障害年金を受給する(年金の支給をうける)ためには、3つの要件をみたす必要があります。
3要件の1つ、障害等級該当要件をみたすためには、障害の状態を正しく反映して障害年金請求用の診断書が作成されることが必要です。
診断書の作成を主治医に依頼するときには、障害の状態が正しく伝わるように工夫しましょう。
障害年金を請求するときに必要な申立書をあらかじめ作成して主治医に渡して読んでもらうのも工夫の1つです。
Contents
障害年金を受給するには障害認定日に障害等級にあてはまる程度の障害の状態であることが必要
障害年金を受給する(年金の支給をうけとる)ために、必要な要件が3つあります。
障害年金の受給3要件をみたすと障害年金を受給することができます。
障害年金受給3要件 | 障害年金を受けとるための法律上の3つの条件 |
---|---|
年金制度加入要件 | 初診日に年金に加入していること(国民年金は例外あり) |
保険料納付要件 | 初診日の前日に年金保険料の納付要件をみたしていること |
障害等級該当要件 | 障害認定日(原則は初診日から1年6月を経過した日)に障害の状態にあること |
障害年金受給3要件についての参考記事はこちら
障害年金の受給3要件の1つが、障害等級該当要件です。
障害等級該当要件とは、障害認定日(またはそれ以降)に障害年金の障害等級にあてはまる程度の障害の状態にあることです。
障害年金の障害等級とは、障害基礎年金(国民年金)は1級か2級、障害厚生年金(障害厚生年金)であれば1級か2級か3級です。
障害年金の障害等級 | 障害の程度 |
---|---|
1級 | 他人の介助を受けなければ日常生活のことがほとんどできないほどの障害の状態です。
身のまわりのことはかろうじてできるものの、それ以上の活動はできない方 (または行うことを制限されている方)、入院や在宅介護を必要とし、活動の範囲 がベッドの周辺に限られるような方が、1級に相当します。 |
2級 | 必ずしも他人の助けを借りる必要はなくても、日常生活は極めて困難で、労働によって収入を得ることができないほどの障害です。
例えば、家庭内で軽食をつくる などの軽い活動はできても、それ以上重い活動はできない方(または行うことを制限されている方)、入院や在宅で、活動の範囲が病院内・家屋内に限られるような方が2級に相当します。 |
3級 | 労働が著しい制限を受ける、または、労働に著しい制限を加えることを必要とするような状態です。
日常生活にはほとんど支障はないが、労働については制限がある方が3級に相当します。 |
『障害年金ガイド令和3年度版』(日本年金機構)の「障害年金に該当する状態」から作成
障害年金の障害等級に該当する状態についての参考記事
- 障害基礎年金を受給するには、1級・2級の障害等級にあてはまる。
- 障害厚生年金を受給するには、1級・2級・3級の障害等級にあてはまる。
原則として初診日から1年6ヶ月経過した日「障害認定日」に障害年金の障害等級にあてはまる程度の状態であれば、障害年金を受給するための3要件の1つ障害等級該当要件をみたすことになります。
障害認定日に障害等級にあてはまらなかった場合でも、その後に重症化して障害等級にあてはまるようになった場合には65歳誕生日の2日前までなら障害年金を請求することができます。
障害年金を受給するには、診断書の記載内容がとても重要
障害年金の受給3要件、この要件3つのすべてをみたさないと障害年金を受給することができません。
他の2つの要件をみたしている場合でも、障害等級該当要件をみたさなければ障害年金を受給することができません。
- 障害基礎年金を受給するには、1級・2級の障害等級にあてはまる。
- 障害厚生年金を受給するには、1級・2級・3級の障害等級にあてはまる。
障害認定日に障害年金の障害等級にあてはまる障害の状態にあるのか。
障害等級該当要件をみたしているか。
障害の状態の審査は「書類」だけでおこなわれます。
障害の状態(程度)の審査をおこなうための書類。
基本的には、診断書と申立書。この2つの書類だけで基本的には障害の状態(程度)が判断されることになります。
障害年金を請求した本人へのアンケート、診断書を記入した医師への照会(問い合わせ)、審査するうえで必要だと判断された場合には追加の書類の提出をもとめられることもあります。
しかし、基本的には診断書と申立書の2つの書類だけで障害の状態の審査が行なわれます。
「診断書」は医師が記入します。
医療の専門家である医師が作成する客観的な資料である診断書が、障害の状態(程度)の審査で重要視されるのは当然のことだといえます。
障害年金を受給するには、診断書の記載内容がとても重要です。
申立書(「病歴・就労状況等申立書」)は障害の状態について、本人が記入します。
申立書は障害の状態について本人が直接主張できる書類です。
生活・仕事での困っていることを医師に正しく伝える
障害年金を受給するには、診断書の記載内容がとても重要です。
障害年金請求用の診断書に、障害の状態(程度)が正しく記載されていることが不可欠です。
障害の状態を医師に正しく伝えるための方法の1つに、申立書(「病歴・就労状況等申立書」)を作成して医師に渡して説明することがあります。
申立書を作成して医師に見せて説明する、渡す
申立書(「病歴・就労状況等申立書」)は、日本年金機構「病歴・就労状況等申立書の提出にあたって」を参考に作成しましょう。
「病歴・就労状況等申立書」日本年金機構
「病歴・就労状況等申立書(続紙)」日本年金機構
追加や削除、修正をすることを考えると手書きではなく、Excelで作成するのも1つの方法です。(Excelの記入フォームは入力しやすいものではありませんが・・・)
「病歴・就労状況等申立書」(Excel)日本年金機構
「病歴・就労状況等申立書(続紙)」(Excel)日本年金機構
申立書には、発病したとき、初診日、通院しはじめてからの経過、障害認定日のころ、生活や仕事をするうえでの困難な状態などを記入します。
申立書は請求者本人が作成します。
しかし、生活や仕事で困難な状態にあるのに、本人には障害の状態が日常的になっているなどで自覚できていないこともあります。
あるいは、障害の状態にあるために発病時から障害認定日までの状況を整理してまとめることが困難なこともあります。
社会保険労務士は障害年金請求手続きの依頼をうけて、本人から聞きとりをしながら申立書を作成することができます。
必要な場合には、障害年金請求に専門的にとりくんでいる社会保険労務士に依頼しましょう。
申立書(「病歴・就労状況等申立書」)は、障害年金を請求するときまでに作成すればよいものです。
しかし、あかかじめ申立書(案)を作成しておけば、障害年金請求専用の診断書を主治医に記入してもらうときに、参考資料として渡すことができます。
たとえば、精神の障害は四肢(腕や脚)の切断のように目にみえるものではありません。
本人の生活や仕事をする上での困難な状況は、医師が診断の場で目にするものではありません。
本人が正しく伝えない限り、医師が知ることはできません。
障害年金請求用の診断書への記入を主治医に依頼するにあたり、申立書をあらかじめ作成しておけば、申立書を手渡しながら説明することができます。
あらかじめ申立書を作成することで、自分の障害の状態、生活での困難・働ける状態なのか、働いている場合でもどんな困難があり職場でうけているサポートは具体的にどんな内容なのかなど、診断書に記入する医師に障害の状態を正しく伝えることができます。
申立書のうけとりを断られたときには、申立書そのものを渡すのではなく、申立書に書いた内容でとくに伝えたい部分だけを別の紙にメモして渡すこともできます。
障害年金の診断書を医師に依頼するときの工夫として、あらかじめ申立書を作成しておくことは1つの方法です。
【編集後記】
ひさしぶりにTSUTAYAへ行き、映画『MINAMATA』が新作で並んでいたのを見つけてレンタルしました。
映画『MINAMATA』。水俣病患者の立場で活動した写真家ユージン・スミスさんをジョニー・デップさんが演じています。
高校生のときに水俣病について知ったことが、私が社会問題について考えるきっかけの1つになりました。
当時発行されていた雑誌『思想の科学』に掲載されていた記事のプリントを配り、自分はどう考えるのか小論文を繰り返し書かせた社会科の I 先生に感謝しています。お元気でしょうか(^^)。
確認したらAmazonプライムビデオでも観ることができます。
小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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