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会社が「禁止」していた行為によって発生した事故によるケガでも、労災(労働災害)になる
トラックで1日数十カ所へ配達をしている方が、荷物を取り出すために荷台に乗りました。
配達件数が多く、急いでいたため、荷台から降りるときに飛び降りたところ、着地が悪く足を骨折してしまいました。
療養のため1ケ月くらい仕事を休む必要があると医者から言われたので、医療費(療養補償給付)と休む間の給料の代わりとなるお金(休業補償給付)を受け取るために、労災申請してほしいと会社に言いました。
トラックの荷台から飛び降りるとケガすることがあるので、会社は“飛び降り禁止”として社員に通達していたのに、違反してケガしたのだから労災にはならない、と会社に言われてしまいました。
会社が禁止していた行為をしたことでケガをしてしまったこの方は、労災にならないのでしょうか。
結論を言うと、労災保険から療養補償給付(医療費)と休業補償給付(療養で休む日の生活補償)を受けることができます。
労災申請しましょう!
労災保険から給付を受けられないのは、給付を受けるためにわざと事故を起こしたという場合です。
労働者災害補償保険法 電子政府の総合窓口 e-Gov[イーガブ]
第十二条の二の二 労働者が、故意に負傷、疾病、障害若しくは死亡又はその直接の原因となつた事故を生じさせたときは、政府は、保険給付を行わない。
この方は、ケガをしようと思っていたわけでもありませんし、ケガをして労災保険から給付を受けようと思っていたわけではありません。
したがって、労災保険から給付が受けられます。
労働者災害補償保険法 電子政府の総合窓口 e-Gov[イーガブ]
第十二条の二の二
2項
労働者が故意の犯罪行為若しくは重大な過失により、又は正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、負傷、疾病、障害若しくは死亡若しくはこれらの原因となつた事故を生じさせ、又は負傷、疾病若しくは障害の程度を増進させ、若しくはその回復を妨げたときは、政府は、保険給付の全部又は一部を行わないことができる。
故意の犯罪行為か重大な過失によってケガをしたり事故の直接の原因となった場合には、労災保険からの給付が一部制限されます。
具体的には、労働基準法、安全衛生法、道路交通法等の法令における危害防止に関する規定であって罰則の付いているものに違反した行為があり、そのことが災害や事故の直接の原因となっている場合には、休業(補償)給付、傷病(補償)年金、障害(補償)給付、について30%支給制限されます。
この方が、仕事を急いでいてトラックの荷台から飛び降りたことは、故意の犯罪行為ではありませんし、重大な過失でもありません。
労災保険からの給付は一部であっても制限されません。労災保険からの給付を制限なく全部受けられます。
参考文献:『実務者のための労災保険制度Q&A―労災保険の疑問を裁判例などで専門家が解説します』
労災隠しは犯罪です。労災が発生した場合、会社は労災申請を手助けする義務もあります。
会社は労災申請をする労働者を手助けする義務がある
会社が「禁止」していた行為によって発生した事故によるケガだということを理由にして、会社が労災保険の申請に協力しないのは違法です。また、労災保険の申請するための書類に会社が証明をしないことも違法です。
労働者災害補償保険法施行規則 電子政府の総合窓口 e-Gov[イーガブ]
(事業主の助力等)
第二十三条 保険給付を受けるべき者が、事故のため、みずから保険給付の請求その他の手続を行うことが困難である場合には、事業主は、その手続を行うことができるように助力しなければならない。
2 事業主は、保険給付を受けるべき者から保険給付を受けるために必要な証明を求められたときは、すみやかに証明をしなければならない。
労災隠しは犯罪です。労働者が死亡や休業を伴う労災が発生した場合、会社は労働者私傷病報告を労働基準監督署に提出する義務があります。
会社が労働者私傷病報告を労働基準監督署に提出しないこと、虚偽の報告をすることは“労災隠し”であり、犯罪です。
労働安全衛生規則 電子政府の総合窓口 e-Gov[イーガブ]
労働者死傷病報告)
第九十七条 事業者は、労働者が労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒により死亡し、又は休業したときは、遅滞なく、様式第二十三号による報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
2 前項の場合において、休業の日数が四日に満たないときは、事業者は、同項の規定にかかわらず、一月から三月まで、四月から六月まで、七月から九月まで及び十月から十二月までの期間における当該事実について、様式第二十四号による報告書をそれぞれの期間における最後の月の翌月末日までに、所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
【編集後記】
仕事が忙しくてもケガをしてしまっては、あなた自身が困ります。
車の運転をする仕事であれば、他人の生命や身体を侵害してしまう危険性もあります。
あなた自身のため、また、他人の安全のためにも、無理な仕事をしないように労働環境を整える必要があります。
労災が再発しない職場づくりをするためにも、労災が発生した場合は、労災申請をしましょう。
昨日の1日1新:DAHON K3
ベストスポーツマルイ新宿店 で、見てきました。
7.8Kgで3段変速のフォールディングバイク(折りたたみ自転車)。
これなら軽くてギアもあるので、電車に乗せてどこでも出かけて自転車で移動できるかもしれません。14インチのタイヤはあまりにも小さくてこれで道路を走れるのか、試乗できれば安心なのですが。
小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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