自分が直接担当していること以外の仕事でケガをしたら、労災にならないのでしょうか?
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自分の担当じゃない仕事に手を出してケガしたんだから労災じゃない?
「○○マターじゃないことに手を出してケガしたんだから、労災じゃないよ」
「マター」は英語のmatterからくる言葉のようで、担当であることや責任をもっている業務のことをさして使うようですね。
わざわざカタカナの「マター」や英語でmatterという必要性がない言葉だと思いますが、それはそれとして。
「お前の仕事じゃない余計なことをして怪我したんだから労災にはならないぞ」こんなことを言われた。
どう考えたら良いのでしょうか?
業務災害(労働災害)であるといえるためには、業務遂行性と業務起因性が必要になります。
業務起因性とは、業務が原因となって病気になったりケガをしたということです。
業務遂行性があるとは、使用者(会社)の支配下(指揮命令下)にあるということです。
業務起因性があるというためには、その前提として業務遂行性がある必要があります。
たとえば、業務時間中に職場にいたものの業務を離れて私用で遊んでいたという場合は、業務遂行性がありません。業務中の職場でのケガであっても業務災害(労災)にはなりません。
仕事中に遊んでいてケガをしても業務災害にはならないのは「そりゃ当たり前だ」と理解できます。
しかし、遊んでいたのではなく、自分の担当ではない仕事を手伝っていたときにケガをしてしまった。
こんなときに、業務災害(労働災害)になるのか?ならないのか?ケガをしてしまった労働者にとっては、大きな問題ですね。
【事例】担当外の仕事をしているときのケガは業務災害(労働災害)になるのか?
人命救助などの人道上の要請や職場の火事の消火活動が必要だった場合など緊急業務は業務起因性が認められます。緊急業務によるケガは業務災害(労働災害)になります。
緊急業務ではなく、使用者(会社)からの指示がなく自分の担当ではない仕事を手伝っているときにケガをした場合は、業務災害(労働災害)にならないのでしょうか?
業務外(労災ではない)1956年9月17日基収4722号
トラックの車検のために行った車検場でストーブの煙突を取り外す手伝い中に転落して死亡
【トラックの車体検査受検のため検査場に行き同所のストーブ煙突取外し作業を手伝って転落死亡した場合】
Q.N通運㈱O支店車輛整備事務員Kは、当日、貨物自動車の車体検査受検のためみずから同車を運転して車体検査場に赴いたところ、車体検査場では、ちょうど昼の休憩時を利用して、新築されたGINの新車体検査場に移転準備のため、ストーブの煙突取外し作業を車体検査官3名で行なっていたが、作業に難渋している様子が見受けられたので、Kは事務所の南側約2メートルの箇所にあるプラタナスの木に登り、煙突を固定している部分をゆるめる作業を手伝った。取外しを終わり、Kは木から降りようとしたところ、枝が折れたため転落、負傷し死亡したものである。
A. 業務外である。
このトラックのドライバーの方にとって、車検場は職場でも仕事に関連する取引先でもありません。
車検場は車を持っていって、検査を受けるための場にすぎませんし、この車検場のストーブの煙突を取り外す手伝いは業務と認められなかったということでしょう。
業務上(労災である)1956年9月17日基収4722号
【運転未熟を見かねた他運転手の運転中の転落事故】
Q 当日、K鉱山㈱の大型トラックを運転しているNは、黒鉛を入れる空俵120枚、縄75キロを積載して助手Sほか1名と3人でⅠ選鉱場を出発し、災害現場においてFの運転するD興業㈱のトラックと出会ったが、道路の幅は2メートル60センチで、とうてい自動車の擦れちがいは不可能のため、D興業㈱のトラックはその後方の待避所へ後退するため約20メートルバックし、いったん停車したが、徐行に相当困難な様子であった。これを見かねたNは、Fに代わって運転台に乗りハンドルに手を掛けギヤーをバックに入れ替え、サイドブレーキを引いて後退しようとしたとき、ギヤーの入れ替えを間違えたものか、そのまま前進し、アッという間に道路から200メートルの断崖を墜落即死したものである。
A 業務上と解すべきである。
自分が運転する必要がない他社のトラックを運転して事故が発生したものですが、業務として認められています。
自分の担当外の仕事をしているときにケガをしたらどうしたらよいのか?
自分が直接担当している仕事以外にも、使用者(会社)から業務命令を受けて他部署を応援したときのケガなどは業務遂行性が明らかです。
また、使用者からの明確な業務命令がなくても、その業務を担当する労働者としてやるだろうと予想される行為は業務と認められます。
抽象的であるといえますし、ケース・バイ・ケースでの判断の問題とも言えます。
自分が直接担当していること以外の仕事をするときには、「手伝いましょうか?」などとその場の責任者や自分の上司に相談して「あぁ頼むよ!」と承認・指示を受けてから作業を開始すると、より安心かもしれません。
しかし、自分の担当以外の仕事を手伝ったときに、承認や指示を直接受けていなかったとしても、業務災害と認められないとは限りません。
紹介した1956年9月17日基収4722号では、他社のトラックを代わって運転しなければならない労働契約上の義務はありませんし、使用者(会社)からしたら勝手に運転したということかもしれません。
業務災害(労働災害)であるといえるためには、業務遂行性と業務起因性が必要です。
ですが、業務遂行性も業務起因性も明確な基準があるのではなく、個別のケースごとに判断されることになります。
業務災害(労働災害)であるか?ないか?コンピューターやAIが自動的に判断して正しい結論がでるものではありません。
業務災害(労働災害)であるとして労災申請した労働者。労働者の主張に根拠があると労働基準監督署が判断すれば業務上(労働災害)になりますし、主張に根拠がないなと判断すれば業務外(労働災害ではない)とされます。
業務災害(労働災害)であるかどうかの判断は、労働基準監督署が行なうものですから、申請する前に労働災害と認められるかどうかは、労働者にはわかりません。
そうであれば、仕事でのケガであると労働者が判断するのであれば、主張(労災申請)する、主張を裏付ける根拠となる資料を準備する。
そして、業務災害(労働災害)であるかどうかの労働基準監督署の判断を待つ。判断に納得できればそれでいいでしょうし、納得できなければ不服申立の手続きをすればよいのではないでしょうか。
ケガをした労働者が労災申請しない限り、労働災害かどうかを判断することはありませんから、仕事が原因となるケガをしたと考えるならば、まずは労災申請することが大事です。
「お前の仕事じゃないことで怪我したから労災じゃない!」と言われて、会社の協力が得られない場合でも、労災申請(労災保険給付の請求)は行なえます。
仕事でのケガだから労災申請したいのだが、自分1人で主張するための書類の準備をして申請手続きをするのが不安だという労働者の方は、ご依頼ください。
労働者のための社労士・小倉健二は、あなたの労災申請をお手伝いします。
【編集後記】
発表されてすぐにiPhoneXsを買ったので、4年間使ってきたでしょうか。
TrueDepth(インカメラの一部)が壊れて、FACE IDが使えなくなってしまい・・・。
ズボンのポケットやワイシャツの胸ポケに入れて持ち歩くので、少しでも小さいものをと、iPhone14でminiが出ることを期待していましたがminiは発表されず、買い替えを悩んでいました。
スマホにそれほどの高性能を求めていないことから、昨年発売のiPhone13miniをApple Storeでネットから注文しました。
あさってには届く予定なので、使い心地がどうか?楽しみにしています。
今年はiPadAir5、Apple Watch8、iPhone13mini、仕事と生活に新たなApple製品導入の年になったなぁと。
小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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