「労災認定 もともとの病気」で検索して、記事を読みにきた方がいます。
もともと病気や健康状態になんらかの問題があった方が、仕事が原因になってケガをしたり病気になってしまった。
こんなときは、労災(業務災害)として認められるのでしょうか?
Contents
病気の原因は1つとはかぎらない
病気の原因にはいろいろなものがあります。
カンペキに健康状態だという人はいません。
たとえば健康診断をうければ、どこかしら要経過観察であったり要治療といった結果が出ることも珍しくはないですよね。
健康診断の結果でなにも異常がでなかったときでも、カンペキな健康だということでもありませんし。
どこかしら健康状態に問題があったからといって、かならず病気になるわけではありません。
なんらかの病気にかかっていたからといっても、ふつうに生活していて悪化するともかぎりません。
仕事中に病気でたおれたとしても、もともと悪かった病気が悪化していて、たまたま仕事中だったというだけということだってあります。
さまざまな原因によって起こる傷病(ケガや病気)。
- 病気になった原因には本人の健康状態にもなんらかの関わりがある。
- 健康状態が悪化して病気になった原因には業務(仕事)も関係がある
病気になった・病気が悪化した。
この原因に、<本人の病気・健康状態>と<業務>のどちらも関わっている。
・仕事が原因とはいえない私傷病(労災ではないケガや病気)
・仕事が原因である労災(業務災害)
はたして、どちらなのでしょうか?
業務が病気やケガの相対的に有力な原因であれば労災(業務災害)
もともと本人がもっていた健康状態のなんらかの問題や病気、長時間労働や長時間労働や仕事でのストレス。
病気になる(あるいは病気が悪化する)のに原因が1つだけでなく、複数の原因があることは珍しくはありません。
病気になったり病気が悪化したときに、仕事(業務)だけが原因はなかったとしても労災(業務災害)とみとめらることがあります。
相対的に(他の原因とくらべてみて)業務(仕事)が有力な原因であれば業務起因性の傷病(仕事が原因であるケガや病気)となるのです。
この相対的に有力な原因であることを相当因果関係があるといいます。
業務と相当因果関係にある傷病は業務起因性があります。
参考文献
『実務者のための労災保険制度Q&A』公益財団法人労災保険情報センター P30「業務起因性」
支店長付きの運転手が自動車運転の業務中に発症したくも膜下出血が業務上の疾病に当たるとされた事例
くも膜下出血が発症する基礎となりえる病気をもっていた上に、くも膜下出血の危険因子である高血圧症が進行していた方でした。
しかし、くも膜下出血になったのは業務上の病気だと認められた最高裁判所の判決があります。
(最高裁平成12年7月17日第一小法廷判決)
くも膜下出血が発症する基礎疾患をもっていて、くも膜下出血の危険因子である高血圧症が進行していましたが、治療の必要のない程度のものであったとして、過重労働の実態を判断した結果、くも膜下出血は業務上の疾病に当たると判断されました。
支店長付きの運転手として自動車運転の業務に従事していた者が早朝支店長を迎えに行くため運転中くも膜下出血を発症した場合において、同人が右発症に至るまで相当長期間にわたり従事していた右業務は精神的緊張を伴う不規則なものであり、その労働密度は決して低くはなく、右発症の約半年前以降は一日平均の時間外労働時間が七時間を上回り、一日平均の走行距離も長く、右発症の前日から当日にかけての勤務も、前日の午前五時五〇分に出庫し、午後七時三〇分ころ車庫に帰った後、午後一一時ころまで掛かってオイル漏れの修理をして午前一時ころ就寝し、わずか三時間三〇分程度の睡眠の後、午前四時三〇分ころ起床し、午前五時の少し前に当日の業務を開始したというものであり、それまでの長期間にわたる過重な業務の継続と相まって、同人にかなりの精神的、身体的負荷を与えたものとみるべきであって、他方で、同人は、くも膜下出血の発症の基礎となり得る疾患を有していた蓋然性が高い上、くも膜下出血の危険因子として挙げられている高血圧症が進行していたが、治療の必要のない程度のものであったなど判示の事情の下においては、同人の発症したくも膜下出血は業務上の疾病に当たる。
平成7(行ツ)156 休業補償不支給決定取消請求事件 裁判所
【編集後記】
明治通り(新宿区)を歩いていたら桜がたくさん咲いていました。(2021/03/24)
週末には満開になるのではないかなと。
昨日の1日1新 はまさき(佐賀県産)
小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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