そろそろ忘年会のシーズンが近づいてきました。
12月は繁忙期なので、早めに忘年会をするという職場にお勤めの方もいらっしゃると思います。
一般的には忘年会に参加してお酒を飲んで、労働時間にはなりませんし、ケガをしても労災になりません。
しかし、忘年会参加は酒を飲んでいるので労災にならない、と言い切ることもできません。
また、労災になるかどうかとは別に、忘年会でケガをしたときに、会社が損害賠償を支払わなければならないという場合もあります。
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労災保険で労災と認められる忘年会でのケガ
たとえば、会社主催の忘年会の世話係が業務として参加している方は業務行為として認められるでしょうが、問題となるのはそうではない参加者の方の場合です。
業務上であるかどうかはさまざまな観点から判断
- 主催(会社主催なのかどうか)
- 目的(業務・慰労)
- 参加方法(強制参加・自由参加)
- 費用負担(会社が必要を認めて費用を負担していたか)
などさまざまな観点から業務上かそうでないかが判断されることになります。
忘年会への出席だから業務外であると断定することはできません。
取引先顧客とともに居酒屋での会食中にくも膜下出血を発症し死亡。労災と認められた裁判がある。
取引先との接待は、会社によっては事業活動に欠かせない営業活動となっている場合もあります。
時間外労働が多くまた精神的負荷もある方が、取引先顧客とともに居酒屋での会食中にくも膜下出血を発症・死亡しました。
この方の発症・死亡が労災として認められるかどうかが裁判で争われました。
飲酒を伴う接待・懇親会を業務の延長して認めて、労災認定に当たり業務の過重性の判断する際の労働時間と認められました。
国・大阪中央労基署長(ノキア・ジャパン)事件(大阪地裁判決 平成23年11月26日)
労災保険での裁判ではないが、会社の責任として損害賠償が認められた忘年会でのケガもある
忘年会で他の参加者から暴行を受けてケガをした方が、暴行を加えた方と会社に損害賠償を請求しました。
2018年4月23日読売新聞の記事によると、業務時間外の忘年会で社員が他の社員に暴行を行ないケガをさせた事件で、会社の使用者責任を認め、忘年会で暴行を受けてケガをした労働者に対して会社が損害賠償をするよう命じた判決が出ています。
(東京地裁判決 平成30年1月22日)
業務外の私的な会合で本社に報告がなく、忘年会も禁じていたことを会社は主張しましたが、店長から参加を誘われ休みだった方も含めて全員参加だったことなどの経緯が重視され業務の一環だったと判断されたとの内容の記事です。
詳しい内容は図書館で新聞の縮刷版で記事を読んでみてください。
参考文献
『実務者のための労災保険制度Q&A―労災保険の疑問を裁判例などで専門家が解説します』公益財団法人労災保険情報センター
【編集後記】
忘年会。楽しみなら良いですが、業務の一環であるような忘年会はつらいですね。
新宿モザイク通り
昨日の1日1新:オフィス内覧の申込み
小倉健二(労働者のための社労士・労働者側の社労士)Office新宿(東京都)
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