賃金以外の男女差別は労基法で禁止されていないから、賃金以外の男女差別は違法ではない?

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最近聞くことが少なくなったものの「労働基準法に定めがないことなら、違法にならないから大丈夫」という話がまだあります。
「労働基準法で禁止されている男女差別は賃金だけだから、賃金以外の労働条件なら男女差別しても違法ではない」と言われた。こんなときはどう考えたら良いのでしょうか?

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Q&A 賃金以外の男女差別は労基法で禁止されていないから、他の労働条件での男女差別は違法ではない?

Q.労基法では4条で女性であることで賃金差別を禁止しているが、賃金以外の差別は禁止していない。賃金以外の労働条件であれば男女差別をしても法律に違反しないのか?

A.そもそも性別により差別されないはことは日本国憲法で保障されている人権です。賃金以外の労働条件でも女性であることを理由にした差別は認められません。また、賃金以外の労働条件での男女差別は男女雇用機会均等法で禁止されています。

労働基準法4条(男女同一賃金の原則)

労働基準法4条で、女性であることを理由にした賃金差別を禁止しています。

労働基準法4条(男女同一賃金の原則)

使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。

労働基準法119条

次の各号のいずれかに該当する者は、6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

1号 第3条、第4条、第7条、第16条、第17条、第18条第1項、第19条、第20条、第22条第4項、第32条、第34条、第35条、第36条第6項、第37条、第39条(第7項を除く。)、第61条、第62条、第64条の3から第67条まで、第72条、第75条から第77条まで、第79条、第80条、第94条第2項、第96条又は第104条第2項の規定に違反した者

労働基準法では女性差別について4条で賃金差別を禁止していますが、賃金以外の労働条件については女性差別を禁止する規定はありません。

しかし、そもそも憲法14条1項で政治的、経済的または社会的関係において性別による差別が禁止されています。
女性であることだけを理由としたに差別は不合理な差別ですから民法90条(公序良俗)に反し認められません。

「労働基準法に定めがないことなら、違法にならないから大丈夫」という話を聞くことが今でもありますが、そもそも考え方・思考の前提そのものが誤っています。

日本国憲法14条1項

すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

民法90条(公序良俗)

公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

女性であることを理由にした賃金の差別はひどかったために罰則をもって労働基準法で特に禁止したのですから、他の労働条件での男女差別を認めるための条文ではないことは当然です。また、賃金以外の労働条件での男女差別は男女雇用機会均等法で禁止されています。

男女雇用機会均等法で賃金以外の労働条件の不合理な差別を禁止している

賃金以外での労働条件については、性別による明確な禁止が労働基準法ではありませんが、男女雇用機会均等法では性別による賃金以外での労働条件の差別が禁止されています。

性別を直接の理由とした差別ではなくても、実質的には性別を理由とする差別となるおそれがある措置として厚生労働省令で定めるものについても男女雇用機会均等法で禁止されています。

男女雇用機会均等法違反の差別的取り扱いについて、労働局に調停を求めることもできます。

男女雇用機会均等法5条6条(性別を理由とする差別の禁止)

5条 事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。

6条 事業主は、次に掲げる事項について、労働者の性別を理由として、差別的取扱いをしてはならない。

1号 労働者の配置(業務の配分及び権限の付与を含む。)、昇進、降格及び教育訓練

2号 住宅資金の貸付けその他これに準ずる福利厚生の措置であつて厚生労働省令で定めるもの

3号 労働者の職種及び雇用形態の変更

4号 退職の勧奨、定年及び解雇並びに労働契約の更新

男女雇用機会均等法7条(性別以外の事由を要件とする措置)間接差別の禁止

7条 事業主は、募集及び採用並びに前条各号に掲げる事項に関する措置であつて労働者の性別以外の事由を要件とするもののうち、措置の要件を満たす男性及び女性の比率その他の事情を勘案して実質的に性別を理由とする差別となるおそれがある措置として厚生労働省令で定めるものについては、当該措置の対象となる業務の性質に照らして当該措置の実施が当該業務の遂行上特に必要である場合、事業の運営の状況に照らして当該措置の実施が雇用管理上特に必要である場合その他の合理的な理由がある場合でなければ、これを講じてはならない。

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小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)

小倉健二(おぐらけんじ) 労働者のための社労士・労働者側の社労士 労働相談、労働局・労働委員会でのあっせん代理 労災保険給付・障害年金の相談、請求代理 相談・依頼ともに労働者の方に限らせていただいています。  <直接お会いしての相談は現在受付中止> ・mail・zoomオンライン対面での相談をお受けしています。 1965年生まれ57歳。連れ合い(妻)と子ども2人。  労働者の立場で労働問題に関わって30年。  2005年(平成17年)12月から社会保険労務士(社労士)として活動開始。 2007年(平成19年)4月1日特定社会保険労務士付記。 2011年(平成24年)1月30日行政書士試験合格