労働基準法6条【中間搾取の禁止】日本人でも外国人でもピンハネを許してはいけない

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ベトナム人大量あっ旋して2100万円を中間搾取した3人を小諸労基署が長野地検上田支部に書類送検しました。

ベトナム人らの賃金から2100万円をピンハネした3人を書類送検

【NEWS】ベトナム人大量あっ旋 2100万円を中間搾取――小諸労基署
長野・小諸労働基準監督署(徳永和成署長)は、自らあっ旋した外国人労働者延べ230人の賃金から中間搾取していたとして、清掃業務請負業のホアンアン合同会社(大阪府大阪市)と同社代表社員および2人の業務執行社員の計1社3人を、労働基準法第6条(中間搾取の排除)違反の疑いで長野地検上田支部に書類送検した。職業安定法に基づく労働者供給事業の許可がないにもかかわらず、農家120戸に対してベトナム人らをあっ旋し、総額約2100万円の利益を得ていた。農家から毎月の報酬を受け取り、ベトナム人らには一部のみ支給している。
<ニュース提供元:労働新聞社>

Facebook 全国社会保険労務士会連合会 2020/11/30

言葉がわからない、片言でしか会話ができないなど、外国人労働者は日本語での会話が不自由なことが多いものです。

外国である日本に働きにきて、働く上での法律による保護(労働法)についても詳しくない方が多いでしょう。

働くことができなくなることを恐れて不利な状況に追い込まれていることも少なくありません。

日本語での会話が不自由、日本の労働法に詳しくない、働く上での不利な状況。

こういう不利な立場にいることにつけこんでピンハネ(中間搾取)するこなど絶対に許してはいけないことです。

強制労働とピンハネは、労働基準法で禁止されていることの中でも特に許すことのできない犯罪です。

ピンハネ(中間搾取)は絶対に許してはいけない。国籍が日本か外国かは関係ない。

労働者の労働関係の開始・存続に関与して業として中間搾取を行う行為は労働基準法6条で禁止されています。

明治初期には、口入屋、桂庵、募集人、労務供給業者などを通じて労働関係が成立していました。

そのために不当な賃金搾取(さくしゅ)やその他の非人道的な悪習が発生し、労働者は「女工哀史」(あゝ野麦峠)に見られるような状況にありました。

戦後になっても、労働ブローカー・労働ボスが就職に介入して利益を得たり、賃金のピンハネなどのが残っていました。

そこで職業安定法とともに労働基準法が中間搾取の禁止を正面から禁止しています。

労働基準法6条(中間搾取の排除)

何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。

「業として」とは、営利を目的として同種の行為を反復継続することをいいますが、営利目的であることを必要としないとの裁判例もあります。

また、たとえ1回の行為であっても反復継続する意思があれば「業として」になります。主業としてなされるか副業としてなされるかは関係ありません。

「利益」とは、手数料、報償金、金銭以外の財物等の名称を問わず、有形か無形かは関係ありません。また、使用者から利益を得る場合だけでなく、労働者または第三者より利益を得る場合も含まれます。

昭和23年3月2日基発381号参照

たとえ1回だけであっても、中間搾取(ピンハネ)は労働基準法で厳しく禁止されている犯罪行為です。

当たり前のことですが、中間搾取が禁止されるのは、日本に働きにきた外国人労働者も日本人と同じです。

日本人とくらべて、不利な状況で働いていることにつけこんで外国人労働者からピンハネするなど許してはいけないことです。

労働基準法3条(均等待遇)

使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。

参考記事 11月【外国人労働者問題啓発月間】労働法の適用「国籍」関係ない

【中間搾取の禁止】違反。労働基準法で2番目に重い罰の犯罪

労働基準法で1番重い罰則の犯罪は強制労働禁止(5条)の違反です。

中間搾取(ピンハネ)の禁止は労働基準法で2番めに罰則の重い犯罪です。

強制労働とピンハネは絶対に許してはいけない犯罪です。

労働基準法118条第1項(罰則)

第6条の規定に違反した者は、これを1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

外国人労働者への労働基準法違反を知ったら、できることで手助けしよう


もしもあなたが生活のために外国へ働きに行ったときに法律で決められたものより低い労働条件で働かされていたらどうでしょう。

言葉がわからず法律や制度もわからない。困っていることにどう対応していいのかもわからないでしょう。

そんなときに、その国の人が解決のために相談にのってくれたり、手助けしてくれたらどれだけ心強いでしょうか。

日本に働きにきた外国人労働者が労働基準法違反に遭っているのを知ったら、自分にできる範囲で手助けしてみてはいかがでしょうか。

参考記事

2019年【外国人技能実習生】労働基準関係法令違反71.9%

「内向型」労働者のあなたができる外国人労働者への支援

労働基準監督署に通報(情報提供)する。労働基準監督署への申告に同行する。

行政が作成した外国語のパンフレットや外国語で労働相談を受ける行政の連絡先などを、スマホやタブレットで見せる、印刷して渡す。

性別や年齢によってもできることがちがうでしょうから、無理のない範囲でできることで小さなことでも手助けになることをしてみては。

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労働条件ハンドブック(ベトナム語) 厚生労働省

【編集後記】

あまり年末の実感がありませんが、今年も残すところ半月。
正月のお笑い番組が楽しみです。

昨日の1日1新 あとりえふぁんとむのクッキー

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小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)

小倉健二(おぐらけんじ) 労働者のための社労士・労働者側の社労士 労働相談、労働局・労働委員会でのあっせん代理 労災保険給付・障害年金の相談、請求代理 相談・依頼ともに労働者の方に限らせていただいています。  <直接お会いしての相談は現在受付中止> ・mail・zoomオンライン対面での相談をお受けしています。 1965年生まれ57歳。連れ合い(妻)と子ども2人。  労働者の立場で労働問題に関わって30年。  2005年(平成17年)12月から社会保険労務士(社労士)として活動開始。 2007年(平成19年)4月1日特定社会保険労務士付記。 2011年(平成24年)1月30日行政書士試験合格