「うつ病がきつくて働き続けられない。もう仕事を辞めるしかない」
退職することは悪いことではありませんが、退職する以外に休職する選択もあります。
休職して心身ともに休めて療養して、体調を少しでも回復させる。
復職するか退職するか、休職したあとで判断するという選択肢もあります。
傷病手当金
うつ状態にある、うつ病である方は、退職を考えている場合でも退職前、健康保険被保険者であるときに病院に行きましょう。
健康保険の被保険者は、病気やけがのために働くことができないために会社を休んだ日が連続して3日間あれば、4日目からは休んだ日に対して傷病手当金が支給されます。
傷病手当金は給料の約3分の2が支給されます。
傷病手当を受給しながら、休職して療養しましょう。
病気のために仕事を休める期間は、働いている会社によって異なります。
休職期間は就業規則や労働協約の定めがありますので、確認してみましょう。
休職期間は、3ヶ月などの短い期間、2年超えなど、会社によりさまざまです。
病院を受診して、医師に診断書を作成してもらい必要な期間を休職しましょう。
傷病手当金の支給期間は1年6月です。
支給開始日から1年6月だったものが、支給日を通算して1年6月へと制度が改善されています。
傷病手当金についての参考記事
また、条件を満たす方については、退職後も引き続き傷病手当金を受給することができます。
傷病手当金の退職後の継続給付についての参考記事
健康保険法104条【傷病手当金・出産手当金】退職後の継続給付
自立支援医療
精神通院医療の場合は、精神医療に一定以上の経験を有する医師が判断した方については医療費が1割負担になります。
統合失調症、躁うつ病・うつ病、てんかん、認知症等の脳機能障害、薬物関連障害(依存症等)の方が、自立支援医療を利用することができます。
傷病手当金を受給して生活費を確保し、自立支援医療を利用して医療費の負担を3割から1割へとへらすことで、生活する上での収入の確保と支出の軽減ができます。
自立支援医療制度の概要 厚生労働省
自立支援医療についての参考記事
自立支援医療受給者証があると医療費の自己負担額が1割になります。
障害年金
「うつ病の症状がきつくて働けないので、会社を辞めたい」
まずは休職してみてはと思いますが、それでもすぐに退職したいという方でも退職前に必ず病院に行きましょう。
うつ状態がきついのに病院に行かずに我慢していて、退職して落ち着いてから受診しよう、というのだけは避けましょう。
退職前の厚生年金に加入中に障害の原因となる病気やケガで初めて医師の診療を受けていた方は、初診日の前日に年金保険料の納付要件を満たした場合は、障害年金の3級の状態に当てはまると障害年金を受給できます。
もしも退職後(厚生年金被保険者資格喪失後)が初診日になると、3級の状態では障害年金を受給することができません。
1級2級の障害状態でなければ障害年金を受給できなくなります。
うつ状態にある、うつ病だと感じているのでしたら、在職中に病院に行って診療を受けましょう。
傷病手当金を受給しているときから、障害年金の請求についても検討しておきましょう。
参考記事
障害年金請求のための準備として、まずは自分の症状について主治医に正しく伝えましょう。
主治医の先生に、日常生活での困りごと、仕事をするに当たっての心配事など、自分の症状についてありのままに伝えておくことが重要です。
お風呂に入るのもつらく、週に1回または通院する日だけシャワーを浴びているという方もいるでしょう。
しかし、診察を受けているときにはシャワーを浴びて身支度もきちんとしていれば、お風呂にも入れないほど症状がひどいことが主治医には伝わりません。
日々の生活状況を積極的に主治医に伝えましょう。
食事を作ることができずコンビニで弁当を買って1日1食がやっとという方でも、食事をとれているか質問されたときに「はい」と答えてしまっては主治医に伝わりません。
「通院するときだけでも」と、気持ちを引き立てて無理して頑張るのではなく、主治医にはありのままの状態を見せて伝えていきましょう。
初診日から1年6ヶ月経過した障害認定日での障害の状態を、障害年金請求専用の診断書に主治医に記入してもらいます。
自分の症状、日常生活の困難さ、主治医に伝わっていないと、診断書に正しくあなたの障害の状態が反映されず、結果として障害年金が受給できなくなるかもしれません。
傷病手当金を受給して休職している期間から、自分の症状、日常生活での困りごとを、主治医にありのまま伝えておくことが大切です。
そして、障害年金請求に取りくんでいる社会保険労務士に相談してみましょう。
メールやzoomなどで障害年金請求についての相談を受け付けている社会保険労務士となら、面談場所まで出向くことなく相談できます。
体調によっては、自宅から相談できる方法を選びましょう。
老齢年金の場合とはちがって、障害年金の請求のために必要な書類の準備は時間と手間がかかります。
障害年金は支給の決定が出た場合でも、請求書を提出してから年金の初回振込までには数ヶ月、書類の不備などでやりとりが繰り返すと1年近くかかることもあります。
傷病手当金は1年6ヶ月受給できますので、長く休職できる方は、傷病手当金の受給が終わる前に障害年金請求について、できるようでしたら相談しておきましょう。
うつ病で休職したら、まずはゆっくりと休んで療養しましょう。
「このまま良くなることはないのでは?」などと心配になる方もいるでしょうが、通院し処方された薬をきちんと飲んでゆっくりと休むことで状態は良くなります。
そして、状態の改善に時間がかかっても、条件を満たせばうつ病による症状で障害年金を受給することができます。
障害年金という言葉は知ってはいたが、肢体など身体障害だけが対象でうつ病で障害年金を受給することができるとは思ってもみなかったという方が少なくありません。
障害年金の受給者の6割は精神・知的障害による受給です。
障害年金についての参考記事
傷病手当金を受給している間から、障害年金の請求について検討をはじめておいていただけたらと思います。
【編集後記】
「歩」(あゆむ)という字は、「少し止まる」と書く。
人生の歩み(あゆみ)は、少し止まりながら行くものだ、という話を聞きました。
上手いことを言うな〜と。
うつ病になったことは、人生を歩むなかで少し止まる必要があるという意味があるのかもしれません。
傷病手当金を受給しながら休職して心と体を休める、自立支援医療を利用して医療費の支払いをへらす、やがて治ってから働くにしても以前のような無理な働き方をしないで、障害年金を受給することで給料が少なくなっても働く時間や日数をへらすことも検討してみる。
人生の「歩」みは、「少し止まる」と書くのですから、少し止まってみてはいかがでしょう。
ベランダのかぼちゃナス。色づいた実はしわくちゃになってきてしまいましたが、緑色の実はこれからキレイにかぼちゃ色になります。
小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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