「休暇をとって、春を感じませんか?」このキャッチコピーはなんでしょうか。
春に年次有給休暇の取得促進するために厚生労働省がポスターとリーフレットで呼びかけているものです。
都心などの「密」をさけて、休暇をとって郊外で春を感じてみてはいかがでしょう?
【年次有給休暇の取得率】政府目標70%に対して2019年56.3%にすぎない
年次有給休暇を十分には取得できていないという方は、まだまだたくさんいます。
政府目標の年次有給休暇の取得率は70%です。
年次有給休暇の取得率は70%未満の方は率先して、休暇をとってしまいましょう!
年次有給休暇の「計画的付与」
年次有給休暇の計画的付与制度とは、年次有給休暇の付与日数のうち5日を除いた残りの日数のすべての休暇取得日を計画的に割り振る制度です。
たとえば昨年度取得できずに繰り越された年次有給休暇が10日残っていて、今年度に新たに20日発生したとします。
この年次有給休暇30日のうち5日を除いた最大25日が計画的付与できる制度です。
計画的に割り振ることで年次有給休暇を取得しやすくなることは良いのですが、自分で自由に決めて休める休暇が1年のなかで5日しかないのでは、きゅうくつではないでしょうか?
年次有給休暇の計画的付与を実施するためには、就業規則に規定を定めた上で、従業員の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者との間で、労使協定(書面による協定)を締結することが必要です。
労働者代表(従業員の過半数代表)と話し合って、「計画的付与」日数が多くなりすぎないように働きかけましょう。
労使協定で定める事項 | 内容 | |
---|---|---|
1 | 計画的付与の対象者 | 計画的付与の時季に育児休業や産前産後の休業に入ることが分かっている者や、定年などあらかじめ退職することが分かっている者については、労使協定で計画的付与の対象から外しておきます。 |
2 | 対象となる年次有給休暇の日数 | 年次有給休暇のうち、少なくとも5日は労働者の自由な取得を保障しなければなりません。したがって、5日を超える日数について、労使協定に基づき計画的に付与することになります。 |
3 | 計画的付与の具体的な方法 | ・事業場全体の休業による一斉付与の場合には、具体的な年次有給休暇の付与日を定めます。 ・グループ別の交替制付与の場合には、グループ別の具体的な年次有給休暇の付与日を定めます。 ・年次有給休暇付与計画表による個人別付与の場合には、計画表を作成する時期とその手続き等について定めます。 |
4 | 年次有給休暇の付与日数が少ない者の扱い | 事業場全体の休業による一斉付与の場合には、新規採用者などで5日を超える年次有給休暇がない者に対しては、次のいずれかの措置をとります。 ・一斉の休業日について、有給の特別休暇とする。 ・一斉の休業日について、休業手当として平均賃金の60%以上を支払う。 |
5 | 計画的付与日の変更 | あらかじめ計画的付与日を変更することが予想される場合には、労使協定で計画的付与日を変更する場合の手続きについて定めておきます。 |
年次有給休暇の「時間単位」取得
年次有給休暇の取得促進にどのくらい効果があるのかわかりませんが、「時間単位」で取得することもできます。
用事があって1時間だけ早く帰りたいというときなど「時間単位」で年次有給休暇を取得できると便利なので、取得率向上とは別に制度ができると助かります。
終業時刻より1時間なり2時間なり早く帰ってしまえば「残業」できなくなりますので、残業できない用事がある日(あるいは残業したくない日)に使うのもオススメです。
年次有給休暇の「計画的付与」と同じように、就業規則に規定を定めた上で、従業員の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者との間で、労使協定(書面による協定)を締結することが必要です。
労使協定で定める事項 | 内容 | |
---|---|---|
1 | 時間単位年休の対象者の範囲 | 対象となる労働者の範囲を定めます。 仮に、一部の者を対象外とする場合には、事業の正常な運営を妨げる場合に限られます。 「育児を行う労働者」など、取得目的などによって対象範囲を定めることはできません。 |
2 | 時間単位年休の日数 | 1年5日以内の範囲で定めます。 |
3 | 時間単位年休1日分の時間数 | 1日分の年次有給休暇が何時間分の時間単位年休に相当するかを定めます。 1時間に満たない端数がある場合は時間単位に切り上げてください。 (例)所定労働時間が1日7時間30分の場合は8時間となります。 |
4 | 1時間以外の時間を単位として与える場合の時間数 | 2時間単位など1日の所定労働時間を上回らない整数の時間を単位として定めます。 |
【編集後記】
有給休暇。本来いつ休むかなぜ休むかは労働者の自由です。
計画的に割り振って休暇をとる「年次有給休暇の計画的付与制度」は行き過ぎてしまっては、労働者の休暇取得の自由がせばめられてしまいます。
あまりに窮屈な制度とならないように労働者代表(従業員過半数代表)を通じて歯止め(制限)をかけましょう。
小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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