入社まもなく労災で休業した人の平均賃金はどうやって計算するのか?

固定ページ
Pocket

「労災 入って間もない人 計算方法」で検索してBlogを読みに来た方がいます。

入社してすぐに労災で休業。
慣れない仕事ですから、労災事故に遭いやすいかもしれません。

入社まもなく労災で休業した人の平均賃金はどうやって計算するのでしょうか?

IMG 0905

原則としての平均賃金の計算

平均賃金の計算 原則

労働基準法12条1項(但し書き以下略)

この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前3箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。

そして、平均賃金が不当に低くならないように、以下の期間中の日数と賃金は除いて平均賃金を計算することになっています。

1 業務上の負傷・疾病による療養のための休業期間
2 産前産後の休業期間
3 使用者の責めに帰すべき事由による休業期間
4 育児および介護休業期間
5 試の使用期間

入社後3ヶ月未満の平均賃金の計算方法(算定期間が3か月に満たない場合)

算定事由発生日以前3ヶ月の賃金の総額をもとに計算する平均賃金。

ところが、入社後3ヶ月に満たない労働者が労災事故でケガをしてしまい会社を休んだ。

入社して間もない労働者の平均賃金はどうやって計算するのでしょうか?

算定事由発生日以前3ヶ月の代わりに、雇入れ後の期間で計算することになります。

平均賃金の計算 雇入後3ヶ月未満

労働基準法12条6項

雇入後3箇月に満たない者については、第1項の期間は、雇入後の期間とする。

入社日当日の平均賃金の計算

雇入れの日に労災事故に遭ってしまった場合はどうなるのでしょうか?

さかのぼって計算する期間がありませんので、計算することができません。

雇入れの日に労災事故に遭ってしまった場合の平均賃金については、都道府県労働局長が計算することになっています。

労働基準法施行規則4条

法第12条第3項第1号から第4号までの期間が平均賃金を算定すべき事由の発生した日以前3箇月以上にわたる場合又は雇入れの日に平均賃金を算定すべき事由の発生した場合の平均賃金は、都道府県労働局長の定めるところによる

いったいどう計算するのか?興味深いところですが、新規学卒者の自宅待機と平均賃金の計算について労働省が出している文書があります。

結論部分を引用すると以下の内容です。

いわゆる自宅待機の措置をとるときは、その繰り下げられた期間について、労働基準法第26条に定める休業手当を支給すべきものと解される。

この場合における平均賃金は、自宅待機の開始日が労働基準法施行規則第4条の「雇い入れの日」に該当するものと解されるので、同条の規定に基づき都道府県労働基準局長が定めること。

この際、あらかじめ賃金額が明確に定められている者については当該賃金額により、その他の者については自宅待機が採用内定者の一部に対して実施された場合には自宅待機とならなかつた者の賃金額、自宅待機が採用内定者の全員に対して実施された場合には労働契約の成立時に参考的に示された賃金の額等により推算すること(昭和22年9月13日付け発基第17号参照)。(昭50・3・24労働省労働基準局監督課長、貨金福祉部企画課長連名内翰)

算定すべき事由の発生した日「以前」3箇月間

以前の「以」とは、普通は基準となる数字を含めます。

以上・以下と超える・未満の使い分けを算数で習いましたよね。

ところが、平均賃金の計算では算定すべき事由の発生した日「以前」には発生した日「当日」は含めません。

算定すべき事由の発生した日「以前」と条文にありますが、労災事故の当日は含まないことになっています。

労働基準法12条1項(但し書き以下略)

この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前3箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。

労災事故の当日はケガをして仕事の途中で働けなくなっていることが考えられます。

仕事の途中で働けなくなって賃金を全額受けとれていないかもしれません。

そこで、事故の日は含まずに、事故の前日から3ヶ月を計算することになっていると考えると納得しやすいのではないかなと・・・。

賃金締切日がある場合には算定すべき事由の発生した日の直前の賃金締切日が起算日になりますが、このときには直前の賃金締切日は「当日」が含まれることになります。

労働基準法12条2項

前項の期間は、賃金締切日がある場合においては、直前の賃金締切日から起算する。

【編集後記】

今日は相談者の方と恵比寿の近くで打ち合わせ。

雨の予報でしたが、行きも帰りもなんとか雨にふられずにすみました。

The following two tabs change content below.

小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)

小倉健二(おぐらけんじ) 労働者のための社労士・労働者側の社労士 労働相談、労働局・労働委員会でのあっせん代理 労災保険給付・障害年金の相談、請求代理 相談・依頼ともに労働者の方に限らせていただいています。  <直接お会いしての相談は現在受付中止> ・mail・zoomオンライン対面での相談をお受けしています。 1965年生まれ57歳。連れ合い(妻)と子ども2人。  労働者の立場で労働問題に関わって30年。  2005年(平成17年)12月から社会保険労務士(社労士)として活動開始。 2007年(平成19年)4月1日特定社会保険労務士付記。 2011年(平成24年)1月30日行政書士試験合格