特定理由離職者は、離職後にハローワークに求職の申込みをして7日間の待機期間で失業手当を受けとれる点で特定受給資格者と同じです。
自分は対象者ではないと思っている方も少なくありませんが、特定理由離職者となる方の範囲は広いので知っておきたいところです。
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【特定理由離職者】特定受給者と同じ待機期間7日で失業手当を受けとれる人
雇用保険【特定受給資格者】特定理由資格者と比べるとイメージしやすい
倒産や解雇など、会社都合で離職すると失業手当(基本手当)を有利に受給できると聞いたことがあるという方も少なくないでしょう。これが特定受給資格者です。
特定受給資格者であれば、失業手当が有利に受けとれます。
解雇や会社都合退職の場合には、会社から求められても退職届を出してはいけないというのは、失業手当で不利益にならないためにも大切なことです。
解雇と退職届について、こちらの記事で紹介しています。
解雇や会社都合退職なのに退職届を出してしまったら、絶対に特定受給資格者になれないということではありませんが、ハローワークへの説明や資料提出・ハローワークによる調査など、本来必要ない多大な労力がかかります。
自己都合退職や懲戒解雇された場合などは、ハローワークで求職の申込みをしてから7日間の待機期間に加えてさらに2ヶ月間(給付制限期間)経ってから、失業手当(基本手当)を受給することができます。
特定受給資格者は2ヶ月の給付制限期間がなく、求職の申込みから7日間の待機期間だけで失業手当(基本手当)を受給できます。
その上、特定受給資格者であれば、失業手当(基本手当)を受けとれる最長期間(所定給付日数)が長くなりますから、受けとれる失業手当の総額が増えて有利です。
雇用保険の特定受給資格者について、こちらの記事で紹介しています。
解雇だけじゃない。失業保険すぐに受け取れる【特定受給資格者】はどんな人?
雇用保険【特定理由離職者】イメージしにくいが、意外に範囲が広い
倒産や解雇。会社都合で離職したら失業保険を受給するときに有利になる。この人が「特定受給資格者」ですというとイメージしやすいです。
特定受給資格者及び特定理由離職者とは
特定受給資格者とは、倒産・解雇等の理由により再就職の準備をする時間的余裕なく離職を余儀なくされた者(具体的には以下の「特定受給資格者の範囲」に該当する方)
特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準 厚生労働省
「特定理由離職者」は、離職後にハローワークに求職の申込みをして7日間の待機期間で失業手当を受けとれる点で特定受給資格者と同じです。
しかし「特定理由離職者」はどんな人なのか?というとなかなかイメージしづらいのではないでしょうか?
特定理由離職者とは、特定受給資格者以外の者であって期間の定めのある労働契約が更新されなかったことその他やむを得ない理由により離職した者(具体的には以下の「特定理由離職者の範囲」に該当する方)
特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準 厚生労働省
倒産や解雇などの会社都合で離職した特定受給資格者には当てはまらない。
しかし、契約更新を希望したのに更新してもらえなかったなど離職せざるを得なかった人のなかで特定理由に当てはまる場合は、「特定理由離職者」になるという説明です。
雇用保険の特定理由離職者となる「特定理由」について、こちらの記事で紹介しています。
失業手当の特定理由離職者。新型コロナウイルス影響での自己都合離職も対象
イメージがつきづらいために、自分が特定理由離職者として失業手当で有利になることを知らないという方が多いです。
特定理由離職者となる「特定理由」は大きく分けると2つです。2つについて、それぞれ詳しく知ってみましょう。
特定理由離職者となる「特定理由」<1>
期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことにより離職した者(その者が当該更新を希望したにもかかわらず、当該更新についての合意が成立するに至らなかった場合に限る。)
契約の更新について明示はあるが契約更新の確約まではない場合がこの基準に該当します。
労働契約において、契約更新条項が「契約を更新する場合がある」とされている場合などです。
次の2つの場合は特定理由離職者ではなく、特定受給資格者となります。
- 期間の定めのある労働契約の更新により3年以上引き続き雇用されるに至った場合において当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職した者
- 期間の定めのある労働契約の締結に際し当該労働契約が更新されることが明示された場合において当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職した者(上記(8)に該当する場合を除く。)
特定理由離職者となる「特定理由」<2>
以下の正当な理由のある自己都合により離職した者 | 具体的には | 持参する資料 |
---|---|---|
(1) 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退等により離職した者 | ①又は②のいずれかに該当したため離職した場合が該当します(①に該当するが②に該当しない場合は、この基準に該当しません)。
① 上記に掲げた身体的条件その他これに準ずる身体的条件のため、その者の就いている業務(勤務場所への通勤を含む。)を続けることが不可能又は困難となった場合 ②上記に掲げた身体的条件その他これに準ずる身体的条件のため、事業主から新たに就くべきことを命ぜられた業務(当該勤務場所への通勤を含む。)を遂行することが不可能又は困難である場合 |
医師の診断書など |
(2) 妊娠、出産、育児等により離職し、雇用保険法第20条第1項の受給期間延長措置を受けた者 | 離職理由が雇用保険法第20条第1項の受給期間の延長事由に該当し、かつ、離職の日の翌日から引き続き30日以上職業に就くことができないことを理由として、当該事由により受給期間の延長措置の決定を受けた場合が該当します。 | 受給期間延長通知書など |
(3) 父若しくは母の死亡、疾病、負傷等のため、父若しくは母を扶養するために離職を余儀なくされた場合又は常時本人の看護を必要とする親族の疾病、負傷等のために離職を余儀なくされた場合のように、家庭の事情が急変したことにより離職した者 | 父又は母の死亡、疾病、負傷等に伴う扶養の例及び常時本人の看護を必要とする親族の疾病、負傷等の例であり、この基準は「家庭の事情の急変」による離職が該当します。
常時本人の介護を必要とする親族の疾病、負傷等により離職した者(心身に障害を有する者の看護のために離職した者を含む。)といえるためには、事業主に離職を申し出た段階で、看護を必要とする期間がおおむね30日を超えることが見込まれていたことが必要です。 なお、自家の火事、水害等により勤務継続が客観的に不可能又は困難となった理由があると認められるときはこの基準に該当するものであり、学校入学、訓練施設入校(所)、子弟教育等のために退職することはこの基準に該当しません。 |
所得税法第194条に基づく扶養控除等申告書、健康保険証、医師の診断書など |
(4) 配偶者又は扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難となったことにより離職した者 | 配偶者又は扶養すべき親族と別居を続けることが、家庭生活の上からも、経済的事情等からも困難となったため、それらの者と同居するために事業所へ通勤が不可能又は困難な地へ住所を移転し離職した場合が該当します。 | 転勤辞令、住民票の写し、所得税法第194条に基づく扶養控除等申告書、健康保険証など |
(5) i)~vi)の理由により、通勤不可能又は困難となったことにより離職した者 | i)~vi)の理由により、通勤困難(通常の方法により通勤するための往復所要時間が概ね4時間以上であるとき等)となったため離職した場合に該当します。 | 【i)~vi)共通】離職者の通勤経路に係る時刻表など |
i) 結婚に伴う住所の変更 | 結婚に伴う住所の移転登記のために事業所への通勤が不可能又は困難となったことにより勤務の継続が客観的に不可能又は困難となり離職した場合(事業主の都合で離職日を年末、年度末等としたような場合を除き、離職から住所の移転日までの間がおおむね1か月以内であることを要する。)に該当します。 | 住民票の写しなど |
ii) 育児に伴う保育所その他これに準ずる施設の利用又は親族等への保育の依頼 | 被保険者の住所若しくは職場の近隣又は通勤経路上の適当な場所に保育所等保育のための施設又は親族等がなく(当該施設又は親族等が適当な場所にあったとしても勤務の時間帯と保育の時間帯との関係等により、それぞれの利用保育の依頼もできないという客観的な事情がある場合も含む。)、かつ、上述した以外の保育所等保育のための施設を利用したり、親族等に保育を依頼するとすれば、通勤が不可能又は困難となる場合に該当します。 | 保育園の入園許可書など |
iii) 事業所の通勤困難な地への移転 | 移転後の事業所への通勤が、被保険者にとって不可能又は困難となる客観的事情がある場合に該当します。 | 事業所移転の通知、事業所の移転先が分かる資料など |
iv) 自己の意思に反しての住所又は居所の移転を余儀なくされたこと | 例えば、住居の強制立退き、天災等による移転等により、通勤が不可能又は困難となる場合に該当します。 | 住居の強制立退き、天災等の事実を証明できる書類 |
v) 鉄道、軌道、バスその他運輸機関の廃止又は運行時聞の変更等 | iv)と同様に、他動的な原因による通勤困難な場合に該当します。 | 鉄道、軌道、バスその他運輸機関の廃止又は運行時間の変更に係る書類 |
vi) 事業主の命による転勤又は出向に伴う別居の回避 | 被保険者本人が事業主から通勤が不可能又は困難な事業所へ転勤又は出向を命ぜられ、配偶者又は扶養すべき同居の親族と別居することを余儀なくされたために離職した場合に該当します。 | 転勤辞令、離職者が離職事由を記載した申立書、住民票の写し、所得税法第194条に基づく扶養控除等申告書、健康保険証など |
vi) 配偶者の事業主の命による転勤若しくは出向又は配偶者の再就職に伴う別居の回避 | 被保険者の配偶者がその事業主から通勤が不可能又は困難な事業所へ転勤又は出向を命ぜられ、或いは再就職のために、当該配偶者が住居を移転することとなった場合において、被保険者が当該配偶者と同居を続けるために住所を移転することとなった場合において、被保険者が当該配偶者と同居を続けるために住所を移転することとなったが、その結果、移転後の住所地から事業所への通勤が不可能又は困難となることにより離職した場合に該当します。 | 転勤辞令、住民票の写しなど |
(6) その他
「特定受給資格者の範囲」のⅡの(10)に該当しない 企業整備による人員整理等で希望退職者の募集に応じて離職した者等 |
「特定受給資格者の範囲」のⅡの(10) とは以下の内容です。
事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者(従来から恒常的に設けられている「早期退職優遇制度」等に応募して離職した場合は、これに該当しない。) ① 企業整備における人員整理等に伴う退職勧奨など退職勧奨が事業主 (又は人事担当者)より行われ離職した場合が該当します。 ② 希望退職募集(希望退職募集の名称を問わず、人員整理を目的とし、措置が導入された時期が離職者の離職前1年以内であり、かつ、当該希望退職の募集期間が3か月以内であるものに限る。)への応募に伴い離職した場合 |
ハローワークの窓口に問い合わせてください |
【編集後記】
結婚のために別の住まいに転居して働いていた会社まで遠くなって通勤できなくなり退職した。
連れ合いが転勤になってしまい、いっしょに転居するので仕方なく退職した。
こんな場合も、雇用保険の特定理由離職者となりますから、すぐに失業手当を受け取りはじめることができます。
ただ単に「自己都合退職」とだけにすると、2ヶ月の給付制限期間を待たないと失業手当を受けとれなくなってしまいます。
雇用保険の「特定理由離職者」。知っておいていただければと思います。
昨日の1日1新 mac OS Big Sur 11.2.1
小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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