仕事中に転んでケガ。
病院に行って治療を受けて、ケガがよくなるまでは働けずに仕事を休んだ。
「転んでケガしたのは自分の不注意だから労災保険使えないよ」と上司に言われた。
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「転んでケガしたのは自分の不注意だから労災保険使えないよ」はウソ
「転んでケガしたのは自分の不注意だから労災保険使えないよ」と言われた。
“労働相談あるある”です。
労働者からの労働相談でしょっちゅう聞きます。
不注意で事故が起きてしまう職場環境に問題があることも多いですが、
仮に本当に労働者の不注意で起きた事故でも労災保険を使えます。
労災保険を使えない(給付を受けられない・制限される)のは、2つの場合だけです。
労災保険法2条の2の2 | 給付制限をする場合 | 給付制限の内容 |
---|---|---|
1項 | 労働者が、故意に負傷、疾病、障害若しくは死亡又はその直接の原因となつた事故を生じさせたとき | 政府は、保険給付を行わない。 |
2項 | 労働者が故意の犯罪行為若しくは重大な過失により、又は正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、負傷、疾病、障害若しくは死亡若しくはこれらの原因となつた事故を生じさせ、又は負傷、疾病若しくは障害の程度を増進させ、若しくはその回復を妨げたとき | 政府は、保険給付の全部又は一部を行わないことができる。 |
また、会社が労災保険に入っていない・労災保険の保険料を払っていない場合でも、労災に遭った労働者は労災保険を使えることになっています。
労災なのに労災保険を使わないことを「労災かくし」といいます。
「労災かくし」は法律違反、会社の犯罪です。
「転倒によるケガは労災」だということを、厚生労働省の2つのデータから見てみましょう。
【2021年5月速報労災】死傷者数は前年同期比で約31%増加/1位は【転倒】9,295人
厚生労働省は2021/05/20に労働災害発生状況(5月速報値)を公表しています。
休業4日以上の死傷者数は3万6,389人(前年同期比31.5%増)もいます。
事故の類型別でみると、転倒が一番多く9,295人(前年同期比28.7%増)です。
休業4日以上の死傷者数、転倒による労災が1位なのは2021年5月に限りません。
労災での休業4日以上の死傷者数で一番多いのが、転倒。
「転んでケガしたのは自分の不注意だから労災保険使えない」というのがウソであることは一目瞭然ですね。
【2017年12月発生労災】転倒による休業4日以上の災害状況(飲食店)
平成18年から平成29年までに発生した休業4日以上の労働災害について、災害発生年ごとにおよそ1/4を無作為抽出した個別事例について、厚生労働省が「職場のあんぜんサイト」で紹介しています。
サイトに掲載されているデータの最新、平成29年(2017年)12月に発生した転倒による休業4日以上の労災について見てみましょう。
飲食店にデータをしぼって抽出してみました。
転倒にもいろいろな事故があること、転倒による事故はとても危険な労災であることがわかります。
休業4日以上の死傷労災事故(飲食店での転倒災害状況)2017年12月発生 | 年齢 |
---|---|
厨房にて、盛り付け中に、足を滑らせて転んだ。(もともと、足のひざは痛かった。)ゆっくりと立ち上がり、その後、休憩したが、左ひざが腫れて痛みがあった。 | 69 |
出勤時、従業員契約駐車場内で凍結面で滑って転倒した。 | 34 |
支店にてATMを操作後、帰社途中に当該信用金庫の周りにある側溝に左足を誤って落とし、左足の外のじん帯を断裂、内側のじん帯を損傷した。 | 35 |
2階事業場内で揚げ物をするため、吊り戸棚から粉を取ろうと踏み台に乗っていたところ、その台が倒れて、地面に後頭部を打って負傷した。 | 67 |
歩道でチラシ配布中、体調が悪くなり徒歩にて移動中、腹痛が酷く意識を失い道路に転倒し、頭部を打ち受傷した。 | 38 |
桶の回収作業中、道路が泥でぬかるんでおり、バランスを崩し転倒した。車体が左に倒れて足を挟まれて、転倒時に肘も打撲した。 | 20 |
店舗内調理場において作業中、排水溝のグレーチングを踏んだ際、グレーチングが外れ落ち、左足、左胸を強打した。 | 57 |
店舗内1F通路にて、事務所からキッチンへ向かって歩行中、別のスタッフがモップ掃除中で床が滑りやすくなっていた為、滑って転倒し、顎を切って5針縫い、また顎にヒビ(骨折)を負った。 | 36 |
厨房内にて皿洗いの業務をしているとき、足場付近に立てかけてあった鉄板に足をひっかけてしまい、そのまま転倒し、膝を強打した。 | 21 |
ウエイトレスステーションにおいて、デザートをのせたトレーを左手に持ち、右手に取り皿を持った状態で移動していたとき、足元が縺れて前のめりに転倒し、額を負傷した。 | 52 |
天ぷら専門レストランの客席フロアを小走りで動いているときに、通りみちにランドリー袋の太いロープがたれ下がって落ちているのに気づかず、踏んでスリップして斜め後ろに転倒し、右手をついたときに転倒の衝撃で右手首を骨折してしまった。 | 58 |
店舗のバックヤードにて、厨房のゴミを道路に設置されている移動式ゴミ箱に入れようと移動している時、洗浄後の濡れた床で滑って転倒し、右手首を骨折した。 | 59 |
事業所内にて、店内客席で接客中に、段差のところにあるすのこに足を挟み、右足の甲を骨折した。 | 54 |
店舗厨房にて、寿司を作成している際に、業務が繁忙であったため昼頃から体調不良となり、残業時間中に意識を失って転倒して後頭部に切傷を負い、転倒の衝撃で歯に動揺が生じた。 | 32 |
キッチンから倉庫に商品を取りに行く時にホール通路を歩いた際、床のモップ掛けが完全に乾いておらず、足を滑らせ後ろ向きに転び背中を強打した。 | 54 |
店舗内において、配膳の移動中に厨房と客席との間の出入口前の床で足を滑らせ転倒し、骨折した。 | 50 |
店舗厨房とバックヤードの間のスイング扉にて、会計端末のハンディをバックヤードに取りに行こうとした際に、床が水で濡れていたため滑って転倒し、右肘を骨折した。 | 21 |
出社し更衣室で服を着替え、休憩室に立ち寄った。勤務に入るため売店へ向かう際、休憩室の椅子に躓き転倒し、負傷した。 | 55 |
コップをトレーに入れて移動中、足元に納品ケースがあったことに気付かず躓いて転倒し、背中と足を納品ケースに打ちつけた。 | 64 |
台車を押しながら事務所に向かっていたところ、通路が濡れていたため滑って転倒し、押していた台車に腰を強打し負傷した。 | 48 |
店舗プレハブ冷蔵庫にて、配送作業をしていた際に靴の裏が凍り、その状態で店舗バックヤードに出たため、滑って転倒し、右肘・右肩・右膝に打撲創を負った。 | 49 |
厨房の片付け中に、フライヤーの横を通った際に躓き、フライヤーにはいった高温の油の中に手を入れ、火傷を負った。 | 20 |
店内キッチンにて、洗い場に皿を取りに行こうとしたとき足元が滑り、転倒して手を床に着き、左手環指を骨折した。 | 58 |
ステーション出入口にて、客用お手洗いへ掃除に行く途中、床が濡れていたところを走り、滑って転倒し、右肘から地面に落ちて受傷した。 | 21 |
宴会場のセットをしていたとき、客室から通路に出ようとして床の段差を踏み外し、膝から転落して通路床面に強打し、左膝を骨折した。 | 50 |
キッチンにて調理作業中、足を滑らせて転倒し、起き上がれなくなり、救急車で病院へ運ばれ、手術となった(左大腿骨骨折)。 | 43 |
駐車場の看板を取り付けようとしたところ、風に煽られて転倒し、左足アキレス腱を切った。 | 57 |
敷地内の庭掃除をしていたとき、足が滑って左手をついたところ、左手首を骨折した。 | 63 |
商品の調理のため、食材を手に調理機器(フライヤー)に向かった際、床が濡れていたため足を滑らせ転倒し、両肘と両膝を強打した。左膝がすぐに腫れたため、早退して受診した。 | 57 |
キッチンで作業中、床が少し濡れていたため滑って転倒し、腰とお尻辺りを打ち、骨にひびが入った。 | 43 |
客宅に商品を配達し、店舗へ戻るために客宅前の階段を下りようとした際に、夜で視界が悪かったため、誤って左足を踏み外し、左足小指を骨折した。 | 39 |
当社敷地内において、本社ビル内の厨房から、プレハブ冷蔵庫へ食材を取りに行き、両手でトレイを持ち中に入ろうとしたとき、入り口の段差(約15㎝程度)に躓いてバランスを崩した際、中の左側にある棚にトレイが引っかかったため、右方から転倒して右肩を負傷した。 | 53 |
敷地内駐車場に車を停車し、裏口に向かっていたとき、裏口前のアスファルトが剥がれていたため、それに躓き転倒してしまった。 | 60 |
当社業務委託先である病院内で、食事が終わった食器を載せた下膳車を、病棟から食器洗浄室に運んでいたとき、渡り廊下を歩いていたところ、ゴム製のスリッパが摩擦で床に引っ掛かり脱げてしまい、そのまま転倒した。転倒した際に右腕を床に強く打ちつけて、右腕前腕を骨折した。 | 70 |
厨房において、料理を2階へ運ぶリフトに乗せようとしたとき、床で滑って転倒し、後頭部を冷蔵庫の角にぶつけ負傷した。 | 53 |
物を持った状態で、店外の階段を下りているときに転倒し、足首を骨折した。 | 32 |
洗い場の排水溝天板(金網)を掃除するため、天板を外して持ち上げ、後ろ側にあるシンクに運ぼうと後ろを振り向いた際、洗い物をしたあとで床が濡れていたため、足を滑らせ、排水溝の中の窪みに左足が落ち込んで捻り、左足小指の付け根を負傷した。 | 55 |
店内通路の壁際に設置してある製氷機から、つゆを冷やすための氷を発泡スチロールの箱に入れて運ぼうとしていた際、左足が滑り、尻を床について仰向きに寝転がった状態となった。その際に尻を床に強打し、左太ももを負傷した。 | 55 |
小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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