労災保険法で「通勤」となる3つの種類。

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労災保険法から給付を受けられる事故は大きくは2つ。通勤災害と業務災害。
労災保険法で「通勤」として認められるのは3つの種類があります。
労災保険法で認められる通勤はあなたが思っているより広い範囲かもしれません。

通勤とは

通勤とは、労働者が、就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うこと

通勤の3種類
(1) 住居と就業の場所との間の往復
(2) 厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動
(3) 第1号に掲げる往復に先行し、又は後続する住居間の移動
(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る。)

労災保険法7条2項

「労働者が」というのは労働者性の問題です。
労働者性についての記事はこちらです。
労災保険の給付がされる「労働者」の範囲はとても広い。契約の名称ではなく実質で判断。

「合理的な経路及び方法」とは就業に関する移動の場合に、一般に労働者が用いるものと認められる経路及び方法をいいます。
合理的な経路及び方法についての記事はこちらです。
Q.労災(通勤災害)になる⁉️ 電車通勤で申請してるけど、自転車で出勤した日に通勤途中に自動車に接触されてケガをした

通勤(1) 住居 → 就業の場所 、 就業の場所 → 住居

住居と就業の場所との間の移動。

アパートの自分の部屋の玄関を出てアパートの階段をおりている途中で足をふみはずして転んでケガをしたという場合も通勤災害になります。

一軒家にお住まいに方であると、同じ玄関を出た後でも門を出るまでの敷地内で転んでケガをした場合は住居でのケガですので通勤災害にはなりません。

参考記事はこちらです。
私は保険料払っていないけれど労災保険おりるの❓

通勤(2) (1番目の)就業の場所 →(2番目の)就業の場所 → (n番目の)就業の場所

住居 → (1番目の)就業の場所 、(n番目の)就業の場所 → 住居 、

これも通勤です。

ここでは2つのことが問題になります。
たとえば1番目の就業の場所が正社員で2番目の就業の場所が副業のバイト先だったとします。

1つ目の問題です。

正社員が会社の仕事を終えて自宅に帰る場合は当然として、会社の仕事を終えてから副業として皿洗いをしているアルバイト先の食堂への移動も通勤になるのだということです。意外に知らなかったという声も聞きます。

2つ目の問題は、会社の仕事を終えてから副業先への移動中にケガして通勤災害として労災保険で認められたときのことです。

この通勤は副業先の食堂への出勤途上とされます。つまり、ケガで正社員として働く会社も副業としてアルバイトで働く食堂のどちらも療養のために仕事を休んで働けません。
この場合は給料の約8割の休業給付を受け取れますが、2つの勤め先のどちらの給料の約8割を受け取れるのでしょうか。

会社員として1日約2万円、食堂の皿洗いで1日約2千円の給料を受け取っていたとすると、1日約2万円の8割だと約1万6千円、1日約2千円の8割だと約1,600円です。

皿洗いをしているアルバイト先の食堂への出勤途上でのケガですので、休業補償として労災保険から受け取れるのは1日約2千円の8割約1,600円となります。

通勤(3) 赴任先住居 → 帰省先住居 、 帰省先住居 → 赴任先住居

赴任先住居 と 帰省先住居 との移動であれば、いつでも通勤となるわけではありません。

帰省先住居 から 赴任先住居 への移動で、勤務日当日またはその前日に行われたものは就業との関連を認めるとされています。
前々日以前に行われた場合は、交通機関の状況等の合理的理由があるときに限り就業との関連性が認められるとされています。

赴任先住居 から 帰省先住居 への移動で、勤務日当日またはその翌日に行われたものは就業との関連を認めるとされています。
翌々日以後に行われた場合は、交通機関の状況等の合理的理由があるときに限り就業との関連性が認められるとされています。

基発331042号平成18年3月31日

【編集後記】

勤め人の方は、通勤でケガをしたという場合は、通勤災害として労災保険の請求をしましょう。

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小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)

小倉健二(おぐらけんじ) 労働者のための社労士・労働者側の社労士 労働相談、労働局・労働委員会でのあっせん代理 労災保険給付・障害年金の相談、請求代理 相談・依頼ともに労働者の方に限らせていただいています。  <直接お会いしての相談は現在受付中止> ・mail・zoomオンライン対面での相談をお受けしています。 1965年生まれ57歳。連れ合い(妻)と子ども2人。  労働者の立場で労働問題に関わって30年。  2005年(平成17年)12月から社会保険労務士(社労士)として活動開始。 2007年(平成19年)4月1日特定社会保険労務士付記。 2011年(平成24年)1月30日行政書士試験合格