労災でのケガの療養中に別のケガをしたら労災になるのか?

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労災で療養中にさらにケガをしてしまった。運悪くこんなこともあります。

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労災によるケガの療養中にさらに別のケガをした。労災になるのか?

労災によるケガの療養中にさらにケガをしてしまった。
この2番目のケガは、療養のために休業していた日だった。

2番目のケガは仕事中ではないのですが、このケガも労災になるのでしょうか?

1番目の労災によるケガと同じ部分をケガした場合。
2番目のケガは別の部分の場合。

ケガの場所によって労災と認められるのか認められないのか、結論は変わるのでしょうか。

【同じ部分のケガ】労災の療養中の必要な日常の動作でのケガは労災(1959年10月13日基収第5040号)

労災によるケガを療養中にケガをしてしまった。

このような場合の取り扱いについて、厚生労働省(旧労働省)労働基準局長から通達が出ています。

労災の療養の過程における必要な日常の動作におけるケガであれば、労災との相当因果関係があるので労災となります。

通達では労災による骨折と同じ部分を再骨折した事例について労災であると回答したものです。

【業務上右腓骨を骨折した者が用便後転倒して再骨折した場合】

(質問)被災労働者は、土木工事現場で作業中、岩が倒れてきて右腓骨を不完全骨折し、病院で湿布処置を受けたが、副木固定は必要がないとして、していなかった。その後、被災労働者は、自宅において用便のため松葉杖を使用して土間をへだてた便所へ行き、用便後便所内から石台の上に降り、さらにコンクリート土間へ降りる際、松葉杖が滑ったため転倒し、コンクリート舗装の角で前回の受傷と同一部の右下腿を強打したため、当初の骨折を完全骨折したものである。

(回答) 業務上である。

本件に係る再骨折は、当初の不完全骨折の療養の過程における必要な日常の動作によって当初の骨折部を再骨折したものと認められるから、当初の骨折との間に因果関係の中断がないものと認め、引き続き補償の対象として取り扱われたい。

1959年10月13日基収第5040号

基収とは厚生労働省(旧労働省)労働基準局長が疑義に答えて発する通達のことです。

【別の部分のケガ】労災の療養中の必要な日常の動作でのケガは労災(労働保険審査会裁決2019年労第268号)

通達(1959年10月13日基収第5040号)では、労災による骨折と同じ部分を再骨折した事例について労災であると回答したものですが、最初の労災でのケガとは別の部分のケガでも労災となります。

労働保険審査会の裁決の事例で確認してみましょう。

労働保険審査会は労働保険(労災保険と雇用保険)給付の決定について不服申立について審査し決定(裁決)をする国(国家)の機関です。

労働保険給付の決定についての不服申立は、審査官(労働保険審査官・雇用保険審査官)に対する審査請求、さらに不服があれば労働保険審査会に対する再審査請求、2段階の不服申立てを行なうことができます。

勤務中に転倒したため病院で受診し、「右膝蓋骨骨折、頚部打撲傷」と診断されました。
労災と認められて仕事を休んで療養していました。

療養中のある日、自宅で姿勢をくずして転倒してしまいました。
病院で受診したところ、「右橈骨遠位端骨折」と診断されました。

勤務中にケガしたのは「右膝蓋骨骨折、頚部打撲傷」、あとから療養中に自宅でケガしたのは「右橈骨遠位端骨折」。

ケガした場所が別ですから、通達の事例とはことなります。

労災によるケガをした労働者は、松葉杖を使用することになり、松葉杖を使用しているときにバランスを崩して転倒し、本件傷病が生じたものであるから、旧傷病と本件傷病との間には相当因果関係があると主張しました。

労働保険審査会は業務上の事由による旧傷病のため自宅療養中であったところ、病院から貸与された松葉杖を両腕に使用してトイレに移動しようとした際に、右膝の痛みでふらつきバランスを崩して転倒し、本件傷病を負ったものであると認めました。

家の構造上の欠陥や請求人が泥酔していた等の事情は認められず、療養の過程における必要な日常の動作において、本件傷病が生じたものと認められるから旧傷病と本件傷病との間には相当因果関係がある。したがって、本件傷病は、療養補償給付の対象となると労働保険審査会は判断しました。

労働保険審査会での事例(労働保険審査会裁決2019年労第268号)

平成30年労第268号1

平成30年労第268号2

労働保険審査会「業務上外(平成31年・令和元年裁決)」厚生労働省

労災によるケガの療養中にさらにケガをしてしまった。
この2番目のケガは、仕事中ではなく療養のために休業していた日だった。
労災の療養の過程における必要な日常の動作におけるケガであれば、同じ場所でも別の場所でも労災となりますから、労災申請しましょう。
そして、労災申請して不支給決定が出たら不服申立てができることを知っておいていただければと思います。

【編集後記】

昨日は雷雨もありましたが、土日そして今日とよく晴れています。
土日ともに下のこどもと少し遠くまで歩いてでかけました。
とちゅうで、歩いているお母さんとこどもに会いました。
「ボクは小学生になったら大人?」(こどもの質問)
「こども」(お母さんの答え)
なんで質問しているのかも聞かずにあっさりと「こども」とだけお母さんは答えて会話は終わってしまいましたけど。
小学生になったら大人になれるのかな?という楽しみな感じでこどもが質問していました。
こどもの気持ちってかわいいなぁ。
こどもが楽しみに待てるような大人として生きていきたいなと。
梅雨の晴れ間のできごとでした。

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小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)

小倉健二(おぐらけんじ) 労働者のための社労士・労働者側の社労士 労働相談、労働局・労働委員会でのあっせん代理 労災保険給付・障害年金の相談、請求代理 相談・依頼ともに労働者の方に限らせていただいています。  <直接お会いしての相談は現在受付中止> ・mail・zoomオンライン対面での相談をお受けしています。 1965年生まれ57歳。連れ合い(妻)と子ども2人。  労働者の立場で労働問題に関わって30年。  2005年(平成17年)12月から社会保険労務士(社労士)として活動開始。 2007年(平成19年)4月1日特定社会保険労務士付記。 2011年(平成24年)1月30日行政書士試験合格