日の1日1新 IRIS OHYAMA 超静音細密シュレッダーKP4HMSーC
小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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