「わざと労災」は労災保険を受けられるのか?

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「わざと労災」で検索してblogを読みにきた方がいます。

「わざと労災」には、労災保険からの給付を受けられません。

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「わざと」ぶつかりに行く池のコイ

労災とは

業務災害とは、業務上の事由による労働者の負傷、疾病、障害又は死亡をいいます。

業務上とは、業務が原因となったということであり、業務と病気やケガとの間に一定の因果関係があることをいいます。

業務災害と認められるためには業務遂行性と業務起因性があることが必要です。

通勤災害とは、通勤による労働者の傷病等をいいます。

この場合の「通勤」とは、就業に関し、住居と就業の場所との間の往復、就業の場所から他の就業の場所への移動、 単身赴任先住居と帰省先住居との間の移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいいます。

業務の性質を有するものについては通勤災害ではなく業務災害になります。

労働者災害補償保険法2条の2

労働者災害補償保険は、第一条の目的を達成するため、業務上の事由、複数事業労働者の二以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に関して保険給付を行うほか、社会復帰促進等事業を行うことができる。

「わざと労災」には労災保険からの給付を受けられない

「わざと」であれば、業務または通勤との因果関係が成立しませんので、労災保険からの給付が行われません。

「わざと」ケガをしたり病気になることは、その業務についているのであれば起こるであろう病気やケガの危険性が具体化したとはいえません。

「わざと」ケガをしたり病気になることは、経験則上通勤に内在すると認められる危険が具体化したとはいえません。

  • わざとケガをした。
  • わざと病気になった。
  • わざと障害の状態になった。
  • わざと死んだ。

こんな場合には、労災保険から給付は行われません。

「わざと」ケガをしたり病気になったわけではないが、直接の原因となる事故を起こしたという場合も労災保険給付を受けられません。

労働者災害補償保険法12条の2の2(1項)

労働者が、故意に負傷、疾病、障害若しくは死亡又はその直接の原因となつた事故を生じさせたときは、政府は、保険給付を行わない。

自殺は「わざと」なのか?

自殺とは「自分で自分の命を絶つこと」(大辞泉)です。

だとすると、自殺は「わざと」死んだのですから労災保険の給付を受けられないことになります。

業務上のケガや病気が原因となった精神障害で、心神喪失状態で自殺した場合も「わざと」死んだといえるでしょうか?

過労や業務上のストレスによって発症したうつ病などの精神障害や心因性の精神障害によって自殺 (「過労自殺」)した場合も「わざと」死んだのでしょうか?

そうではありません。

自殺だからといって、「わざと」死んだとは限らないのです。

「わざと労災」は不支給だが、うっかりミスや不注意は労災保険給付受けられる

わざと事故を起こしたわけではないが、事故の原因となる犯罪行為をわざと行なった。

労働者に重大な過失があって事故が起きた、病気やケガをした。

具体的には、事故発生の直接の原因となった行為が労働基準法・鉱山保安法・道路交通法などの危害防止に関して罰則がある規定で違反があった場合は、労災保険の給付が制限されます。

支給制限の事由 支給制限の内容
故意の犯罪行為
もしくは
重大な過失
休業(補償)給付、傷病(補償)給付、障害(補償)給付。
保険給付のつど30%を制限(減額)する。傷病(補償)年金、障害(補償)年金は療養を開始した日の翌日から3年以内の期間において支給事由が存する期間についてだけ制限(減額)する。

労働者災害補償保険法12条の2の2(2項)

労働者が故意の犯罪行為若しくは重大な過失により、又は正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、負傷、疾病、障害若しくは死亡若しくはこれらの原因となつた事故を生じさせ、又は負傷、疾病若しくは障害の程度を増進させ、若しくはその回復を妨げたときは、政府は、保険給付の全部又は一部を行わないことができる。

【編集後記】

くれぐれも「わざと労災」など起こさないようにしてください。

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小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)

小倉健二(おぐらけんじ) 労働者のための社労士・労働者側の社労士 労働相談、労働局・労働委員会でのあっせん代理 労災保険給付・障害年金の相談、請求代理 相談・依頼ともに労働者の方に限らせていただいています。  <直接お会いしての相談は現在受付中止> ・mail・zoomオンライン対面での相談をお受けしています。 1965年生まれ57歳。連れ合い(妻)と子ども2人。  労働者の立場で労働問題に関わって30年。  2005年(平成17年)12月から社会保険労務士(社労士)として活動開始。 2007年(平成19年)4月1日特定社会保険労務士付記。 2011年(平成24年)1月30日行政書士試験合格