こちらの記事「業務上でなった病気は労災保険から給付を受けられます。業務上の疾病」で“職業病リスト”を紹介しました。
職業病リストに記載されている具体的な疾病だけでなく、他の病気であっても業務に起因することの明らかな疾病についても、業務上疾病として労災保険から給付を受けられます。
それでは、どうして、具体的な疾病名が記載されている“職業病リスト”があるのでしょうか。
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「労働基準法施行規則別表第1の2」の11号を3つに分けてみると
記事では労働基準法施行規則別表第1の2のことを“職業病リスト”と紹介しました。
号 | 労働基準法施行規則別表第1の2 |
---|---|
1号 | 「業務上の負傷に起因する疾病」(疾病とは病気のことです)。 |
2号〜10号 | 具体的な“職業病リスト”です。 |
11号 | 「その他業務に起因することの明らかな疾病」 |
1号は、「業務上の負傷に起因する疾病」です。疾病とは病気のことです。
業務上のケガによって起きた病気は業務上の病気として労災保険から給付を受けられますよ、という意味です。
業務上疾病として労災保険から給付が受けられる病気は、業務上のケガによって起きた病気以外は、“職業病リスト”に記載された病気と、「その他業務に起因することの明らかな疾病」の2種類
2号〜10号は、具体的な職業病リストです。
具体的な疾病名が記載された表はこちら、労働基準法施行規則別表第一の二です。
11号は、「その他業務に起因することの明らかな疾病」となっています。
業務上のケガが原因となって起きた病気は業務上災害だというのは当然でしょうと理解できます。
そして病気になったのは業務上のケガが原因だと証明するのはある意味では簡単です。
業務上でマムシに噛まれてケガをしたということが証明できれば、マムシの毒で病気になっていることがわかれば、マムシの読による病気が業務上のケガが原因となっておきたものだと言えます。
しかし、このように業務上のケガが原因となって起きた病気でなければ、
労働者がある病気になったという場合に、その病気の原因が、業務上のものなのか労働者個人の私病なのかの判断は簡単でしょうか。
いいえ、とても難しいです。
労働者個人、病気になった労働者1人ひとりについては、業務上の病気と言えるのか、それとも労働者個人の私病なのかはわからない。
しかし、その内容の仕事をしている、その環境で働いている、大勢の労働者を見ると、このような病気になる蓋然性があるということが医学的にわかってきた“職業病”というものがあります。
このような“職業病”をリスト化し、リストにある業務で働いていた労働者が職業病リストにある病気になった場合、
職業病になるくらいの期間その業務で働いてきたことなどさえ労働者が証明できれば、業務上の病気ではないと証明できない場合は、
業務上の病気として認めて労災保険から給付を受けられるようにしよう。
労働者が業務上の病気であることを証明する責任を軽くして、労働者が労災保険の保険給付請求をしやすくするために“職業病リスト”があるのです。
それでは、なぜ、2号〜10号の“職業病リスト”の他に、11号で「その他業務に起因することの明らかな疾病」が業務上疾病の範囲に書かれているのでしょうか。
“職業病リストの一覧にある病気ではないから業務上疾病として労災保険から給付が受けられない”のではない
労働基準法施行規則別表第1の2の2号〜10号にある“職業病リスト”は、労働者が労災保険の保険給付請求をしやすくするためにあることをみました。
しかし、“職業病リスト”に記載されていない、それ以外の業務上の病気になる可能性はありますし、実際にあります。
号 | 職業病リスト |
---|---|
8号 | 長期間にわたる長時間の業務その他血管病変等を著しく増悪させる業務による脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症、心筋梗塞、 狭心症、心停止(心臓性突然死を含む。)若しくは解離性大動脈瘤又はこれらの疾病に付随する疾病 |
9号 | 人の生命にかかわる事故への遭遇その他心理的に過度の負担を与える事象を伴う業務による精神及び行動の障害又はこれに付随する疾病 |
もともと労働基準法施行規則別表第1の2に現在の9号10号はありませんでした。
2010年(平成22年)改正で現在の9号10号が追加されました。
現在の9号10号がなかった当時は、現在の11号(当寺の9号)「その他業務に起因することの明らかな疾病」で過労死やうつ病などの精神障害の業務上の病気として労災保険からの給付を請求してきました。
「その他業務に起因することの明らかな疾病」による労災保険からの給付を請求するのは、“職業病リスト”にある仕事をしていてリストにある病気になった場合とは異なります。
労災保険の保険給付を請求する労働者が、自分がかかった病気が業務上の原因によって発生したことを証明する必要があります。
これまでも、労災保険給付の請求をしたいという労働者を支援する団体や弁護士などが、調査や資料作成などの準備を手助けし支援して、「その他業務に起因することの明らかな疾病」であることを証明してきました。
“職業病リストの一覧にある病気ではないから業務上疾病として労災保険から給付が受けられない”のではありません。
自分がかかっている病気が業務上の原因によるものだと思った労働者の方と支援する方が協力して労災認定を勝ち取ってきて現在があります。
そして、今、あなたが取り組むときなのかもしれません。
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