2019年に全国の労働局や労働基準監督署が外国人技能実習生の実習実施者に対して監督指導を実施した結果が公表されました。(2020年10月9日厚生労働省)
2015年〜2010年の過去5年すべてで労働基準関係法令違反が70%を超えています。
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外国人技能実習の労働基準関係法令違反。過去5年すべて監督指導実施した事業場の70%超
2019年に全国の労働局や労働基準監督署が外国人技能実習生の実習実施者に対して監督指導を実施した結果が公表されました。(2020年10月9日厚生労働省)
9,455事業場(実習実施者)のうち6,796事業場(71.9%)で労働基準関係法令違反が見つかっています。
2015年(平成27年)の5,173件から2019年(平成31年・令和元年)では9,455件へ、監督指導を実施した事業場数は年々増加しています。
しかし、監督指導の実施を増やしたから労働基準関連法令の違反数が増えただけなのではありません。
2015年〜2019年のどの年でも、外国人技能実習生の実施事業者の70%を超えて労働基準関係法令に違反していたのです。
外国人技能実習の労働基準関係法令違反ワースト3。労働時間、安全基準、割増賃金支払
2019年の外国人技能実習の労働基準関係法令違反ワースト3は、労働時間、安全基準、割増賃金支払です。
- 労働時間(21.5%)
- 使用する機械に対して講ずべき措置などの安全基準(20.9%)
- 割増賃金の支払(16.3%)
2019年【外国人技能実習生の実習実施者】労働基準関係法令違反の事例。労働時間、安全基準、割増賃金支払
「技能実習生の実習実施者に対する監督指導、送検等の状況(平成31年・令和元年)」を読むと、外国人技能実習生の労働実態がみえてきます。
労働基準関係法令違反ワースト1【労働時間】の監督指導の事例
36協定(サブロク協定・労働基準法36条にもとづく法定時間外労働にかんする協定)の上限時間をこえて、月100時間超の時間外労働が行われていた事業場の事例です。
違法な時間外労働の是正勧告と時間外・休日労働時間の削減の指導が行われた。
指導の結果、違法な時間外・休日労働が解消され、長時間労働が削減しました。
労働基準関係法令違反ワースト2【安全基準】の監督指導の事例
水産食料品製造業の事業場で、技能実習生が作動中のスライサーの材料投入口に手を入れて指を骨折した労働災害(業務災害)が発生しました。
- 機械の掃除などの際には機械の運転を停止するように是正勧告がされた。
- 作業手順書を作成し、技能実習生に安全に関する教育をするように指導が行われました。
指導の結果、技能実習生の母国語で作業手順書が作成され、安全教育が実施された。
日本語と技能実習生の母国語で注意を喚起するシールをスライサーの投入口に貼り、掃除・調整の際に機械の運転停止が徹底されました。
労働基準関係法令違反ワースト3【割増賃金支払】の監督指導の事例
賃金未払いの情報提供に基づいて夜間に内偵を実施した後で立入調査を行なった。
事業主は労働基準法違反を否定したものの、夜間内偵で確認した事実を示したことで割増賃金不払いを事業主が認めました。
不払いの割増賃金の支払いを是正勧告された。
労働時間を適正に把握するように指導が行われました。
不払いの割増賃金2年分が技能実習生全員に支払われた。
タイムカードで客観的に労働時間を把握することになりました。
外国人労働者の働かせられ方がおかしい?と思ったときにできること
監督指導実施する事業場にかかわらず労働基準関係法令違反が70%超で見つかっています。
外国人技能実習生の70%超が労働基準関連法に違反した労働条件下で働かされていると考えてもいいのかもしれません。
国籍が日本か外国か、名前が技能実習生だろうと給料を受けとって生活する同じ労働者です。
あなたや家族や大切な人も外国に出稼ぎにいく時代がくるかもしれません。
そのときはあなた自身・あなたの大切な人が外国人労働者です。
あなたが働く職場、取引先業者の工場、利用しているお店。
外国人労働者の働かせられ方がおかしいことに気がついたら、どうしたらいいでしょう?
労働基準関係法令の適用に国籍は関係ありません。
労働基準法など日本人でも外国人でも同じく適用されます。
外国人だから労働基準法違反の賃金・労働条件で働かせていいわけがないのです。
労働基準法9条
この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
労働基準法をはじめ、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法、職業安定法など、労働基準関連法令は日本人だけでなく外国人にも適用されます。
労働基準法3条(均等待遇)
使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。
外国人労働者を日本人労働者と差別した労働条件で取り扱うことは法律で禁止されています。
たとえば、仕事や通勤でケガをすれば労災保険から給付を受けられるのは、外国人も日本人も同じです。
東京都は『外国人労働者ハンドブック(英語版)』を作成しています。
見開きで左ページに英語、右ページに日本語で労働基準法などの労働法が解説されたものです。
毎日働いていて休みをとっているのか心配だ・・・という方がいたら、
休日や年次有給休暇のページを開いて右ページの日本語を読んでみます。まずは日本語で内容を理解します。
そして、英語の左ページで該当する部分を指差して、外国人労働者の方に読んでもらいましょう。
見開きで英語と日本語で労働法を解説していますので、あなたが英語を話せなくても大丈夫です。
東京都発行『外国人労働者ハンドブック(英語版)』で外国人労働者の役に立とう。
外国人だからといって、英語を読み書きできる方ばかりではありません。
英語のハンドブックで伝わらない方でしたら、英語以外の言葉で労働問題を相談できる労働条件相談ほっとラインを紹介することもできます。
厚生労働省から委託を受けて無料で労働相談を受けている「労働条件相談ほっとライン」は日本語以外に13ヶ国語対応しています。
「外国人労働者の方がひどい条件で働いているのを見ているが、直接やりとりするのはちょっとできない。」
それでしたら、労働基準監督署に通報(情報提供)するのも1つの手かと。
【編集後記】
iPhone 12 が発表されました。
iPhone SE よりも小さいのに、ディスプレイは SE よりも大きいiPhone 12 mini が私は気になるところです。
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小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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