労災保険の給付を受ける対象者は「労働者」です。
労災保険の給付を受けることのできる労働者とはどのような方のことをいうのでしょうか。
Contents
労災保険の保険給付は、「労働者」に対して行われます。
No | 労災保険の保険給付の種類 |
---|---|
1 | 労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡。 「業務災害」に関する保険給付 |
2 | 労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡。 「通勤災害」に関する保険給付 |
3 | 二次健康診断等給付 |
労働者災害補償保険法7条
労災保険法での“労働者”とは、労働基準法での労働者のことです。
「労働者」とは?(労働基準法9条 )
労働基準法での労働者とは、
・職業の種類を問わず「事業」に使用される者で、
・賃金を支払われる者のことです。
「使用される者」とは、使用者の指揮命令にしたがって、労働力を提供する者のことです。
「使用者」とは、広い意味では事業のために他人を使用する者のことです。
労働基準法での「使用者」とは、事業主だけでなく、その事業の労働者に関する事項について事業主のために行為する全ての者が含まれます。
労働者とは、「事業」に使用される者。使用者に使用され従属関係にある者をいいます。
事業のために他人を使用する者(広い意味での使用者)との関係で使用従属の関係ということではさまざまな契約関係があります。
雇用契約
請負契約
委任契約
派遣契約
雇用契約以外でも、契約の名称がどのようなものであっても、実態において労働関係があるかどうかで判断することになります。
契約書に請負契約と書いてあるから、労働者ではなく労災保険から給付はされない、という形式的な問題ではありません。
そういえば、牛丼屋のアルバイト店員は業務委託であり、労働者ではないので残業代は発生しないなどとする会社がありました。
牛丼屋のアルバイト店員が労働者でなければ残業代を請求することも労災保険の給付請求もできないことになりますが、もちろん労働者です。
当たり前のことですが、残業代も支払わなければ労働基準法違反ですし、請求すれば労災保険から給付もされます。
労災保険の給付対象者となる労働者の範囲は広い。労働者となる方の例
勤め人、サラリーマンなどは“労働者”となるだろうことはイメージがつきますが、労災保険の給付対象者となる「労働者」の範囲は、とても広いものです。
例 | 説明 |
---|---|
新聞配達人 | 配達部数に応じて報酬を与えているのは、単に賃金の支払形態が請負制となっているだけ。 一般に販売店と配達人との間には、使用従属関係があり、配達人も労働者である場合が通例。児童の新聞配達人も労働者。 |
共同経営の出資者 | 共同経営の事業で出資しながら、働いている者は、事業との間に使用従属関係があり賃金を受けて働いている場合は労働者。 |
業務執行権または代表権を持たない法人の重役 | 工場長、部長の職など重役であっても給料を受ける場合は労働者。 |
労働組合の専従者 | 代表者を除き労働者。 (代表者は中小事業主と同じように特別加入可) |
出向労働者 | 出向先使用者の指揮命令下で業務災害に遭った場合は 出向先使用者の労働者。 |
同居親族 | 同居親族は原則として労働者とならない。 しかし、常時同居の親族以外の労働者を使用する事業で業務に従事し、 (1)事業主の指揮命令に従って業務を行なっていることが明確で、 かつ (2)就労実態がその事業場の他の労働者と同様で賃金も同様である場合は、労働者。 |
大学病院の研修医 | 労働者 |
学生を含むパート・アルバイト | 労働者 |
【編集後記】
労災保険、労働基準法に限らず、「労働者」とはどんな方のことをいうのか?は、裁判を含めた取り組みの中で少しづつ範囲を広げられてきました。
“君は労働者じゃないから、労災保険からお金出ないよ!”と言われて、
“あーそうなんだー”と簡単に納得しないで、調べてみましょう。
今日の1日1新:うえのの森のパンやさん キューブパン
小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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