あなたが自発的に退職するようにと、会社が【退職勧奨】することはある程度であれば認められます。
しかし、退職勧奨も限度を超えると違法な【退職強要】となります。
「内向型」タイプの労働者の方にとっては特に辛くて耐えられないと感じているでしょう。
退職勧奨、退職強要のちがいを知りましょう。
そして「内向型」タイプの労働者のあなたに向いている、退職強要への対応策があることも知っていただければと思います。
Contents
【退職勧奨】会社が一定の限度で行なうなら認められる
あなたが会社で働くということは、あなたと会社が労働契約を結んだということです。
労働契約法6条(労働契約の成立)
労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。
成立している労働契約を解消したいと会社側が考えた場面の話です。
・君、ここを辞めて別の会社で働いてみたらどうかな?
・君、ここを退職してほしいんだ。退職してくれ。
こんなことを言われたらショックですよね。
しかし、まずは会社があなたに言った話の意味を確認する必要があります。
先ずは、解雇通告なのか、退職勧奨にすぎないのか、会社(使用者)に確認する必要があります。
その上で、どのように対処するかを検討することになります。
こちらの記事で紹介しました。「“君、辞めてもらうよ。”と会社から言われたら、やるべきこと。(期間の定めのない労働契約の終了の3つのパターン)」
<会社(使用者)>があなた(労働者)に
Q.あなたを解雇すると通告しているのか?(解雇通告?)
Q.あなたから会社を辞めますと言ってほしいのか?(辞職を誘っている?)
Q.あなたに労働契約の解約に合意してくれるようにと申し込んでいるのか?(合意解約の申込み?)
【解雇】使用者からの一方的な労働契約の解約
解雇は、会社(使用者)からの一方的な労働契約の解約です。会社があなたを解雇すると通告すると労働契約が終了します。
あなた(労働者)が承諾するかどうかは関係ありません。
しかし、会社があなた(労働者)との労働契約を一方的に解約するという解雇は法律で大きく制限されています。
労働契約法16条(解雇)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
【辞職】労働者からの一方的な解約
あなたが辞職するように誘っている(誘引)場合は、あなたが“辞めます”と言う(または退職届を出す)と労働契約が終了します。
辞職は、あなた(労働者)からの一方的な解約です。
会社(使用者)が承諾するかどうかは関係ありません。
1年間だけ3年間だけなど期間の定めがある労働契約でない場合、つまり期間の定めのない労働契約で、労働者が辞めるのは自由です。
会社の承諾(承認・許可など)はいりません。“辞めます”と通告するだけで辞められます。
民法627条によって2週間の予告期間が必要です。
民法627条
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
あなた(労働者)は会社(使用者)に対して、辞める2週間前に労働契約を解約する意思表示が到達することが必要です。
こちらの記事で紹介しました。
「退職は意思表示だけでOK。退職代行はいらない。」
民法627条では、あなた(労働者)も会社(使用者)もどちらも2週間前に申し入れることで労働契約を終了できることになっていますが、判例法理をふまえた労働契約法16条をはじめ他の法律による規制もあり、会社(使用者)が一方的に労働契約を終了する解雇は大きく制限されています。
【合意解約】どちらから申し込んでも相手が合意すれば労働契約が解約されます
使用者・労働者のどちらかが相手方に対して労働契約を解約を申し込み相手方が承諾すると労働契約の解約が成立します。
労働契約の解約契約が成立すると労働契約が終了します。
私たちは自由主義社会で生活しています。原則として自由に契約をすることができます。契約を解除するという契約も同じです。
自由主義という憲法の理念のもと、契約の自由の原則が当てはまります。
労働契約も同じです。
会社はあなたに【退職勧奨】はできる
・君、ここを辞めて別の会社で働いてみたらどうかな?
・君、ここを退職してほしいんだ。退職してくれ。
こんなことを言われたあなたはショックでしょう。ショックを受けるのは当たり前のことです。
しかし、会社があなたに退職勧奨すること自体は違法ではありません。
自由主義社会で、対等な立場の相手に対して自分の意思を伝えて合意を得ようとすることは悪いことではないからです。
もちろん、あなたの自由な意思を無視して自分の意思を強制することが許されないのは当然のことです。
退職勧奨を受け入れて退職するのも、退職勧奨を拒否して退職しないで働き続けるのも、どちらでもあなたが自由に選べることが前提です。
あなたが退職勧奨を拒否して退職しないで働き続けると決めて、そのことを会社に伝えたのに、そのあともシツコク「退職勧奨」を続けてきた場合は、もはや退職勧奨とは言えません。それは違法なことです。
限度を超えた違法な「退職勧奨」を退職強要と言います。
【退職強要】一定の限度を超えたら退職勧奨ではない、退職強要は違法
・君、ここを辞めて別の会社で働いてみたらどうかな?
・君、ここを辞めてほしいんだ。辞めてくれるかな?
密室に閉じ込めて辞めるというまで帰さないぞとおどしたりするのは論外で違法なことですが、
あなたの自由な意思と人格を尊重して限度をわきまえた範囲内での退職勧奨であれば、会社があなたに退職を勧めること自体は違法なことではありません。
しかし、あなたが退職しないで働き続けると決めて退職勧奨を拒否し、そのことを会社に伝えたのに、そのあとも「退職勧奨」を続けてきた場合は、もはや退職勧奨とは言えません。それは違法なことです。
限度を超えた違法な「退職勧奨」を退職強要と言います。
退職強要は違法なことであり、許されることではありません。
退職勧奨について
解雇と間違えやすいものに退職勧奨があります。退職勧奨とは、使用者が労働者に対し「辞めてほしい」「辞めてくれないか」などと言って、退職を勧めることをいいます。これは、労働者の意思とは関係なく使用者が一方的に契約の解除を通告する解雇予告とは異なります。
労働者が自由意思により、退職勧奨に応じる場合は問題となりませんが、使用者による労働者の自由な意思決定を妨げる退職勧奨は、違法な権利侵害に当たるとされる場合があります。
なお、退職勧奨に応じて退職した場合には、自己都合による退職とはなりません。
労働契約の終了に関するルール 厚生労働省
「内向型」タイプの労働者は【退職強要】にどう対抗する?
退職勧奨に応じないことを伝え、退職勧奨面談には応じないことを伝える
退職勧奨に応じないことを伝えて退職勧奨面談には応じないことを伝えたあとの「退職勧奨」は、退職勧奨ではなく「退職強要」であり違法です。
先ずは、退職勧奨に応じないこと、退職勧奨面談には応じないことを伝えましょう。
そして、記録に残る形で伝えましょう。
将来、言った言わないの水掛け論になると「内向型」タイプのあなたは傷つきます。最初に手をうちましょう。
内容証明郵便などで退職勧奨・退職強要を止めるように通告するのは、はっきりした証拠になるので良い方法です。
しかし、相手の主張に対して自分の考えを強く出して主張するのが得意ではない「内向型」労働者のあなたには、正面突破のカウンター(対向)型の方法が取りづらいということがあるかもしれません。
もしも、あなたが正面突破のカウンター(対向)型の方法が取りづらいのでしたら、他にもさまざまなやり方があります。
労働局や労働委員会による「あっせん」で解決する
「内向型」タイプの労働者の方の場合は会社に直談判して正面突破で戦うのは嫌だと考えるかもしれません。
もしもあなたが、会社と直接やりとりして解決するのを望まないのでしたら、あなたと会社の間に立ってそれぞれの話を聞いて調整して、第三者として解決の案を出してもらうのはどうでしょう?
労働局や労働委員会による「あっせん」で解決する方法です。
厚生労働省の機関で都道府県別にある労働局や都道府県の労働委員会(東京都、兵庫県、福岡県は個別労働関係紛争は取り扱っていません)といった公的機関による「あっせん」で解決する方法があります。
紛争調整委員が調整した上で、会社とあなたが希望すれば具体的な解決案(あっせん案)を作ってくれます。
あっせん委員は弁護士、大学教授、社会保険労務士などの労働問題の専門家です。
もちろん、「あっせん」を依頼(申請)したら会社に伝わりますが、労働問題の専門家(紛争調整委員)があなたと会社の間に入って、調整を進めて解決をめざします。
紛争調整委員があなたと会社のそれぞれから別々に話を聞きますので、
あなたが会社側と直接話しをしなくても調整が進みますので安心してください。
あなたからの依頼を受けて特定社会保険労務士があっせん代理人として話し合いをすすめることができます。
労働局紛争調整委員会によるあっせん
労働局紛争調整委員会によるあっせんの特徴 |
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紛争当事者の間に労働問題の専門家が入り、双方の主張の要点を確かめ、調整を行い、話し合いを促進することにより、紛争の解決を図ります。(利用は無料です。) |
裁判に比べ手続きが迅速かつ簡便です。 |
弁護士、大学教授、社会保険労務士などの労働問題の専門家である紛争調整委員が担当します。 |
あっせんの手続きは非公開であり、紛争当事者のプライバシ―が保護されます。 |
制度に関する問い合わせ・申込みは総合労働相談コーナーで受付ています。 |
紛争調整委員会によるあっせん 厚生労働省
【編集後記】
「退職強要」。執拗に辞めろと迫られて耐えられない「内向型」労働者のあなた。
公的機関である労働局や労働委員会による「あっせん」で退職強要の問題の解決をめざす方法があることを知っておいていただければと思います。
小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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