自分は内向型だから何をされても言い返せない・・・。
「内向型」労働者の方からの労働相談でよく聞く言葉です。
しかし、内向型労働者はけっして弱いわけではありません。本人がそう思っているかは別なのですが。
大演説は尻込みしてしまうかもしれませんが、内向型のあなたも道理の通らないことにNo!と言うことはできます。
1人の「内向型」労働者の一言が、より良いアメリカへと導く第一歩となった歴史をご存知でしょうか?
「内向型」労働者のローザ・パークスのひとことが、全米に広がる公民権運動のはじまりになったのです。
Contents
「内向型」労働者【ローザ・パークス】のひとことが、全米に広がる公民権運動のはじまりとなった
当時、アラバマ州はじめアメリカ南部諸州にはジム・クロウ法(Jim Crow laws)と呼ばれる人種分離法が施行され、あらゆる場所で黒人と白人は隔離されていた。
公共交通機関のバスでも人種隔離が実施され、黒人席と白人席は制度上明確に分けられていた。
1955年12月1日18時ごろ、当時42歳のローザは、百貨店での仕事を終えて帰宅するため市営バスに乗車した。
白人専用の席はバスの前方にあり、その次の列から後方が黒人の席だったが、運転手は境界を後方に移動することができた。
法にはなかったが、白人の座席が足りないときは境界を移動して、黒人を立たせるのが習慣だった。
ローザは黒人席の最前列に座っていたが、次第に乗車して来る白人が増え、立って乗車せざるを得ない白人も出てきた。
このため、運転手ジェームズ・ブレイク(英語版)は境界を一列ずらし、座っていた黒人4名に立つよう命じる。
3名は席を空けたが、ローザは立たなかった。
ブレイクがローザのところにやって来て「なぜ立たないのか」と詰問し席を譲るよう求めたが、ローザは「立つ必要は感じません」と答えて起立を拒否した。
ローザ・パークス 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
『内向型人間の時代』(スーザン・ケイン著)は、ローザ・パークスの話ではじまります。
P3の途中から
運転手が白人に席を譲れと彼女に命令した。
そのときパークスが発した一言は、全米に広がる公民権運動の契機となり、より良いアメリカを導く第一歩となったのだ。
その言葉は「ノー」だ。
公民権運動で有名な黒人の活動家といえばキング牧師がすぐに思い浮かぶでしょう。
力強い目、抑揚のある響く声、堂々とした態度、典型的な外向型タイプです。
白人に席を譲れと運転手に命令されて「ノー」と答えた女性ローザ・パークスも
キング牧師のような外向型タイプだったのでしょうか?
そんなことはありません。彼女は、臆病で内気で物静かな内向型タイプの労働者でした。
「内向型」労働者、ローザ・パークスの発した一言がより良いアメリカへの第一歩となったのです。
ローザ・パークスは、たとえバスいっぱいの乗客から睨まれてもびくともしないような、大胆な性格の堂々とした女性だろうと、私は思い込んでいた。
だが、2005年にパークスが92歳で亡くなったとき、たくさん出た追悼記事はどれも、静かな語り口のやさしい女性で小柄だったと書いていた。
記事は彼女を「臆病で内気」だが「ライオンのごとく勇敢」としていた。
「徹底した謙虚さ」と「静かなる不屈の精神」という言葉があちこちで見かけられた。
『内向型人間の時代』P4 スーザン・ケイン
「内向型」労働者のあなたはペラペラしゃべる必要はない。納得できないことにはNo!と言う
パークスが市条例違反で罰金刑を宣告された日の午後、モンゴメリー向上協会が町一番の貧困地域にあるホルトストリート・バプテスト教会で集会を開いた。
パークスの勇気ある孤独な行動を支持する5000人が集まった。
教会内から人が溢れ、外の人々はラウドスピーカーから流れる声に耳を傾けた。マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師が
「鉄のごとき弾圧に踏みつけにされるのを終わりにするときが来た。七月の太陽の照る人生から押しだされて、冷気が肌を刺す一一月の高山に取り残されるのを、終わりにするときが来たのだ」と群集に語りかけた。
キング牧師はパークスの勇気を称え、彼女を抱きしめた。
彼女はただ黙って立っていたが、それだけで群集を活気づかせた。
この集会はその後381日間も続く市営バスのボイコット運動へとつながった。
『内向型人間の時代』P4 スーザン・ケイン
自分は「内向型」だから何をされても言い返せない・・・。
内向型労働者の方からの労働相談でよく聞く言葉です。
内向型だから、(内向型とは別の区別ですが)内気だから、
No!と言えない、何をされても言い返せないわけではありません。
キング牧師のスピーチを動画で見たことがある人にいるでしょう。
「 I Have a Dream 」(私には夢がある)で有名なスピーチは何度見ても私は感動します。
キング牧師については、こちらの記事で紹介しています。
キング牧師暗殺から今日で50年。“マーティン・ルーサー・キングって誰”なら、映画を観てみてみましょう
しかし、だれもが外向型のキング牧師のようになる必要はないのです。
381日間も続く市営バスのボイコット運動、公民権運動でより良いアメリカへと導く第一歩となったのは、
「内向型」労働者のローザ・パークスの「ノー」だったのです。
ローザ・パークスの勇気ある孤独な行動を支持する5,000人が集まった集会で、キング牧師は演説で人々を激励しましたが、ローザ・パークス本人はただ黙って立っていただけで群集を活気づかせました。
道理が通らないことに対してバスの中でたった1人で「ノー」と言った彼女は、
集会では黙って立っていただけでした。
内向型のローザ・パークスはキング牧師のように外向型になることではなく、
内向型で臆病で内気なまま道理が通らないことに対してたった1人で「No!」と言いました。
だから、あなたも内向型の性格のままで道理が通らないことには「No!」と言えばいいのです。
「内向型」労働者のあなたは、労働問題・働く上でのトラブルに遭ったら労働局や労働委員会のあっせんで解決をめざす
コロナ関連で会社が休業した期間の賃金が払われていないどころか休業手当すら払われない
理不尽な解雇をされた。
不当に賃金をさげられた。
残業手当が一部しか払われていない。
まずは、会社に「No!」といいましょう。
コロナ問題で営業縮小して休業したことは給料を払わなくてよいことにならないので未払い給料全額支払うよう求める。
解雇は不当だから取り消すことと給料を払うことを求めます。
不当な賃下げだから認めないので、いままでの給料を払うことを求める。
未払い残業代と法定金利をあわせて支払うことを求める。
証拠となるように文書で求めます。
コピーをとっておいて、だれにどのように渡したのか、文書を提出した年月日時分も文書のコピーにメモを残します。
Mailの場合は送信日時・送信先アドレスなどのヘッダー情報などもいれて印刷して残します。
会社に求めて解決できればそれで安心ですが、
話し合いが平行線で進展しない、会社が一方的な主張で話し合いにならない場合は別の対応が必要になります。
もうこれ以上は会社と直接やりとりするのは耐えられなければ、会社とあなたとの間に第3者にはいってもらって解決をめざす方法があります。
厚生労働省の労働局の「あっせん」による解決がその1つです。
弁護士、大学教授等の労働問題の専門家である学識経験者があっせん委員となって紛争解決に向けてあっせんをします。
あなたが会社側の人と直接やりとりすることなく、あっせんは進みます。
あっせん委員は会社側とあなた、それぞれ別々にやりとりします。
申請からあっせん当日のあっせん委員とのやりとりと和解契約の締結まで、依頼を受けて特定社会保険労務士があなたの代理人としてあっせんの手続きを行なうことができます。
何度もやりとりをして事実を認定していく裁判とちがい、あっせんの実施は1回で終わりますので事前準備がより大切です。
依頼を受けた特定社会保険労務士は、あなたの話をきいて問題点を整理した上であっせん申請書を作成して提出することができます。
「内向型」労働者が労働問題・会社とのトラブルを解決する方法としての「あっせん」について、こちらの記事で紹介しています。
「内向型」労働者へお勧めしている労働局・労働委員会「あっせん」。対象となる紛争は何?
【不当解雇】内向型タイプで会社に直接抗議ツライなら労働局「あっせん」利用しましょう
【編集後記】
あなたは内向型だから、内向型なりの独自の交渉力を備えている――それはあまり目立たないかもしれないが、力強さの点で他人にひけをとらない。
おそらく、あなたは誰よりも準備を重ねているはず。
語り口は静かだが、しっかりしている。考えなしにしゃべることはまずない。
柔らかい物腰を保ちながらも力強く、時には攻撃的とさえ思える立場に立って、理路整然と話す。
そして、たくさん質問をし、答えに熱心に耳を傾ける。これはどんな性格かにかかわらず、交渉に強くなる秘訣なのだ。
『内向型人間の時代』P13 スーザン・ケイン
自分自身のエネルギーが少なくなってしまったときに、どうすることでエネルギーを充填できるか?で内向型か外向型か分かれます。
外向型なら大勢で集まって騒いで盛り上げてエネルギーが回復されます。
内向型なら静かに1人の時間を過ごすことでエネルギーが回復されます。
<「内向型」労働者のための社労士>である私(特定社会保険労務士・小倉健二)自身も内向型タイプです。
つかれてエネルギーが少なくなったときには、木や緑が多い自然のなかで1人静かに歩いたり自転車で走って汗をかくとエネルギーが満ちて元気になります。
私は内向型なのに、交渉ごとになると引っ込み思案ではなく、力強く・理路整然と主張するのはなぜなんだろう?
不思議に感じてもいたのですが、内向型だからこそ交渉ごとが得意なんだと『内向型人間の時代』(スーザン・ケイン)を読んで納得したしだいです。
「内向型」労働者のあなたも読んでみてはいかがでしょう。
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小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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